住宅の基礎工事で知っておくべきこと。基礎の種類や特徴について解説
普段私たちの住んでいる家や毎日出勤しているオフィスなど、この地上に存在している建築物はすべからく基礎で支えられています。しかしながら、普通に生活していると基礎について深く考える人はあまり多くないでしょう。
本記事では住宅の基礎工事で用いられている基礎の種類について解説していきます。
本記事を読むことで基礎の種類やそれぞれの特徴について理解することができるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
基礎の特徴
まずは基礎の特徴について見ていきましょう。
冒頭でも述べましたが、この地上に存在している建築物にはすべて基礎が存在します。
「縁の下の力持ち」という言葉があります。縁の下の力持ちとは人には見えないところで力をつくし、苦労することのたとえです。
まさに基礎にはこの「縁の下の力持ち」という言葉がもっとも似合うでしょう。
どんな立派な建築物でも基礎がなければ成り立たない
この見出しのとおり、どんな立派な建築物でも基礎がなければ成り立たず、高重量な建築物であればあるほど基礎は強固なものでなければなりません。基礎が安定していないと建築物の傾きが起きてしまいます。
建築物の良し悪しは基礎がしっかりしているか否かにかかっているといっても過言ではないでしょう。それだけ基礎は建築物にとって重要な役割を担っています。
その基礎を安定させるためには、強固な地盤が必要です。
よい基礎は強固な地盤が肝
基礎工事をはじめるに先立って、地盤調査をおこないます。昔は詳細な地盤調査を行わずに基礎工事をしていたようですが、現在は法改正に伴い住宅を新築する際は地盤調査をしなければなりません。
地盤調査をした結果、強固な地盤と判定された場合はすんなりと基礎工事をはじめることができます。ただし、軟弱地盤で地盤沈下などのリスクがあると判定された場合は地盤補強をしなければ基礎工事に入ることができません。
軟弱地盤の可能性が高い土地は、田や畑といった農地や水路といった土地があります。
余談ですが、筆者も昨年(2021年)自宅を新築した際、新築した土地が昔水路だったらしく地盤補強をしなければなりませんでした。同じ場所に何十年も家が建っていただけに軟弱地盤だったのには正直ビックリしました。
地盤補強工事として30本ほどの杭を打ち込み、そこからの基礎工事だったため長い道のりだったのをよく覚えています。こういった事例もありますので、強固な地盤か否かはキチンと調べておきましょう。
少し話が脱線してしまいましたが、強固な地盤を確保したうえで基礎工事を施工することが重要です。
基礎の種類
私たちの住んでいる住宅を支えている基礎にはどのようなものがあるのでしょうか。
日本の住宅で用いられている基礎には「布基礎」と「ベタ基礎」の2種類があり、それぞれ特徴を持っています。これから住宅を新築したい人は、布基礎にすべきか、ベタ基礎にすべきか悩んでいる人もいることでしょう。
布基礎とベタ基礎についてそれぞれの特徴を見ていきましょう。
布基礎
Tの字を逆さまにした形状をしており、鉄筋コンクリートを柱や壁の下に打ち込む工法で国内で古くから用いられている基礎です。木造住宅に多く使われており、建築物の外周や柱部分に沿って設けられています。
基礎のない部分には防湿用のコンクリートを打設しますが、あくまで防湿用のため、この部分には建築物を支えるだけの強度はありません。
布基礎の立ち上がり部分の高さは地上から30㎝以上・厚さは12㎝以上、基礎を土の中に埋める深さ(根入れ深さ)は24㎝以上、底盤部分のコンクリートは15㎝以上なければならないと法律で決められています。
ベタ基礎
建築物の外周や柱部分のみに打ち込む布基礎と違い、地盤全体に打ち込む工法です。ベタ基礎の歴史は浅く、1995年1月に発生した阪神淡路大震災後に広く用いられるようになりました。
まんべんなく基礎コンクリートを打設しているため、基礎全体で建築物を支えている構造となっています。
