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家・住宅購入コラム

住宅金融支援機構とはどんな会社?銀行との違いや審査基準について徹底解説!

住宅金融支援機構とはどんな会社なのでしょうか?一般的には、フラット35などの金融商品を提供している会社になりますが、実際の融資の申し込みなどは銀行の窓口などから行います。多くの人が住宅金融支援機構という会社がフラット35などを取り扱っているということは知っているものの、会社自体の実態を把握している人はほとんどいないのではないでしょうか。また、住宅金融支援機構の審査は一般的に銀行の審査より借りやすいなどとも言われますが、実際の審査内容にはどのような違いがあるのでしょうか?この記事では、住宅金融支援機構とはどんな会社であるのか、どんな金融商品を取り扱い、銀行との違いは何になるのか、などについて解説します。

住宅金融支援機構の基礎知識

はじめに、住宅金融支援機構についての基礎知識を紹介します。

住宅金融支援機構とは何か?

以下は、住宅金融支援機構の概要となります。

設立 平成19(2007)年4月1日
資本金 6,940億7,542万円(令和4年3月31日現在、全額政府出資)
店舗 本店 : 〒112-8570 東京都文京区後楽1-4-10
支店 支店 : 全国の主要都市に8店舗
従業員数 906人(令和4年4月1日現在)
業務 証券化支援業務、住宅融資保険等業務、融資業務など
買取債権等残高  

23兆8,717億円(令和2年3月31日現在)

(うち買取債権:17兆594億円、うち貸付金:6兆7,770億円)

(引用)住宅金融支援機構HPより

 

住宅金融支援機構とは、資本金が日本政府全額出資の独立行政法人です。

所轄官庁は、国土交通省住宅局と財務省大臣官房政策金融課になります。

前身は、1950年に発足した住宅金融公庫です。旧住宅金融公庫は、顧客に直接融資を行っていたのですが、現在の住宅金融支援機構では民間の金融機関が長期固定のローンを安定して提供できるように資金の融通などを支援する、というスタンスに変わっています。

また、住宅金融支援機構には、顧客に案内する窓口がないため、この部分は旧住宅金融公庫時代と同様に民間の銀行やノンバンク系の会社が、フラット35などの融資の案内や取り付けなどを行っています。

なお、住宅金融支援機構の代表的な商品であるフラット35は、住宅ローンの債権を証券化し、投資家に投資してもらうことで安定的に資金調達できる仕組みを作っています。

数字で見る住宅金融支援機構

住宅金融支援機構は設立から15年が経過し、多くの実績やノウハウがあります。

取り扱い金融機関(※令和4年3月31日現在)  

(フラット35買取型の場合)324機関 

※保証型を取り扱うのは8金融機関(2021年4月現在)

適合証明検査機関(※令和4年3月31日現在) 130機関
MBS(資金担保証券)発行額(※令和3年度) 1兆5210億円
 

フラット35(買取型・保証型)申請件数

(※令和3年度)

94,705件
累積融資実績(※令和3年度)  

旧住宅金融公庫 1,941万戸

住宅金融支援機構 130万戸

 

マンションすまいる債新規応募組合

(※令和4年3月31日現在)

1,704組合

(引用)住宅金融支援機構HPより

 

住宅金融支援機構では、民間金融機関による長期の固定金利住宅ローン融資の支援を行っています。取り扱いの金融機関のうち、大半は信用金庫や地方銀行などです。

つまり地域に密着型の金融機関がフラット35などを取り扱うことで、全国民が公平に利用できるようになっています。なお、累積の融資実績については、旧住宅金融公庫時代には劣るものの令和3年度までに合計で2,000万戸以上となります。

昨今、住宅ローンの分野では都市銀行やネット銀行が、次々と変動金利にて低金利の商品を発売しています。フラット35は、長期間固定金利の商品であるため、支払額に安定性はあるものの一般的な銀行に比べると金利は高めです。

よって、旧住宅金融公庫時代に比べると利用者数は少なくなっています。

全国展開する店舗網

住宅金融支援機構の店舗網は、日本全国に8支店を展開しています。北は北海道、南は九州となり、各々の支店が周辺の都道府県をすべてカバーしているため、日本全国47都道府県で利用できる体制になっています。

住宅金融支援機構の強みとは

住宅金融支援機構の強みは、以下のとおりです。

 

・融資実績が豊富

・旧住宅金融公庫時代からのノウハウの蓄積

・関係機関とのネットワークが強固

・安定した財務状況

 

