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家・住宅購入コラム

家を売るときには検査済証が必要?ない場合はどうしたらいいの?


 
家を売るときには、さまざまな書類が必要となります。その必要な書類のうちの1つが「検査済証」です。検査済証がなくても家を売ること自体はできますが、売却価格が下がったり、なかなか売却できなかったりすることがあります。
 
検査済証がない場合は、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。本記事では、検査済証とは何か、検査済証がないことによりどうして不動産売却に影響するのかなど検査済証について詳しく解説します。
 

検査済証とは

 

 
検査済証とは、建築基準法で定められた「建築確認」「中間検査」「完了検査」を行い、3つの検査にすべて合格したときに発行される書類です。建物を建築するときには各工程ごとに検査が義務付けられており、3つの検査をクリアしないと建物を建築することができません。そのため、検査済証は建築基準法の基準をクリアした証となります。
 
建築確認、中間検査、完了検査という言葉は記事内で何度か出てくるため、各検査の内容などを紹介していきます。
 

建築確認(建築確認申請)とは

 
建築確認とは、建物を建築する前に行う建築設計などが、建築基準法で定められる基準をクリアしているのか、を役所や指定検査機関が書類を確認することです。役所や指定検査機関は、建築確認で申請された書類が基準をクリアしている場合、検査した証書として「建築確認済証」(建確とも呼びます)を発行します。
 

中間検査とは

中間検査とは、特定の建築物の特定工程により建築途中で、役所や指定検査機関が検査を受け工事が基準を満たすよう確認することです。特定の建物や特定工程は、各都道府県などの特定行政庁によって異なります。そのため、一般住宅については建築する場所を管轄する特定行政庁により、中間検査があったり、なかったりします。中間検査をクリアすると「中間検査合格書」が発行されます。
 
なお、中間検査が必要な場合、中間検査に通らなかったときには、次の工程に移ることができなくなります。
 

完了検査とは

 
完了検査とは、建築確認どおりの設計で工事が進み、工事途中でも建築確認どおりに工事が行われ、工事完了したときに最終検査をすることです。完了検査に合格すると「検査済証」が発行されます。
 
検査済証は、設計段階で建築基準法どおりに設計されたこと、途中の工程でも法律が遵守されている工事であること、工事完了まで適法に建築されていることを証明する書類です。裏を返せば、検査済証がなければ適法に建築された建物ということを証明できないということになります。適法な建物を証明できないということは、違法建築物ではないか、という見方をされてしまう場合があります。
 

違法建築物はなにか

 

 
違法建築物とは、建築基準法などの法律を守らずに建築された違法な建物のことを言います。建物の設計段階では法律を守り、建築確認済証を取得したのにもかかわらず、建築開始後、建築確認済証の内容と違う建築をし、完了検査も行わずに建物を完成させた建物は違法建築物です。
 
違法建築物は文字どおり違法なため、特定行政庁により是正命令が来る可能性があります。特定行政庁は違法建築物の除却や違法状態の解消などの命令を所有者や管理者、占有者に対して行うことができます。
 
違法建築物の代表例は、役所の許可なく増築を行い建ぺい率・容積率をオーバーしてしまった建物や建築確認を取らず農作業小屋などを建築してしまったという建物です。
 
既存不適格建物という建物がありますが、違法建築物とは違います。既存不適格建物とは、建築するときには法律を守り設計し、法律どおり建築したが、その後法律の改変などにより違法状態になってしまった建物のことです。既存不適格建物は適法の建物と大きな差はないため、売却しづらいということはあまり起こりません。
 

売却時に検査済証がないときのリスクとは

 

 
検査済証がない場合、適法に建物が建築されているとしても、そのことを証明することができません。そのため、検査済証がないということは、違法建築物かもしれないという状態になってしまいます。
 
このような状態になると、不動産を売却するときに買主にリスクが発生してきます。買主にリスクが発生するということは、売却の価格も落ちてしまう可能性が出てきます。不動産の買主にどのようなリスクが発生するのか、を紹介していきます。
 

違法建築物の場合は特定行政庁により是正命令を受ける可能性がある

 
違法建築物の場合、特定行政庁は違法状態を直すための命令をすることができます。是正命令は建物の除却(解体)や建物の違法部分の解消などを、違法建物の所有者、占有者、管理者にすることができます。
 
つまり、違法建築物を売却し購入した場合、購入者が特定行政庁から建物の除却などの命令を受ける可能性があるということです。そのため、買主からしてみれば、検査済証のない建物を購入するということは、特定行政庁から是正命令が来ないと言い切れない不動産を購入することになってしまいます。このような状態を気にしない買主は少ないため、買い手を見つけるのが難しくなってしまいます。
 

ローンがとおりにくくなる

 
2003年に国土交通省は、検査済証がない新築戸建てへの融資はしないように、という通達を金融機関に対して出しました。その結果、中古住宅にもこの考え方が浸透してきており、検査済証がない場合年々住宅ローンがとおりにくくなっています。
 
住宅ローンは検査済証がないと絶対通らないというわけではありませんが、投資用不動産については検査済証がないローンがかなりとおりにくくなります。こちらも絶対に通らないということではありませんが、融資額を減らされるなどの条件付融資になる可能性があります。一棟アパートや一棟マンションのような投資物件に検査済証がない場合は、価格にまで影響してくると考えておいたほうが良いでしょう。
 

一定条件のリフォームや増築が認められない

 
検査済証がないと、一定条件のリフォームや増築が認められません。具体的に工事を行うことができない、リフォームや増築などは、次のとおりです。
 
・防火や準防火地域内で行う増築
・防火指定外地域内で行う10㎡以上の増築
・改築や100㎡以上の用途変更
・小規模建物(4号建築物)以外の大規模修繕や模様替え
 
もし、家の購入検討者の購入条件が購入後上記に当てはまる工事を行うことであれば、検査済証がない家では購入目的を達成することができません。
 

検査済証は再発行できるの?

