改正住宅セーフティネット法
セーフティネット住宅制度や居住支援体制の充実化を図る「改正住宅セーフティネット法」(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律)が5月30日、衆議院本会議で賛成多数により可決、成立しました。施行は公布日から1年6ヶ月以内。附帯決議では、居住支援関係者の連携や制度周知、情報共有等を推進するほか、低所得者に対する支援についてなど12項目が盛り込まれました。同改正法の成立により、今国会における住宅・不動産業界に関連の深い法案は、会期末の6月を待たず全て成立しました。
改正住宅セーフティネット法は、高齢者や低所得者、障害者などの住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)に対する居住支援の強化を図るため、国や民間事業者にかかわる新制度を創設し、居住支援法人の役割も拡大しています。背景には、単身世帯の増加や持ち家率の低下等により、要配慮者からの賃貸住宅ニーズが高まっている現状があります。この傾向は今後も更に強まる見込みながら、孤独死や残置物処理等の課題から、単身高齢者を始めとしたよう配慮者の入居は賃貸オーナーにとってリスクがあり、拒否感は大きいです。同改正法は主に、こうした課題の解消を目指した内容です。
具体的には、居住支援法人の業務範囲を拡大し、入居者からの委託に基づく残置物処理を追加。併せて、要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者を国土交通大臣が認定する制度も創設し、終身建物賃貸借制度の認可手続きを簡素化しました。
また、居住支援法人等が要配慮者の見守りや福祉サービスへのつなぎを担う「居住者サポート住宅」(条文では「居住安定援助賃貸住宅」)制度も創設し、市区町村長が認定します。居住支援においては、入居段階やハード面の対策だけでなく、入居中の支援も重要だという考えによるものです。政府は同制度について、「施行後10年間で10万戸供給」との目標を掲げています。
地域の居住支援体制の強化へ向けて、国交大臣と厚生労働大臣が共同で「基本方針」を策定する制度も新たに設け、住宅政策と福祉政策の連携を推進。市区町村による居住支援協議会の設置も努力義務化し、行政による支援体制の整備・強化を図りました。
附帯決議は、こうした住宅及び福祉分野間の連携推進へ向け、具体的な内容や措置を図るよう求める項目を複数設けました。その他では、「家賃や家賃債務保証料の低廉化補助等」により低所得者もセーフティネット住宅を利用しやすく、居住サポート住宅が「貧困ビジネス等に悪用されないよう、適切な認定基準と厳正な監督」を求めます。
居住支援法人が残置物処理に行うに当たっては、残置物処理の専門業者との過当競争を防ぎ、質が損なわれないよう措置を講ずるよう記載しました。また、公営賃貸住宅のストック活用や、UR賃貸住宅における家賃減免措置の実施についても言及しており、公的な賃貸住宅も生かして住宅セーフティネット機能の充実化を目指します。
同改正法の成立により、今国会における住宅・不動産分野への影響が大きな法案は、すべて成立したと言えます。
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皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
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- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
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- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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