建築物の省エネ基準見直し
国土交通省と経済産業省は6月3日、建築物の省エネ基準の見直しに関する2省合同有識者会議を開催しました。基準見直しの対象は、「中規模非住宅建築物の省エネ基準」及び「住宅トップランナー基準」。これまでの検討を踏まえ、中規模非住宅は26年度に現行の大規模非住宅と同水準に引き上げ、住宅トップランナー基準は一部の住宅区分を除き、27年度に外皮性能と1次エネルギー消費量の各基準を、より高い水準に設定することとしました。今後はパブリックコメント(意見公募)を経て、段階的に施行していきます。
建築物の省エネ基準については、現行のエネルギー基本計画(21年閣議決定)で掲げた「30年度以降の新築におけるZEH・ZEB水準確保」という方針に基づき、段階的な引き上げが計画されています。25年4月に改正建築物省エネ法に基づく省エネ基準の全面義務化を控えていますが、今回の合同会議では、その先の30年目標に向け、省エネ基準自体の見直しを図りました。
非住宅建築物における現行の省エネ基準では、1次エネルギー消費量の基準指標(BEI)を1.00とし、大規模建築物(以下、大規模)は用途により0.75~0.85と比較的高い水準に設定しています。BEIは1次エネ消費量の基準値を1とした場合の設計値の割合で、値が小さいほど高い省エネ性能を意味し、ZEH水準は0.80。
今回の合同会議では、26年度以降の中規模建築物(300平米以上200平米未満、以下中規模)の基準について検討し、現行の大規模と同様にBEI水準を0.75~0.85へと引き上げることを決定。実態調査から、中規模でも既に大規模の基準におおむね適合している状況と判断。技術的な検証も踏まえ、引き上げは妥当としました。
用途別の基準も大規模と同一の設定とし、工場等が0.75、事務所等が0.80、飲食店等が0.85となります。これについては委員から、「中規模飲食店の(大規模BEI水準への)達成率は低く、基準引き上げの対応は困難」との意見もありました。それに対し両省は、「大規模での対応状況を注視したうえで検討していく」としており、今回の基準引き上げに対する委員からの意義は挙がりませんでした。
もう一つの検討項目は、大手住宅事業者に対して、一般よりも高い省エネ性能の目標を課す「住宅トップランナー基準」の引き上げです。現行基準において、建て売り戸建て、注文戸建て、賃貸アパートについては24年度以前までの目標基準となっているため、新たな目標年度と水準を設定しました。分譲マンションは現行基準の目標年度が26年度のため、今回の見直しの対象外です。
同合同会議は見直し対象の3分野について、次期目標年度を27年度に設定。新基準では、各分野とも外皮性能の水準を現行の「省エネ基準」から「強化外皮」へと変更します。BEI水準については、建て売り戸建てを現行の0.85から0.80へ、注文戸建てを同0.80から0.75へ、賃貸アパートを同0.90から0.80へとそれぞれ引き上げます。
なお、同会合では、国交省による「新築戸建ての太陽光発電設備設置率」調査の結果が初めて示されました。それによると、22年度の設置率(推計値)は31.4%。エネルギー基本計画の「30年に新築戸建ての6割」という目標を踏まえ、住宅トップランナー基準への位置付けを今後の検討項目とし、24年度中に再度検討会を開いて議論します。
両省はこれらの新基準について、パブリックコメントを経て今秋に連目の省令を公布。その後、25年から26年にかけて施行していく予定です。
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徳本 友一郎
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