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家・住宅購入コラム

住宅購入の頭金はいくら必要?目安・平均・注意点をわかりやすく解説

人生で一番大きな買い物になるかもしれないマイホーム。住宅購入で必ず判断を迫られるのが「頭金」です。

「住宅購入の頭金はいくら用意すればいいの?目安を知りたい」
「頭金ゼロでも住宅購入はできる?」
「頭金を用意するにあたって注意点があったら知りたい」

いつの時代もこのような疑問を持つ人は多いです。

本記事では、住宅購入の頭金の目安、頭金ゼロで住宅を買う場合の概要、頭金を用意するメリット・デメリットなどについて解説します。

住宅購入を少しでも検討している人はぜひ参考にしてください。

住宅購入の頭金の目安は?

頭金は「手持金」とも呼ばれ、目安は「購入価格の10〜20%」が一般的です。
購入する物件が3,000万円であれば、300万円〜600万円程度が頭金の目安ということになります。

参考:住宅購入の頭金の平均

住宅金融支援機構が調査・公表している「2022年度フラット35利用者調査」で、頭金の平均金額と住宅購入費用に対する頭金の割合を確認することができます。

建物種別 頭金の平均額 住宅購入費用に対す
頭金の割合
注文住宅 596.6 万円 16.7 %
土地付き注文住宅 412.3 万円 9.3 %
建売住宅 270.0 万円 7.5 %
マンション 785.9 万円 17.4 %
中古戸建 214.9 万円 8.2 %
中古マンション 418.9 万円 13.8 %

出典:「2021年度 フラット35利用者調査

住宅の種類によって開きはあるものの、実際に購入価格の10〜20%を頭金としている人が多いことがわかります。

住宅購入の頭金を支払うタイミングは?

頭金を支払うタイミングは「売買契約から物件の引き渡しを受けるときまで」です。住宅購入において住宅ローンの融資が実行されるのが引き渡しのときで、頭金はこのときまでに支払うのが一般的です。

住宅購入は頭金ゼロでも大丈夫?

ここからは、頭金を用意しない場合はどうなるのかを解説します。

頭金ゼロでも住宅ローンは組める

頭金ゼロでも住宅ローンを組むことは可能で、これを「フルローン」といいます。実際に全体の1割前後は頭金ゼロでフルローンを組んでいるというデータもあります。

以前は購入価格の8〜9割が融資の限度額でしたが、全額融資のフルローンを提供する金融機関も増えてきました。近年は住宅ローンの低金利が続いていることにくわえて、住宅ローン控除や軽減税率などが充実しているため、返済者の負担が少なくなっていることが影響していると考えられます。

希望する金額を借りられるとは限らない

頭金ゼロでもローン自体は組めるものの、希望する金額を借りられるとは限らない点には注意が必要です。なぜなら、住宅ローンの借入金額は年収や年齢、勤務地など様々な要素を考慮して決定されるからです。

決定された借入金額よりも物件の価格のほうが高い場合は、結局頭金を用意するか諦めるかという選択を迫られます。

また、ほとんどの住宅ローンは不動産の担保評価額(銀行が判断した不動産の価値)と同額の借入金額が設定されるため、中古物件などの場合は販売価格と同額まで借りられない可能性もあります。

頭金ゼロは毎月の支払額と利息が増える

住宅ローンの利息は借入金額に比例する傾向があります。

たとえばポピュラーな住宅ローンであるフラット35では、頭金が10%以下の場合は金利が約0.26%高くなる決まりになっています。

以下の表は4,000万円の住宅を年利1.4%、35年ローンで買う場合でシミュレーションしたものです。なお、頭金ゼロは「年利1.4%+0.26%=1.66%」で計算しています。

頭金の割合 頭金の金額 借入金額 毎月の支払額 総支払額
0% 0円 4,000 万円 125,632 円 約 5,277 万円
価格の10% 400 万円 3,600 万円 108,471 円 約 4,956 万円
価格の20% 800 万円 3,200 万円 96,419 円 約 4,850 万円