基礎を土の中に埋める深さ(根入れ深さ)・底盤部分のコンクリートともに12㎝以上と法律で決められています。
立ち上がり部分の高さは布基礎と同じく地上から30㎝以上・厚さは12㎝以上設けなければなりません。
布基礎の利点と欠点
住宅に用いられている基礎には布基礎とベタ基礎の2種類あることがおわかりいただけたでしょうか。どちらの基礎も法律の基準に基づいて設けられており、工法もそれぞれ特徴があります。
布基礎にはどのような利点と欠点があるのかそれぞれ特徴を見ていきましょう。
布基礎の利点
まずは布基礎を選択する利点を見ていきます。
●ベタ基礎にくらべコストが安い
●ベタ基礎より高強度な部分あり
●地盤の負荷がベタ基礎にくらべ小さい
などの利点があります。布基礎は簡易な造りで、比較的相場が安価です。それぞれ詳しく見てみましょう。
ベタ基礎にくらべコストが安い
布基礎はベタ基礎にくらべ、使用する材料や残土もベタ基礎より少ないため、材料費や残土の輸送・処理などのコストが安く済みます。
住宅性能よりも価格を重視している人は、ベタ基礎より布基礎を選ぶことで建築コストを抑えることができるでしょう。
ベタ基礎より高強度な部分あり
布基礎は先述したとおり、法律により根入れの深さは最低でも24㎝以上にしなければなりません。したがって深く根入れをした部分については地震などの揺れに抵抗する力が増しますので、ベタ基礎より高強度な部分もあります。
雪国(特に豪雪地帯)などでは雪の荷重も計算に入れなければならないので、布基礎のほうがよいでしょう。
地盤の負荷がベタ基礎にくらべ小さい
布基礎は先述したとおり、使用する鉄筋やコンクリート量が少ないため、地盤にかかる負荷もベタ基礎にくらべ小さいです。したがって、軟弱地盤であっても地盤沈下するリスクが低い場合もあります。
布基礎の欠点
ここからは布基礎の欠点について見てみましょう。布基礎にはコストが安い点や部分的にベタ基礎よりも高い強度を持つことができるといった利点がある反面、以下の欠点も無視できません。
●総合的に見るとベタ基礎より強度が低い
●シロアリの食害リスクあり
上記の布基礎の欠点について、以下に解説します。
総合的に見るベタ基礎より強度が低い
基礎全体で建築物を支えるベタ基礎にくらべ、外周と柱部分だけで建築物を支える布基礎は部分的にはベタ基礎より高い強度を有します。ただし、総合的に見るとやはりベタ基礎よりも強度が低いです。耐震性にもやや難があり大きな地震がきた場合は被害が出る可能性もあるでしょう。
ただし、もともと強固な地盤に布基礎を設けた場合はそれなりの耐震性を備えることができます。
シロアリの食害リスクあり
布基礎の床下部分はベタ基礎と違い木材が露出していることが多く、シロアリの食害リスクもあり、この点も無視できません。シロアリは木材を食べる害虫であるのを知らない人はいないでしょう。
シロアリの食害をそのままにしてしまうと、床板が抜けたり柱の食害により倒壊したりしますので大変危険です。なるべく早くシロアリ対策を実施しましょう。
シロアリ対策として防蟻処理として薬剤を床下に散布・塗布したり通気口を開けて湿気を逃がしたりする方法があります。
ベタ基礎の利点と欠点
ここからはベタ基礎の利点・欠点について見ていきましょう。
建築物の外周部と柱部分で支える構造が布基礎で、基礎全体で建築物を支える構造がベタ基礎です。
1995年1月に発生した阪神淡路大震災以来、現在の新築住宅は布基礎よりベタ基礎を主流としている傾向にあり、その土地の地盤によってはベタ基礎一択としている場合もあります。
以下にベタ基礎の利点と欠点を解説します。
ベタ基礎の利点
建築物を基礎全体で支えるベタ基礎の利点には以下の点があげられます。基本的に布基礎の欠点の正反対がベタ基礎の利点です。
●耐震性が高い
●シロアリや湿気の被害を防止できる
以下にそれぞれ詳細を解説します。
耐震性が高い
