Column

家・住宅購入コラム

住宅購入で親からの支援は平均いくら?贈与税は?くわしく解説

「住宅購入で親から支援を受けている人はどのくらいいるんだろう?」
「親からの支援を受けた人たちの平均金額を知りたい」
「親からの支援でも税金はかかるの?」

住宅購入資金を親から支援してもらう場合、このような疑問を持つ人が多いです。

本記事では、不動産流通経営協会(FRK)から公表されているデータを基に、親から受けた支援の平均額や制度の利用状況をまとめました。また、その際にかかる税金などについてもわかりやすく解説します。

住宅購入資金を親から支援してもらう可能性がある人はぜひ参考にしてください。

住宅購入で親からの支援を受けた人の平均額

2022年に新築を購入した人が親から受けた支援の平均額は「998.2万円」です。ちなみに、2021年は「1,036.7万円」でした。

上記の数字は不動産流通経営協会(FRK)が公表している「不動産流通業に関する消費者動向調査」の結果によるものです。

これらの金額をどう見るかは人それぞれですが、この数字には以下の要素が含まれています。

・調査対象は同調査に協力した一部の人たちの平均であり、対象者の居住エリアはランダムである
・近年はウッドショックなどの影響で建築資材や材料費、輸送費などが値上がりしており、住宅価格も上昇傾向にある
・首都圏と地方では土地の価格や世帯の所得平均などにかなりの差がある

このような内容のデータなので、あくまで参考程度に留めましょう。

住宅購入で親から支援を受けた世帯の割合

FRKが2021年4月から2022年3月までの約1年間で、首都圏で住宅を購入した人を対象にしたアンケートの結果は以下のとおりです。

・親から支援を受けた世帯の割合は14.2%(新築・中古問わず)
・有効回答数1,311件
・新築購入者は267件
・中古購入者は1,044件
・支援を受けた人全体の20%超が30代

参考:不動産流通経営協会(FRK)のデータの根拠

不動産流通経営協会(FRK)は、住宅売買の仲介や新築物件の販売を行っている大手・中堅の住宅・不動産会社を会員として有する一般社団法人です。

上記のデータはFRKの会員企業の協力のもと、住宅を取得した人を対象に行われたアンケート結果が根拠となっています。

住宅購入時の親からの支援には税金がかかる場合あり

親からの個人的な資金支援であっても、法律上は「贈与」扱いになり、受け取った金額によっては「贈与税」が課税されるので注意が必要です。

一方で贈与税には「非課税枠」というものが設定されており、条件を満たして手続きを踏めば、一定額までは贈与税がかからないという特例があります。

贈与税にも種類がある

贈与税は贈与されたお金の用途(使いみち)によって課税額や非課税枠が変わるため、少し複雑です。

今回のケースのように「住宅を購入する資金」の用途で親から支援を受ける場合、法律上は「住宅取得資金贈与」に該当します。住宅購入資金の贈与に対して贈与税がかかるボーダーラインを知るためには、「住宅取得資金贈与の非課税特例」を理解する必要があります。

住宅取得資金贈与の非課税特例

住宅取得資金贈与の非課税特例とは、住宅を購入する用途で親などから贈与を受けた場合、条件を満たしていれば贈与税の控除を受けられる制度です。

親からの支援はいくらまで非課税?

住宅取得資金贈与の非課税枠は条件によって110万円〜1,110万円の幅で変動します。
内訳は以下のとおりです。

・贈与税そのものに設定されている非課税枠(基礎控除):110万円
・建物の種別によって変動する非課税枠:500万円〜1,000万円

このうち、建物の種別によって変動する非課税枠は「住宅取得資金贈与の非課税特例」を受けるための手続きをする必要があります。

購入した建物が省エネ住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅の場合は500万円が非課税枠の上限となり、合計すると以下のようになります。

・購入する建物が省エネ住宅の場合:1,110万円
・購入する建物がそれ以外の場合:610万円

たとえば、省エネ住宅を購入して親から1,500万円の贈与を受けた場合、1,500万円−1,110万円の差額390万円に対して贈与税が課されます。

非課税枠を超えた贈与を受けたい場合は?