まずは、ほかのどの金融機関よりも融資の実績が豊富になります。また、公庫時代から蓄積してきたノウハウにより、債務者のあらゆる状況について柔軟に対応できます。

また、豊富な資金力、安定した財源により多くの顧客の融資を実現し、社会的な大きな役割を果たしています。

住宅金融支援機構が提供する主な金融商品

住宅金融支援機構が提供する主な金融商品は、下記のとおりです。

以下に、簡単な概要などを紹介していきます。

①個人向けの住宅融資

1つ目は、一番身近な個人向け住宅融資です。下記2つの金融商品を紹介します。

 

・フラット35

・リ・バース60

 

フラット35

フラット35は、住宅金融支援機構が提供する代表的な金融商品です。融資金額は100万円以上8,000万円以下、融資は9割まで(9割超の融資の場合には適用金利に+0.44%となる)、完済年齢は満80歳(融資の申し込みは70歳まで)、融資期間は最長で35年となります。

商品は、融資期間15年以上20年までの「フラット20」と、21年以上35年までの「フラット35」があります。

なお、返済期間が36年〜50年まで設定が可能な「フラット50」という商品もあります。

リ・バース60

リバース60とは、60歳以上の人向けに住宅のリフォーム・住み替え・買い替えを支援する金融商品です。リバース60の特徴は、月々の返済は利息のみとなり、元金は債務者が亡くなったときに、相続人の一括返済若しくは担保物件の売却で一括返済します。

一般的な住宅ローンは、収入に応じて融資金額が決定するため、仕事をリタイヤし収入が少なくなっている世帯には借りにくい商品でした。しかし、リバース60は自宅を担保に借りる有担保融資であるため、毎月の収入は年金のみであっても融資を受けられます。

なお、リバース60を利用した場合の融資上限額は、概ね担保物件の掛け目で50%~60%、新耐震基準を満たす住宅であること、融資の終期は債務者が亡くなったときになるのが特徴です。

②賃貸住宅向け融資

2つ目は、賃貸住宅向け融資になります。以下、2つの金融商品があります。

 

・子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資

・サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資

 

上記は、賃貸住宅を建設するオーナー向けに融資する商品となります。融資を受けるには、賃貸経営における適切な事業計画書などが必要です。

なお、融資金額は融資対象事業費(建築主体工事費、電気工事費、給排水衛生工事費等の本体工事費、設計費、敷地測量費、土地取得費など)100%まで可となります。

③マンション管理組合向け融資

3つ目は、マンション管理組合向けの金融商品です。

 

・マンションすまいる債

・マンション共用部分リフォーム融資

 

マンションすまいる債とは、住宅金融支援機構が発行する積み立て形式の債権のことです。現在、多くの管理組合で導入されており、1口50万円から購入可能で、最大10回(10年間)まで継続的に購入できます。

また、マンションすまいる債は、元本保証がされ安全性の高い商品であるため、加入自体に管理組合のリスクはない商品です。また、途中換金も可能であるので、急な修繕費の捻出で資金が必要になった時にも調達可能となります(中途換金には初回債券発行日から1年以上経過していることが必須です)。

一方で、一般的な金融商品より利息の受取額は少ないため、将来的に修繕積立費用を補填するまでの利益はあまり期待できません。

加入のメリットとしては、共用部分のリフォームでリフォーム融資を使うと、金利0.2%と保証料20%程度の割引を受けられます。

マンション共用部リフォーム融資とは、管理組合が行う外部や内部の共用部において、リフォーム工事を行う際に利用できる融資になります。先述にて紹介のとおりに、マンションすまいる債加入で金利や保証料の割引を受けられます。

④リフォーム向け融資

4つ目はリフォーム向け融資です。

リフォーム融資には、耐震改修工事に対する融資、高齢者向け返済特例として部分的バリアフリー工事・ヒートショック対策工事・耐震改修工事に対する融資、住み替え支援(耐震改修)に対する融資があります。

各々商品性に違いがありますが、おおむね融資限度額は1,500万円に設定されています。なお、利用条件により限度額は異なるので注意が必要です。

⑤借り換え向け融資

最後は、買い替え向け融資になります。

代表的なのはフラット35の借り換え融資です。商品の内容は、個人向け住宅融資とほぼ同一になります。また、リバース60でも借り換え融資を受け付けています。

フラット35と銀行の違い

ここでは、住宅金融支援機構の代表的な商品であるフラット35と銀行ローンの違いについて解説します。

①収入があれば基本誰でも借りられる

1つ目は、フラット35は収入があれば基本誰でも借りられます。民間の銀行でローンを借りるには、正社員以上の雇用形態で就業していることが必須となります。

よって、契約社員や派遣社員だと融資が厳しいケースが一般的です。しかし、フラット35では雇用形態は問わず、無職の人でも年金収入があれば、毎月の収入として融資を受けられます。

