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家・住宅購入コラム

【抵当権をわかりやすく教えてほしい!】仕組みや用語を解説

住宅ローンを利用する際には「抵当権」という言葉が出てきます。馴染みがない人にとっては、抵当権の仕組みや、出てくる用語のひとつひとつが難しく感じるものです。

この記事では、抵当権における以下のポイントを、わかりやすく解説します。

・抵当権とはどんなものなのか
・債務者・債権者・抵当権設定者・抵当権者の違い
・抵当権の効力が及ぶ期間や範囲
・抵当権を設定する流れや費用

抵当権について理解を深め、借り入れに対する不安を減らしましょう。

抵当権とは?【わかりやすく解説】

抵当権とは、住宅ローンなどを利用し金融機関からお金を借りる際に、不動産に設定される権利のことです。民法によって定められています。

抵当権を設定する不動産は、お金を借りる人が所有する土地や建物です。
不動産に抵当権を設定することを「抵当に入れる」ともいいます。

この章では、抵当権について以下のポイントを解説します。

・誰のための権利なのか
・抵当権が実行されるとどうなるのか
・抵当権はどんなときに設定するのか
・抵当権は必ず設定しなければならないのか

1つずつ理解していきましょう。

誰のための権利なのか

抵当権は、お金を貸す側である金融機関の権利です。
金融機関としては、銀行やノンバンク(消費者金融業者など)が挙げられます。

抵当権は、担保の1つです。

住宅ローンの契約者からの返済が滞った場合、金融機関は担保になっている不動産を利用して、ローンの残金を回収します。連帯保証人が契約者の代わりに借金を支払うのと同じです。

つまり抵当権は「金融機関が踏み倒されないように、契約者の不動産を担保に取る」権利のことなのです。

抵当権が実行されるとどうなるのか

住宅ローンの契約者からの返済が滞ると、金融機関はローンの残金を回収するために抵当権を実行します。抵当権が実行された場合、担保になっている不動産が差し押さえられます。

具体的な流れは、以下のとおりです。

①返済が滞る
②金融機関が裁判所に抵当権の実行を申し立てる
③裁判所が不動産を差し押さえる
④不動産の状況調査がおこなわれる
⑤不動産が競売にかけられる
⑥最も高い購入金額を示した買い手に不動産を売却する
⑦売却で得た代金を、金融機関が回収する

競売は不動産の売却方法の1つで、オークションのようなものです。不動産が差し押さえられた場合、たとえその不動産に住んでいたとしても、強制退去となります。

ただ、返済が滞ってすぐに差し押さえられるわけではありません。郵便や電話によって何度か支払いの催促が行われ、それでも返済ができない場合に差し押さえとなるのです。

抵当権はどんなときに設定するのか

抵当権を設定する必要があるのは、金融機関からお金を借りるときです。

金融機関からお金を借りることを「融資を受ける」と言い、具体的には以下のようなケースが挙げられます。

・住宅購入のために住宅ローンを組んだとき
・不動産担保ローンを利用してお金を借りたとき
・ローンを借り換えたとき

住宅ローンと不動産担保ローンの主な違いは、借りたお金の使い道です。
住宅ローンは、基本的にこれから購入する家のために利用します。

一方で不動産担保ローンは、すでに所有している不動産を担保にしてお金を借りることが多いです。

またローンの借り換えとは、ローンの返済中に金融機関を乗り換えることです。
抵当権の権利を持つ金融機関が変わるため、抵当権を再設定する必要があります。

抵当権は必ず設定しなければならないのか

住宅ローンを利用する際には、抵当権は必ず設定しなければなりません。
なぜなら住宅ローンは、基本的に「抵当権を設定すること」が融資の条件となっているためです。

しかし住宅ローンのなかには、抵当権を設定しなくて良いものもあります。
これを「無担保住宅ローン」といいます。

無担保住宅ローンは、不動産を差し押さえられるリスクはありませんが、以下のようなデメリットが生じる可能性があるため注意が必要です。

・金利が高い
・融資条件が厳しい
・借りられる金額が少ない
・返済期間が短い

金融機関にとってリスクが大きい無担保住宅ローンは、返済能力が高く、返済の見通しが立ちやすい人が利用できる傾向にあります。

債務者・債権者・抵当権設定者・抵当権者は誰のこと?