住宅取得資金贈与の非課税特例は、あくまで「その金額までは贈与税を免除する」という制度のため、非課税枠を超えて贈与を受けることにはなんの問題もありません。

非課税枠を超える場合は以下のようになります。

・住宅購入資金として親から1,500万円の贈与を受けると仮定
・購入する建物が省エネ住宅として条件を満たし、非課税枠は1,000万円
・さらに贈与税の基礎控除で110万円
・1,500万円−1,110万円=390万円に対してのみ贈与税が課税される

このように、非課税枠を超えた部分には贈与税が課税されますが、特例を受けずに1,500万円を贈与してもらうことに比べれば大幅な節税が可能となります。

ただし、住宅取得資金贈与の非課税特例は自動的に控除されるわけではなく、あくまで自己申告が必要な点には注意が必要です。

贈与税の非課税特例を利用した世帯の割合

再びFRKの調査結果の話に戻ります。

住宅購入者のうち非課税特例を利用した世帯は12.1%で、このうち「非課税特例を利用したことで借り入れ資金を少なくすることができた」と回答した人は63.3%でした。

この調査結果からも、住宅購入のために親から支援を受ける場合は贈与税の非課税特例を利用したほうがお得になる可能性が高いことがわかります。

住宅購入で親から支援を受ける場合の注意点

まとめ

住宅購入で親から支援を受ける場合は様々な点に注意が必要です。

特に今回のケースでは「親からの個人的な支援だから」と安易に考えがちですが、法律上は様々な制限や義務が絡んできますし、たとえ知らなかったとしても手続きや納税を怠ると脱税になってしまう危険性があります。

ここでは親から支援(贈与)を受けるにあたっての注意点を解説します。

情報収集してから贈与を受けるタイミングや金額を決める

納税義務があることは知っていても、非課税枠の存在を知らなければ払わなくても良い税金まで納めてしまう可能性があります。

逆に、非課税枠の存在を知っていても、贈与を受けたタイミングが悪かっただけで非課税特例の対象外になってしまう場合もありますし、詳しい条件を理解していなかったばかりに対象外の要件に引っかかってしまい、非課税特例を受けられないケースもあります。

これはあくまで理想ですが、贈与と非課税特例について十分情報収集してから贈与を受けるタイミングや金額を決めることをおすすめします。

非課税特例を受けるためには自己申告が必要

非課税特例を受けるためには、贈与税の申告が必要です。

さらに、贈与税は「贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日の間」に申告しなければならず、期間中に申告できなかった時点で非課税特例を受ける条件から外れてしまいます。
申告期間が非常に限られているため、申告時期には十分注意しましょう。

ちなみに、非課税特例を受けるために贈与税の申告が必要なわけではなく、非課税特例を受けるかどうかにかかわらず贈与税を申告する必要があります。

非課税特例を受けるためには細かい条件がある

贈与税の申告をすれば誰でも非課税特例が受けられるかというと、残念ながらそうではありません。非課税特例を受けるための条件は以下の分野で設定されています。

・贈与を受けるタイミングに関する条件(新居に居住前など)
・贈与をする側の条件(今回のケースのように親である場合は問題なし)
・贈与を受ける側の条件(年齢や所得など)
・購入する物件に対する条件(築年数や構造など)

贈与を受けるタイミングはシビアであるものの、事前に情報があれば調整することが可能です。その他の条件もそこまでハードルの高いものではありませんが、項目が多いのが懸念です。

非課税特例には対象外がある

非課税特例は「住宅取得資金」に対して設定されているものなので、以下の用途の場合は対象外となります。

・住宅取得時の登記費用や手数料など
・家具、家電の代金
・引越し費用

ただし、贈与税の基礎控除は適用となるので、110万円を超えたぶんに対して課税されることになります。

非課税枠の上限は頻繁に変更されている

非課税枠の上限は一定ではなく、割と短いスパンで改正されてきている過去があります。

・2019年4月〜2020年3月:最大3,000万円
・2020年4月〜2021年12月:最大1,500万円
・2022年1月〜2023年12月:最大1,000万円

上記からもわかるとおり近年は上限が減少傾向にあり、短いスパンで金額の変動幅も大きい傾向があります。

現行の制度も2023年12月が期限となっていますが、期限内に変更される可能性もゼロではありません。以前調べたときとは状況が変わっている可能性が高いため、非課税特例を検討する場合は常に最新の情報を調べましょう。

非課税特例を受ける条件や手続きについてはこちらの記事でまとめているので、あわせて参考にしてください。

相続時精算課税制度との併用

贈与税の申告をする場合、「相続時精算課税」を選択することも可能です。
相続時精算課税とは、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫へ贈与をする場合に、最大で2,500万円が非課税になる制度です。

相続時精算課税と住宅取得金贈与の非課税特例は併用できるため、合計で最大3,500万円まで非課税となりますが、注意点があります。

・2,500万円を超えたぶんには一律で20%の贈与税が課される
・非課税となった2,500万円は相続財産に加算されるため、相続税が高くなる
・贈与税の基礎控除110万円は対象外になる
・贈与した親が亡くなるまで有効なため、途中で暦年課税に変更できない