フラット35は年収の約9倍借り入れできる

フラット35の審査金利は、その月の実行金利であるため、民間の銀行より多く借り入れができます。35年返済の場合、年収の9倍程度の借入れが可能です。

例えば、年収500万円(35年返済)の人の借入可能額は約4,500万円となります。近年、不動産価格が高騰しているなかで、多くの借入額を設定できるのがフラット35です。なお、銀行では借入可能額がおおむね7倍程度となります。

②金利は全期間固定、しかし銀行より金利は高め

2つ目は、フラット35の金利は全期間固定金利であることです。よって、一度融資が実行されれば、融資実行月の金利が完済まで続くことになります。銀行ローンのような変動金利や短期物の固定金利ではないため、返済途中に金利が変わる心配がなく、返済自体は安定します。

なお、金利は銀行よりだいぶ高めです。銀行の変動金利は0.3%~0.6%台であり、フラット35との金利差は約1%以上あります。この金利差を負担してまで支払いの安定性を求める人は、少ないというのが事実です。

③団体信用生命保険は任意加入

3つ目の違いは、団体信用生命保険(以後団信)は任意加入となることです。

銀行は団信加入が原則必須となり、引き受け条件を緩和したワイド団信や、保証範囲を拡大した団信(金利負担有)もあります。

一方で、フラット35の団信は任意であるため、加入は義務ではありません。過去に3大疾病に該当する病気や生活習慣病などを患い団信に加入できない人でも、融資を受けられます。

なお、団信の保険料は、金利に含まれる金融機関と含まれない金融機関があるので利用には注意します(例えば、イオン銀行やクレディセゾンが扱うフラット35には団信の保険料は金利に含まれていない。団信加入時には金利に0.3%プラスとなる)。

④商品を販売する窓口がないため、銀行などが代理で窓口になっている

4つ目は、フラット35は商品を販売する窓口がないため、銀行などが代理で窓口になっているということです。住宅金融支援機構は全国に支店はあるものの、金融商品を販売するのは提携の金融機関です。

全国の地銀など多くの金融機関が提携しているため、全国的な取り扱いが可能となっています。

⑤経営者や自営業者の融資に強い

最後は、フラット35は経営者や自営業者の融資に強いことです。銀行で経営者や自営業者がローンを組む場合、個人の情報のほかに会社の経営状態や規模なども審査項目となります。つまり、事業としての継続性の有無も審査対象となるのです。この場合、会社の決算書3期分の提出が求められます。

一方で、フラット35は会社の経営状態を見ることはないので、決算書の提出はありません。よって、個人の収入や個人信用情報に問題がなければ、融資は銀行に比べて遥かに通りやすいという特徴があります。

住宅金融支援機構に関する素朴な疑問

ここでは、住宅金融支援機構に関する素朴な疑問とその回答について紹介していきます。

①申込する金融機関により審査基準は異なるのか?

申込する金融機関により提供される金利に多少差はありますが、審査はすべて住宅金融支援機構が行います。よって、審査基準が異なることはありません。

②事前審査から融資開始までにはどのくらいの期間が掛かるのか?

事前審査から融資開始までは、最短1ヶ月となります。また、融資を開始するには、物件の売買契約などの手続きを迅速に行う必要があるので、余裕を見て2~3ヶ月程度と考えておきましょう。

③住宅金融支援機構の店舗はどこにある?

住宅金融支援機構は、本店から支店まで全国に展開されています。北海道から九州まで店舗が設けられているため、問い合わせをしたい場合は近隣地域の住宅金融支援機構に連絡する形で問題ありません。

まとめ

住宅金融支援機構とは、主にフラット35などの金融商品を取り扱う独立行政法人です。政府が資本金を出資しているので、政府直轄の組織と言ってよいでしょう。

日本全国の国民が平等に利用できるように、全国の地銀などが窓口となり、商品の販売を行っています。金利は銀行より高いものの、全期間固定であることで支払いの安定性が高く、経営者や自営業者が借りやすくなっているのが特徴です。

また、個人向けの融資以外にも管理組合や賃貸のオーナー向けなど、幅広く商品を用意しています。今後不動産の購入などを検討するのであれば、住宅金融支援機構の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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