住宅ローンの利用や抵当権の設定にあたって、債務者や債権者など「〇〇者」という言葉がよく出てきます。契約内容を正しく理解するためにも、それぞれが指す人を把握しておくことが大切です。

この章では、以下について解説します。

・債務者と債権者
・抵当権設定者と抵当権者

それぞれ見ていきましょう。

債務者と債権者

債務者とは、お金を借りている人のことです。

お金を貸してくれた人に対して、お金を借りた際の契約に沿って返済していく義務があります。
「債務者 = 住宅ローンの契約者」だと思っておきましょう。

また債権者とは、お金を貸した人のことです。

お金を貸した相手である債務者から、お金を返してもらう権利があります。
つまり「債権者 = 金融機関」ということになります。

抵当権設定者と抵当権者

抵当権設定者とは、自分が所有する土地や建物などの不動産に、抵当権を付けている人のことです。不動産の所有者(名義人)にあたります。住宅ローンでは基本的に「抵当権設定者 = 債務者(住宅ローンの契約者)」です。

また抵当権者とは、抵当権の権利を持っている人のことです。貸したお金を返してもらえない場合、抵当権を実行することにより、不動産の売却金を回収できる立場にあります。

つまり「抵当権者 = 債権者(金融機関)」ということになります。

抵当権の効力はいつまで・どこまで及ぶ?

抵当権を設定する際には、以下について理解しておくことも大切です。

・抵当権の効力が続く期間
・抵当権の効力が及ぶ範囲

抵当権の効力が続く期間とは「抵当権が実行される可能性がある期間」のことです。また抵当権の効力が及ぶ範囲とは「抵当権が実行された際に差し押さえられるものの範囲」を指します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

抵当権の効力が続く期間

抵当権の効力は、住宅ローンなどの返済が終わるまで続きます。

ローンをすべて返済してしまえば、抵当権を実行する可能性がなくなるため、抵当権の効力は無くなるのです。しかしローンの返済が終わっても、登記簿には抵当権が残り続けます。

登記簿とは、不動産における以下のような情報が記録されている帳簿のことです。

・住所
・面積
・構造
・所有者
・権利関係

登記簿に抵当権が残っている場合、不動産を売却したり新たにローンを組んだりする際にデメリットがあります。

具体的なデメリットは、以下のとおりです。

・不動産を売りに出しても買い手が付きづらい
・不動産担保ローンの審査が通りづらい

抵当権の効力に関係なく、登記簿上に抵当権が付いている場合「抵当権が設定されている = 差し押さえのリスクがある不動産」として見られてしまいます。そのため、資産として有効活用しづらくなってしまうのです。

抵当権の効力が及ぶ範囲

抵当権の効力は、抵当権を設定した不動産以外にも及びます。「抵当権を設定した不動産にくっついているものには、抵当権の効力が及ぶ」というのが、基本的な考え方です。

不動産にくっついているものを「付加一体物(ふかいったいぶつ)」といいます。たとえば土地に抵当権を設定している場合、土地にくっついている庭木は付加一体物です。

また抵当権を設定した際に存在していた「従物(じゅうぶつ)」にも、抵当権の効力が及びます。

従物の具体例は、以下のとおりです。

・建物にある畳・ふすま・エアコン
・土地にある石灯籠・庭石

従物は、不動産にくっついていない(取り外しができる)ように見えますが、付加一体物に含まれるという解釈です。もし抵当権を設定する際の契約書に特約があれば、その内容に従います。

抵当権設定の流れや費用は?

この章では、抵当権を設定する際の流れや費用について解説します。
実際の手続きの際に慌てないように、事前に把握しておくことが大切です。

抵当権設定の流れ

抵当権を設定する際の流れは、以下のとおりです。

①金融機関と契約を結ぶ
②必要書類を集める
③抵当権設定登記を申請する

手続きは基本的に司法書士が代行してくれますが、それぞれのステップの詳細を把握しておきましょう。

金融機関と結ぶ契約とは?

