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家・住宅購入コラム

鉄筋コンクリートはRC造だけじゃない!他の構造の紹介とメリット・デメリットを解説

耐震・耐火性能に優れている鉄筋コンクリート造の建築物は現在、私たちの住んでいる街の至るところで見かけ、市街地の建設工事現場でもよく見かけることも多いでしょう。

オフィスビルやマンション、学校など広く使用されている鉄筋コンクリートで建築された建築物はごく普通にあり決してめずらしい建築物ではありません。

ではいったい鉄筋コンクリート造とはどのような構造となっているのでしょうか。

本記事では鉄筋コンクリートの構造やメリット・デメリットなどについて解説します。

鉄筋コンクリートの構造やメリット・デメリットなどについて理解を深めましょう。
 

鉄筋コンクリート造とは

鉄筋コンクリート造とは「Reinforced Concrete Construction」の頭文字をとって「RC造」ともよばれており、鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造となっています。その強度は鉄骨造や木造の比ではありません。

鉄筋とコンクリートにはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。以下にそれぞれ特徴を解説していきます。
 

鉄筋の特徴

鉄筋とは直径10mm〜50mm程度の鉄でできた棒であり、引張り力の弱いコンクリートとかけ合わせることによって引張り力を補っています。

下記に鉄筋の特徴についてまとめてみました。

 ●引張り力に対し強い

 ●圧縮力に弱く座屈を起こす

 ●錆びやすく強度低下の原因となる

 ●高熱にさらされると強度が低下する(500℃で強度半減し1,000℃で強度ゼロ)

さらに、鉄筋同士をつなぎ合わせる方法には針金で鉄筋同士を縛る「重ね継手」とネジや金物でジョイントする「機械式継手」があり、建設工事現場でよく見かけます。
 

コンクリートの特徴

コンクリートとは、水・セメント・細骨材(砂)・粗骨材(砂利)・混和材料を混ぜ合わせてつくられた物質です。コンクリートに似たものとしてモルタルがあります。コンクリートは上記材料を混ぜ合わせて製造されるのに対し、モルタルの材料は水・セメント・細骨材(砂)のみであり、粗骨材(砂利)は使用しません。

そして、コンクリートの特徴は以下のとおりです。

 ●圧縮力に強い

 ●引張り力に弱い

上記特徴から、鉄筋を組み合わせると互いのウィークポイントをカバーし合うことができます。

 

コンクリートの品質検査

少し脱線しますが、コンクリートはミキサー車で現場へ運ばれてきたらすぐに品質検査をします。品質検査内容は以下の3つです。

 ●スランプ試験

 ●空気量測定

 ●塩化物イオン濃度測定

スランプ試験にてコンクリートの流動性、空気量測定にてコンクリート内の空気量、そして塩化物イオン濃度測定にて塩化物濃度をチェックします。

いずれも基準の範囲内であるのを確認しはじめてコンクリート打設できるといった流れとなります。
 

コンクリートの打設

脱線ついでに、コンクリート打設作業についても少し解説します。先述したコンクリート品質検査をパスしたのち、早速打設作業へ入ります。打設したコンクリートは気泡が発生しないようにしなければなりません。

ここで気泡が発生してしまうと強度が落ちてしまい、高品質のコンクリートができず打設し直ししなければならない自体となります。

気泡対策として、打設しながらバイブレーターで振動させたり型枠をハンマーでまんべんなく叩いたりします。こうすることで品質のよいコンクリートになるでしょう。
 

鉄筋コンクリート造の構造形式

引張り力に弱いコンクリートを鉄筋がカバーし、圧縮力・錆び・熱に弱い鉄筋をコンクリートがカバーする特徴をもつのが鉄筋コンクリートです。

では鉄筋コンクリート造にはどのような構造形式があるのでしょうか。
 

ラーメン構造

柱や梁を剛に接合した骨組みによって荷重を負担する構造です。ラーメンとはドイツ語で「額縁」や「枠」と訳します。デザインの自由度が高く、設計や施工が容易といったメリットがある反面、柱や梁などの部材が大きくなったり部材コストが高いといったデメリットがあります。

主にマンションやオフィスビルなどに使用されている構造です。
 

壁式構造

板状の壁体が鉛直荷重を支える構造となっており、柱が不要となります。共同住宅など壁が多く設けられる建物によく採用されている構造です。

壁式構造は柱が不要のため、壁の出っ張りがない分広くすっきりした室内空間を設けることができるメリットがある反面、一定量の耐力壁を設ける必要があるため、大空間を設けることができないといったデメリットもあります。
 

シェル構造

シェルとは「貝殻」を意味する文字であり、シェル構造とは屋根や壁に曲面板を用いることで、柱や梁のない大屋根や大空間をつくることができる構造です。

曲面の性質上、荷重を1ヶ所に集中させることなく全体に分散することができるため、軽くて丈夫な構造となっています。大スパンにすることもできるため、部材の節約にもひと役買うことも可能といったメリットがある反面、曲げに弱い性質から、集中荷重が加われば比較的容易に崩壊してしまうデメリットもあります。
 

鉄筋コンクリート造のメリット・デメリット

鉄筋とコンクリート双方のウィークポイントをカバーし合っている鉄筋コンクリートのメリットとデメリットはいったいどのような点があるのでしょうか。以下にそれぞれ解説していきます。
 

鉄筋コンクリート造のメリット

鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造が鉄筋コンクリート造です。

以下に鉄筋コンクリートのメリットをまとめてみました。

 ●地震に強い

 ●遮音に優れており、騒音トラブルになりにくい

 ●火に強く、耐久性も申し分なし

 ●設計の自由度が高い

日本は古来より地震大国とよばれるほど地震の多い国です。圧縮力と引張り力を兼ね備えた鉄筋コンクリート造の建築物は、大きな地震がきても揺れを最小限に抑えることができます。