※総支払額には頭金も含む

このシミュレーションからもわかるように、頭金ゼロと20%では毎月の支払額が29,000円以上も増え、総支払額に至っては約427万円もの差が出ます。

住宅購入の頭金を用意するメリット

ここまでの解説を踏まえて、改めて頭金を用意するメリットを紹介します。

毎月の返済額を抑えられる

頭金が多ければ多いほど住宅ローンの借入金が少なく済みます。頭金のぶんを差し引くと、月々の返済額も当然少なくなります。

支払い総額を抑えられる

前項のシミュレーションからもわかるとおり、利息は借入金の金額に比例するため、借入金が少なければ利息も抑えることができ、そのぶん支払総額も少なくなります。

返済期間を短縮できる

・頭金500万円、借入金3,000万円
・頭金ゼロ、借入金3,500万円

上記2つのケースで月々の支払金額を同じとした場合、頭金を入れた前者のほうが早く返済が完了します。当然ですが、返済期間を同じにすれば月々の支払金額が減ります。

選べる物件が増える

前述のとおり、住宅ローンの借入金額は様々な要素を考慮して決定されるため、人によって借入可能金額が異なります。

少し余裕をもって頭金を用意できる場合、全額を住宅ローンで賄えない高値の物件を買える可能性も出てくるため、選べる物件の選択肢が増えます。

頭金を用意するデメリット

頭金を用意することはメリットばかりではありません。ここからはデメリットについても解説します。

時間がかかる

住宅購入の頭金は数百万円と高額です。元々貯蓄がある場合は良いですが、新たに貯め始めるとなると相応の時間がかかりますし、実際には頭金以外にかかる費用も貯める必要があるため、より長い時間がかかります。

貯めている間は今の家の家賃もかかり続けることになるので、場合によっては頭金ゼロで住宅ローンを組んでしまったほうが総支払額を抑えられる場合もあります。

ローン完済時期が遅れる

頭金を用意するのに時間がかかるということは、住宅ローンを組む時期も完済時期もすべてが後ろ倒しになるということです。毎月の支払額や返済計画にもよりますが、収入が下がりやすい定年退職後も支払いが続くケースも珍しくありません。

住宅ローンは猶予が長ければ長いほど人生設計に余裕が生まれるので、頭金を用意するための期間をどのように設定するかは重要なポイントになります。

世の中の経済状況が変わる可能性がある

頭金を貯めている数年の間に、日本や世界の経済状況が変わる可能性もあります。もちろんそれが悪い変化とは限りませんが、金利などが上昇すると同じ価格の住宅でも総支払額が数十万、数百万単位で変わってしまう可能性があります。

頭金ゼロの代わりに繰り上げ返済という選択肢

頭金を用意すること自体はメリットが多い反面、時間をかけて貯めることにはデメリットも存在します。

頭金を用意している期間中に今の家の家賃を払い続けるのであれば、頭金ゼロで住宅ローンを組んで住宅を購入し、新しい家に住みながらお金を貯めて繰り上げ返済に充てたほうが良いという考え方もできます。言い換えると「頭金の後払い」のようなものです。

頭金ゼロには、月々の支払金額が増えることや返済期間が延びるデメリットがありますが、繰り上げ返済をうまく活用することでこれらのデメリットを相殺できる可能性があります。

資金を貯めている間に不測の事態が起こる可能性があるのは、頭金でも繰り上げ返済でも同じことですが、繰り上げ返済の場合は時期や支払金額を変更することもできるため、ある程度柔軟に対応できます。

住宅購入の頭金に関する注意点

ここからは頭金に関する注意点を解説します。

頭金ゼロ=現金ゼロではない

「頭金ゼロでも住宅ローンは組める」という説明をしましたが、現金がゼロで住宅を購入できるわけではありません。たとえば以下のような費用は原則、現金払いです。

・物件の仲介手数料
・住宅購入にかかる各種税金
・移転登記などにかかる報酬や手数料
・引っ越し業者への支払い
・引っ越しにともなう家具、家電
・各種保険料

このような費用も含めて借り入れすることも可能ではありますが、何でもかんでもローンに頼るのはさすがにリスキーと言わざるを得ません。

一般的には「購入価格の5〜10%程度の現金」を用意しておくのが良いとされています。

追加費用に対応できる準備をしておく

新築であれば建築中に仕様を変更したり、建材やオプションを変更をする可能性がありますし、新居にともなって家具や家電を新調したいと思い立つこともあるでしょう。

だからといって、一度契約した住宅ローンの借入金額を途中で増やすのはあまり現実的ではありません。この場合は再度書類を集め直して、新たに審査を受け直すのが一般的だからです。