このように、贈与を受けたときの納税額は減らせるものの、結果的には完全な非課税ではなく相続税への繰り越しになるという側面もあります。

相続時精算課税制度との併用にはデメリットもあるため、併用を検討する場合は十分注意しましょう。

夫婦共同所有の場合は非課税特例が2倍になる

住宅取得資金贈与の非課税特例は、購入した建物の所有者に対して適用される制度です。
このため、夫婦で建物の共同所有者になる場合は夫婦それぞれに適用されます。

・夫婦共同所有で省エネ住宅を購入
・夫の父から夫への贈与にかかる贈与税は、基礎控除と合わせて1,110万円が非課税
・妻の父から妻への贈与も同様
・1,110万円×2=2,220万円が非課税

非課税特例を受ける条件をすべて満たしていることが前提になりますが、上記のような計算になります。

親からの贈与ではなく借りたことにした場合、贈与税はどうなる?

疑問に思う女性

親からお金を借りる場合は贈与ではなく「融資」扱いになるため、贈与税はかかりません。
ただし、親子間の口約束だけでは不十分で、場合によっては贈与とみなされる可能性があります。

贈与とみなされないためのポイントは以下のとおりです。

・そもそも返済可能な金額であること
・金銭消費賃借契約書を作成しておくこと
・定期的に返済をすること
・利子を支払うこと(金利が0%だと贈与とみなされる)

当然ながら、金融機関から借りる場合にかかる手数料などがかからず、返済期間や金利もある程度自由に設定できるぶん、親から借りるほうが圧倒的に有利です。

一方で、親子でのやり取りは曖昧になりやすく、第三者に対して貸し借りがあったことを証明できなければ法的な条件を満たすことが困難になってしまいます。親子であってもしっかりと取り決めを交わすことが重要です。

贈与に関する契約書を作成する

親から住宅購入のための贈与を受けた場合は、贈与契約書の作成をおすすめします。

口頭での契約も有効ですが、税務調査などで贈与の事実についてトラブルが起きた際に、契約書により贈与の事実を立証できるためです。また、書面による贈与契約は取消できないため、支援金を受け取る側にとって契約書は安心材料になります。

贈与契約書の書き方に決まりはありませんが、トラブル回避のために以下の項目を記載しておきましょう。

・贈与者の氏名と住所
・受贈者の氏名と住所
・贈与契約締結日と実際に贈与する日付
・贈与財産に関わる情報
・贈与方法

贈与税を支払わなかった場合、ペナルティが課せられる可能性がある

贈与の事実がある場合は、申告を行い贈与税を支払う必要があります。万が一贈与税を支払わなかった場合、無申告加算税や重加算税、延滞税など、さまざまなペナルティが課せられるため気をつけなければなりません。

無申告加算税とは、期日までに申告しなかった場合のペナルティです。本来納めるべき税金に5〜20%加算されます。また、意図的に申告しなかった場合や虚偽の申告があった場合は、重加算税といって最大40%まで加算されることもあります。

延滞税は、期限までに納税しなかった場合、期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課されるペナルティで、利息に相当するものです。贈与税を支払わないと、余計な税金が課されるため、しっかりと申告・納税しましょう。

税金を抑える方法

贈与税は、前述のとおり110万円まで基礎控除の適用が可能です。この基礎控除は毎年利用できるため、仮に10年間110万円ずつ贈与すれば、1,100万円を非課税で受け取れます。

住宅購入費は数千万円といった高価格帯になるため、基礎控除を利用する場合は110万円以下の贈与を毎年繰り返しましょう。

住宅購入時の親からの支援|まとめ

不動産流通経営協会(FRK)による2022年度の調査結果では、新築を購入した人の平均額は998.2万円で、住宅取得資金贈与の非課税特例を利用した世帯は12.1%でした。

たとえ親からの個人的な支援であっても、金額によっては贈与にあたり贈与税が課されます。一方で、非課税特例に関する知識があり、条件を満たしていれば節税が可能な場合もあります。

税金や法律は能動的に学ぼうとしない限り、日常生活で知る機会はほとんどありません。知っていることで得することもあれば、知らないことで思わぬ痛手を被ることもあります。

すべてについて知ることはできないまでも、何か行動を起こす前に情報収集する習慣を付けておくことが大切です。

ファイナンシャルプランナーに資金計画を無料相談しよう

住宅購入資金を親から支援してもらう場合で、「住宅取得資金贈与の非課税特例」を利用する際は、必ず専門家に相談しながら資金計画を立てるようにしましょう。適用の条件が細かいだけでなく、贈与を受けるタイミングもシビアです。また、税務署への申告義務もあります。

万が一適用対象外になると、多額の贈与税を負担することになりかねません。親からの資金援助のもと安心して住宅購入をするためにも、まずはファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

営業電は0!住宅購入のプロに相談しよう

×

ページの一番上へ