鉄筋コンクリート造の建築物は木造住宅にくらべ、遮音性が高く生活音が響きにくいという利点も備えており、マンションなどの共同住宅でよくある騒音トラブルが発生しにくいです。

耐久・耐火性能にも優れており、鉄筋コンクリート造の法定耐久年数は47年と鉄骨造(34年)や木造(22年)と比較しても違いは歴然です。定期的なメンテナンスや補修をすることで何十年でも快適に住み続けることも可能となっています。

さらに、鉄筋コンクリート造は燃えにくい材質であることから建築基準法上の「耐火建築物」とよばれています。建築基準法上の防火地域に指定されている場所では原則耐火建築物でなければ建築できません。

そして、鉄筋コンクリート造は大きな開口部をつくったり広い空間をつくったりすることができ、いずれも木造では実現がむずかしい設計をすることができます。設計の自由度が高いのも鉄筋コンクリート造ならではでしょう。
 

鉄筋コンクリート造のデメリット

転じて鉄筋コンクリート造のデメリットとはどのような点があるのでしょうか。先述したとおり、メリットの多い鉄筋コンクリート造でもデメリットはいくつか存在します。

鉄筋コンクリート造のデメリットは以下の点です。

 ●建築コストが高額

 ●工期が長い

 ●結露・カビが発生しやすく対策が必要

鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造にくらべ、重量がかかります。ということは、高重量に耐えられるくらいの地盤でなければなりません。地盤調査によって強固な地盤であると確認されればよいですが、軟弱地盤であれば地盤改良工事から始めなければなりません。

上記に伴い、工期が長くなります。たとえ地盤改良工事が不要であった場合でも、鉄筋コンクリート造は鉄筋を組んでから型枠を組み立てる作業も入り、そこからようやくコンクリートを流し込みます。コンクリートは固まるまで時間がかかり、それまで待たなければなりません。

鉄筋コンクリート造は気密性も有している分、結露やカビが発生しやすい性質も持っています。換気機能も備えておかなければたちまち結露やカビの温床となってしまうでしょう。

 

鉄骨鉄筋コンクリート造とは

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は「Steel Reinforced Concrete」の略称です。

文字通り鉄骨(S)と鉄筋コンクリート(RC)を組み合わせた構造となっています。

SRC造とは何なのかひとつずつ見ていきましょう。
 

鉄骨鉄筋コンクリート造とは?どんな構造になっている?

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)とは鉄骨を鉄筋で覆い、そこにコンクリートを流し込むことにより、鉄筋コンクリート以上の強度にすることができ、主に高層ビルやタワーマンションに利用されています。

ちなみに東京スカイツリーの構造も鉄骨鉄筋コンクリート造です。

法定耐用年数も約半世紀に相当する47年とされており、定期的なメンテナンスを施していれば法定耐用年数を経過したあとも快適に過ごすことも可能です。
 

鉄骨鉄筋コンクリート造のメリット

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は耐震性能が他のどの構造よりも増しており、鉄骨の軸組みにより揺れを分散し躯体の変形を防止できる点が大きなメリットです。

他にも以下のメリットが挙げられます。

 ●大スパンをとれるので、無柱の大空間をとることが可能

 ●鉄筋コンクリート造にくらべ、柱や梁を細くすることが可能

鉄筋コンクリートに鉄骨を入れているため、大スパンをとれるという鉄骨ならではのメリットを享受できます。

また、鉄筋コンクリート造よりも柱や梁を細くすることができるため、柱や梁を細くできた分、広く面積を確保することも可能です。
 

鉄骨鉄筋コンクリート造のデメリット

鉄骨鉄筋コンクリート造のデメリットは建築コストがかかったり工期が長くなるなど、先述した鉄筋コンクリート造のデメリットと重複する点もありますが、鉄骨鉄筋コンクリート造ならではのデメリットも存在します。

 ●鉄筋コンクリート造にくらべ自由な設計がむずかしい

 ●コストがかかるため、賃貸マンションでは家賃相場が高い

 ●一般住宅にはあまり採用されていない

鉄筋コンクリート造は自由な設計がしやすい点がメリットなのに対し、鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄骨が入っているため、このメリットは享受できません。より強度を高くする反面、設計上の制約がされてしまうのはやむを得ないでしょう。

また、賃貸マンションの場合は他の構造のマンションよりも家賃相場が高いことも忘れてはなりません。その分耐火・耐震性などは抜群に高いのでそこは大きなメリットとなるでしょう。

先述したとおり、鉄骨鉄筋コンクリート造はコストが高いので、一般住宅にはあまり採用されません。もっとも防火地域に指定されている土地に建築する場合は耐火建築物でなければ原則建築することはできませんが、この場合も鉄筋コンクリート造であれば事足りるのであえて鉄骨鉄筋コンクリート造にする必要はないでしょう。

そうでなくても一般住宅では基本的に木造や軽量鉄骨造で充分です。

 

まとめ

ここまで鉄筋コンクリートなどについて解説してきました。

RC造およびSRC造の共通点は以下のとおりです。

 ●耐震耐久・耐火性能が高い

 ●遮音性に優れており、生活音が漏れにくい

 ●建築コストが高い

 ●工期が長くなる

 ●高重量のため、地盤の強度の問題がある

などがあります。

鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の相違点として、自由な設計ができるか否かというところでしょう。鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄筋コンクリート造と違い、鉄骨が入っているため、設計面で大きな制約が入ってしまう点を注意しなければなりません。

鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の特徴についてご理解いただけたでしょうか。設計施工に関しては工事業者と綿密な打ち合わせを重ね、可能な限り想像通りの仕上がりになるようにしましょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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