 

 
検査済証は再発行することができない書類です。ただし、検査済証の代わりになる書類を取得することは可能です。
 
代わりになる書類を取得する場合は、検査済証を紛失していないケースと、建築確認はしたが完了検査をしていないケースで対応方法が変わります。それぞれのケースに分けて解説します。
 

検査済証を紛失してしまった場合

 
検査済証を紛失した場合は、検査済証を発行した自治体に行き「建築台帳記載事項証明書」の発行手続きをします。この建築台帳記載事項証明書が取得できれば、検査済証の代わりとして利用できます。
 
なお、建築台帳記載事項証明書は市町村役場の建築関係の課や、県の土木事務所などで取得することができ、取得費用はおおよそ300円ほどです。取得費用については各地方自治体により異なるため、増減することがあります。
 

建築確認は行ったが完了検査は行っていない場合

 
この場合は国土交通省が策定した「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に基づき、指定検査機関に「法適合状況調査」を依頼します。この調査の結果、建築当時適法に建築されているということがわかると、既存不適格調書の一部として利用ができます。
 
既存不適格調書とは、違法建築と違い建築当初は適法だったことを自治体に申告するときに作成する書類で、この書類をもって検査済証がなくても一定条件のリフォームや増築などが行えるようになります。
 
なお、法適合状況調査を行う場合は手数料がかかり、手数料は調査する建物の延べ面積や必要書類が整っているかで費用額が変動します。一般的な木造住宅の場合は、税抜き20万円前後は必要になります。内容によって金額が増減する場合があるため、建築士事務所などにどのくらいの費用がかかるのか見積もりを取得しておきましょう。
 

検査済証と耐震基準適合証明書とは違う書類?

 

 
検査済証と耐震基準適合証明書とは違う書類です。検査済証は、適法に設計され、その設計どおりに建築された建物と証明される書類で、耐震基準適合証明書は、建物が建築基準法で定められた以上の耐震性を証明する書類のため、内容が異なります。
 
なお、検査済証がない場合に耐震基準適合証明を取得するためには、耐震診断を行い「耐震性があることを証明できる書類」を取得しなければなりません。当然、耐震診断を行うには費用が必要で、耐震性が足らないときには補強工事までしなければならないため、検査済証がない場合は耐震基準適合証明を取得するのは困難です。
 

検査済証がないときに家を売却するコツ

 

 
検査済証がなく、建築台帳記載事項証明書も発行できない場合は、買主にさまざまな購入リスクが発生します。そのため、検査済証が発行されている家より売却することが難しくなります。
 
しかし、検査済証がないと売却できないということはありませんし、必ず相場より安くなるわけではありません。ここからは、検査済証が発行されていない家を売却するコツを紹介していきます。
 

売却スケジュールに余裕を持つ

 
検査済証がない場合、買主に家を購入するリスクが発生するため、なかなか買い手が見つからないことがあります。そのため、すぐに売却できるとは考えず、長期的な販売計画を考えておくことが必要です。
 
通常の不動産でも査定依頼から不動産売買契約まで3ヶ月~6ヶ月程度かかるため、検査済証がない場合は6ヶ月~1年は売却に時間がかかると思っておいた方が良いでしょう。
 

建物を解体して売却する

 
銀行などの金融機関は、検査済証がない家に住宅ローン融資をすることには慎重になりますが、家がなくなり土地だけになれば融資に対する姿勢が変わります。そのため、検査済証がなく、建物も老朽化などして使いづらいような状態になっているのであれば、家を解体して売却することを検討するのも方法の1つです。
 
ただし、建物を解体する場合には解体費用がかかること、家を解体すると固定資産税が上がってしまう可能性があることには注意が必要です。
 
固定資産税は建物が土地上にあるなど一定条件を満たした場合、固定資産税・都市計画税ともに減税されます。建物がなくなるだけで、この減税制度が利用できなくなり、今までの固定資産税が数倍になる可能性が高いため、建物を壊す場合は不動産会社に固定資産税がどのくらい上がるのか確認しなければなりません。
 

知識や経験が豊富な不動産会社に売却の依頼をする

 
検査済証がない場合は、検査済証がない家を売る知識や経験が豊富な不動産会社に売却を依頼することが大切です。検査済証がない中古住宅の融資審査が厳しくなってきたことにより、融資をしてくれる金融機関、融資をしてくれるための対策などをすることが、売却をスムーズに行うことにつながります。
 

買取を検討する

 
なかなか家を売ることができない場合は、不動産買取を検討するのも売却をする方法の1つです。
 
不動産買取を選択する場合は、売却依頼している不動産仲介会社に複数の買取業者の金額を出すように依頼しましょう。不動産買取も相場というものがあり、極端に安く買取をされることを防止しなければなりません。
 
また、買取金額と買取条件を総合して考え、買取金額だけ高いという理由で買取依頼しないことが重要です。
 

まとめ

 
検査済証は、建築基準法などの法律に則って設計され、その設計どおり建築されている家だと証明する書類です。適法に建築された証明書がない場合は、違法建築された家だと見られてしまうこともあります。
 
違法建築かもしれない家を購入したり、融資したりするのはリスクのため、買主や金融機関から避けられてしまいます。そのため、検査済証がない家を売る場合には、検査済証の代わりになる書類を取得するか、売却をスムーズに行うための対策をする必要があります。
 
検査済証がない場合は、査定時に売却を依頼する不動産会社に検査済証がないことを伝え、対策を早めにおこない売却活動を開始していきましょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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