ローンの利用で抵当権を設定する際には、金融機関と以下の契約を結びます。

・金銭消費貸借(きんせんしょうひたいしゃく)契約
・抵当権設定契約

金銭消費貸借契約は、借り入れる金額や返済期間など、お金を貸し借りすることに対して結ぶ契約です。抵当権設定契約は名前のとおり、抵当権を設定することに対して結びます。

金融機関によっては、1つの契約書に上記2つの契約内容が記載されているケースもあります。

必要書類とは?

抵当権を設定する際の必要書類とは、次に解説する「抵当権設定登記」に必要な書類のことです。
金融機関や司法書士の指示に従い、以下のような書類を集めます。

・登記識別情報(不動産の権利書)
・3ヶ月以内に発行された印鑑証明書
・委任状

抵当権設定登記とは?

抵当権設定登記とは、不動産に抵当権が設定されたことを登記簿に載せるための手続きのことです。申請書を記入し、必要書類とあわせて法務局に提出することで、登記ができます。

抵当権設定登記が完了したら、法務局で「登記事項証明書」を取得し、不動産の登記情報を確認します。登記が完了したことの証明として、登記事項証明書を金融機関に提出するのが一般的です。

抵当権設定にかかる費用

抵当権を設定するための抵当権設定登記には、以下のような費用がかかります。

・登録免許税
・印紙税
・登記事項証明書・印鑑証明書の発行手数料
・司法書士への報酬

それぞれ詳しく見ていきましょう。

登録免許税とは?

登録免許税とは、登記を行う際に納める税金のことです。

必要な税額分の収入印紙を購入し台紙に貼り付けて、抵当権設定登記の申請書とあわせて法務局に提出します。収入印紙は、郵便局や法務局で購入可能です。

抵当権設定登記にかかる登録免許税は、以下の式で計算します。

【 ローンで借り入れる金額 × 0.4% 】

たとえば金融機関から4,000万円を借り入れる場合、4,000万円×0.4%なので、登録免許税は16万円です。また2024年3月31日までは、一定の条件(床面積が50㎡以上など)を満たすと、登録免許税が軽減されます。

軽減された登録免許税の計算式は、以下のとおりです。

【 借り入れる金額 × 0.1% 】

印紙税とは?

印紙税とは、契約書を作る際に納める税金のことです。
必要な税額分の収入印紙を購入し、契約書に貼り付けて納税します。

4,000万円の金銭消費貸借契約を結ぶ場合、契約書に必要な印紙税額は2万円です。
契約書に記載されている契約金額によって、印紙税額が変わります。

登記事項証明書・印鑑証明書の発行手数料とは?

登記事項証明書や印鑑証明書を発行する際には、発行手数料がかかります。
それぞれの金額は、以下のとおりです。

・登記事項証明書:600円(法務局の窓口で請求する場合)
・印鑑証明書:300円

登記事項証明書は、オンラインで請求すると手数料が安くなります。

・オンライン請求→郵送受け取りの場合:500円
・オンライン請求→登記所や法務局証明サービスセンターで受け取りの場合:480円

司法書士への報酬とは?

司法書士への報酬とは、抵当権に関する手続きを手伝ってくれた司法書士に支払う報酬のことです。司法書士にサポートや代行を依頼することで、正確かつスムーズに手続きを進められます。

司法書士への報酬額の相場は、3万円〜7万円ほどです。

抵当権の設定は自分でも手続きできますが、多くの金融機関が司法書士への依頼を必須としています。

まとめ【抵当権について理解しておくことが大切】

抵当権とは、ローンを借り入れる際に不動産に設定される、金融機関の権利のことです。ローンの返済ができなくなってしまうと、抵当権が実行され、不動産を手放すことになります。

住宅ローンのなかには、抵当権を設定する必要がないものもありますが、利用条件が厳しい傾向にあります。抵当権の設定には費用がかかるため、手続きの流れとあわせて「何にいくらかかるのか」を把握しておくことが大切です。

この記事で解説したこと以外にも、わからないことがあれば金融機関や司法書士に確認し、抵当権について理解しておきましょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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