このような場合は自己資金で対応するのが現実的なため、頭金の他にも余裕資金を確保しておくことが望ましいです。

住宅購入費用以外のお金も取っておく

月々の支払額や総支払額を減らしたいからといって、無理に頭金を払いすぎるのも考えものです。手元のお金に余裕がないと、急な病気や怪我、車の故障や子どもの教育費など、想定外の出費に対応するための資金を捻出することが難しくなってしまいます。

「頭金をいくら入れるか」と「手元にいくら残すか」を双方から考えて、無理のない適切な頭金を設定するのが望ましいです。

住宅購入の頭金に関してよくある疑問

最後に、頭金にまつわるよくある疑問について解説します。

住宅購入するなら貯金はいくら必要?

貯金額は個人差が大きいので一概には言えませんが、人生はいつなにが起こるかわからないものです。

頭金、手続きなどにかかる諸費用、引っ越し代や家具家電の予算を除いて「生活費の3〜6ヶ月分」は最低限の備えとして残しておきたいところです。

どうしても頭金を捻出したい場合にできることは?

親からの支援(贈与)を受けるか、親から借りる(融資)のもひとつの方法です。

贈与の場合、金額によっては贈与税が課税されますが、条件を満たして所定の手続きをすれば最大で1,110万円の非課税枠が利用できます。

融資の場合、銀行などから借りるよりも返済金額や期間を自由に決められるため圧倒的に有利です。しかし、親子だからといって金利を0%にしたり、実際には定期的に返済していないといった事実があると、贈与とみなされて贈与税が課されてしまいます。

親子であってもお金の貸し借りをしている事実と、銀行同様に定期的に返済していることを第三者に証明できる用意をしておく必要があります。

車など他のローンがあると住宅ローンは組めない?

他のローンを借りていても、支払いが滞るなどしていなければ住宅ローンの審査にはほとんど影響ありません。ただし、借入上限金額は他のローンと合算されるため、住宅ローンで受けられる融資額には影響が出る可能性があります。

住宅ローンの借入額の相場は年収のおよそ5〜7倍と言われています。年収400万円で他に車のローン200万円を借りていると仮定すると、以下のようになります。

・400万円×5=2,000万円、400万円×7=2,800万円
・借入限度額は2,000〜2,800万円
・ここから車のローン200万円を引いた1,800万円〜2,600万円が上限額

このように、借りる相手やローンの名称が変わっても上限金額は一定なため、住宅ローンとして借りられる金額が減ってしまう可能性があります。

頭金と手付金はなにが違うの?

頭金は購入代金の一部を自己資金で支払うものを言います。

一方、手付金は売買契約のときに購入代金の一部を支払うものを指すので、頭金の一部と言えます。しかし、手付金の本来の目的は「契約する意思を表示すること」や「契約を確定させること」にあるという点が異なります。
このため、契約後にキャンセルする場合は原則的に手付金を放棄しなければなりません。

なお、手付金の目安は購入代金の5〜10%程度が一般的です。

まとめ

住宅購入の頭金は購入価格の10〜20%程度が目安ですが、頭金ゼロでも住宅ローンを組むことは可能です。

頭金ゼロの場合は月々の支払金額や金利が高くなる傾向がありますが、繰り上げ返済でこれらのデメリットを緩和・相殺できる可能性があります。

資金に余裕があり、すぐに頭金を支払える場合はメリットも多くおすすめですが、頭金を新たに貯める場合はデメリットが目立つようになります。

このように、住宅購入は頭金ありの場合もゼロの場合もメリット・デメリットが存在するので、自分の経済状況や返済計画に基づいて余裕を持って購入できる方法を選択しましょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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