建築物を主に外周部と柱部分で支えている布基礎と異なり、ベタ基礎は基礎全体で建築物を支えているため、力の分散が布基礎よりも優れており耐震性が高いです。一般的に鉄骨住宅よりも木造住宅のほうが力を分散する能力があるとされています。
ただし、同じベタ基礎でも使用する鉄筋の数が少なかったりコンクリートの厚さが十分でなかったりすると高い耐震性を備えることはできず、布基礎よりも耐震性が劣ってしまう場合もあり注意が必要です。
シロアリや湿気の被害を防止できる
ベタ基礎は基礎全体がコンクリートに覆われているため、木材が地面に接することはありません。したがって、布基礎で施さなければならない防蟻処理などをしなくてもシロアリや湿気の被害を防ぐことができます。
ただし、ベタ基礎といえども経年劣化によってコンクリートにクラックが入った場合、シロアリや湿気が入ってくることもあり油断はできません。
ベタ基礎の欠点
高い耐震性やシロアリ・湿気に強いといった利点をもつベタ基礎ですが、残念ながら以下の欠点も同時に存在します。
●布基礎よりコストがかかる
●寒冷地ではむずかしい
以下にそれぞれ詳細を見ていきましょう。
布基礎よりコストがかかる
ベタ基礎は布基礎よりも使用する鉄筋やコンクリートが多くなり、そのぶんコストもかかります。昨今の物価高もあり、鉄筋の本数やコンクリートの厚みを削らなければならない場合はベタ基礎の強度も落ちてしまうため、場合によっては布基礎を選択したほうがよいでしょう。
さらに、基礎工事の工程で土を掘るためどうしても残土が出ます。布基礎と比べてもベタ基礎は残土が多く出てしまい輸送や処理にもコストがかかるのがネックです。基礎は建築物で最も重要な部分ですので、ある程度の予算は見ておいたほうがよいでしょう。
寒冷地では施工がむずかしい
あらかじめ誤解のないように述べますが、寒冷地ではベタ基礎が無理というわけではありません。筆者も寒冷地在住で去年(2021年)新築した自宅もベタ基礎です。
寒冷地では法律で決められた根入れの深さを通常(12㎝以上)より深くしなければならず、コスト面で不利になってしまう場合もあります。
寒冷地でもうひとつ注意しなければならない点として、地中凍結してしまうことです。地中凍結すると地面が膨れ上がり基礎を押し上げてしまいます。
上記の点に注意しなければならないため、寒冷地でベタ基礎を設ける場合は建築会社とよく打ち合わせをして決めるとよいでしょう。
まとめ
ここまで、基礎の種類や特徴などについて解説してきました。住宅の基礎には布基礎とベタ基礎があり、布基礎は古くから日本の建築物に用いられてきた基礎です。対するベタ基礎は1995年1月に発生した阪神淡路大震災後に普及してきた基礎で、現在の新築住宅ではベタ基礎が主流となっています。
しかしながら、基本的に布基礎とベタ基礎はどちらが優れていて、どちらが劣っているということはありません。布基礎・ベタ基礎ともにそれぞれの特性があるので、その特性を把握していればどちらを選んでも正解です。
いずれにしても基礎とは、建築物を一番下で支える最も重要な部分であり、後から直せるものではありません。したがって、多少コストがかかってもしっかりとした基礎を設けるのが肝要となるでしょう。
ブログ:
皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
- 所属会社:
- 株式会社スタイルシステム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.style-system.net
- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
おすすめ記事
-
23.06.28家を建てる・家づくり
-
23.06.28家を建てる・家づくり
-
23.05.11家を建てる・家づくり
-
23.05.07家を建てる・家づくり
-
23.05.05家を建てる・家づくり
-
23.05.02家を建てる・家づくり