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家・住宅購入コラム

坪単価とはなに?注文住宅を建てるときの平均と安くする方法

注文住宅の予算を建てたり見積もりを比較する際に、「坪単価」という単語に遭遇したことがある人も多いでしょう。

「坪単価」という単語が、建物1坪あたりの価格であることはなんとなくわかっていても、坪単価にどのような要素が含まれているのか、坪単価が高いとはどういうことなのかはあまり知られていません。

本記事では、注文住宅における坪単価の考え方と、坪単価を抑えて注文住宅を建てるためのポイントについて解説します。
 

1.坪単価の基礎知識

まずは、注文住宅における「坪単価」とはどういうことなのか、詳しく知っておきましょう。
 

1)坪単価とは

「坪単価」は、注文住宅を建てる際にかかる費用の目安として用いられるもので、1坪あたりの建築費用のことを指します。
 

2)坪単価の算出方法

坪単価を求める時には、敷地面積ではなく「建築面積=延床面積」をもとに算出します。

例えば、売り出し価格が2,400万円、1階と2階をあわせた延床面積が30坪の住宅の場合、坪単価は2,400万円÷30坪=80万円です。

逆に坪単価がわかれば、希望する延床面積の建築費用を算出することも可能です。
1坪あたり70万円で、1階部分と2階部分がともに16坪の家を建てるとします。
この場合は、延床面積が16坪+16坪=32坪になり、建築面積は32坪×70万円=2,240万円ということになります。
 

2.坪単価の比較の仕方と注意点

坪単価を比較する際に、どのような点に注意する必要があるかを見ていきましょう。
 

1)坪単価に含まれるものに注意

家の建築を依頼するハウスメーカーや工務店を選ぶ際に、単純に坪単価だけを比較してしまうと、思わぬ損をしてしまう可能性があります。

その理由は、「坪単価」の考え方には明確な決まりがないためです。

「坪単価」はハウスメーカーや工務店が独自に設定しており、なおかつ、坪単価に含まれる要素も少しずつ異なります。あるハウスメーカーでは照明器具やカーテンなど、生活するために最低限必要な設備を含んだ金額で、坪単価を算出している場合もあれば、ほかのハウスメーカーではそれらの器具は含まない状態で算出している場合もあるのです。

各ハウスメーカーの商品を比較するためには、募集広告やプラン詳細の資料に書かれている「本体価格」に何が含まれているかを確認します。
注文住宅を建てる際、建物本体を建築する費用のほかに、給排水工事・外構工事・地盤改良工事など、生活用水を引き込んだり地盤を安全な状態にするための、別途工事のための費用がかかることがあります。

一見坪単価だけでは安そうに見えるプランでも、別途工事費用を上乗せすると、ほかのハウスメーカーの商品よりも高くなってしまうケースも少なくありません。坪単価を数字だけで比較せず、広告に記載されている費用にはどこまで含まれているのか、別途工事にはいくらかかるのかを、トータルで考えておくことが大切です。
 

2)延床面積が小さいほど坪単価は上がる

坪単価の特徴として、家全体の面積が小さくなると坪単価は割高に、大きくなると坪単価は割安になるという部分が挙げられます。
その理由は、延床面積が変化しても、住宅に必要な基本的な設備は変わらないためです。

どの住宅でもキッチンや浴室、トイレや玄関スペースは必要です。特に水廻りは建築費用がかかる部分ではありますが、「1階と2階の両方にトイレをつけたい」「キッチンから離れたところに浴室を作りたい」といった特別な要望がない限りは、建築費用が大きく変動することはありません。

ただし、建物全体に使用する建材や、上記の水廻りの変更のようなオプションの有無によっては、延床面積の増減による坪単価の変動も考えられます。最終的には坪単価だけでなく、建物全体の建築費用総額を見て判断するようにしましょう。
 

3)延床面積と施工床面積の違いで坪単価が変わる

坪単価を算出する際に「延床面積」を用いて算出すると解説しましたが、ハウスメーカーによっては「施工床面積」で算出する場合もあるため注意が必要です。
 

(1)延床面積と施工床面積

「延床面積」は、建築基準法にもとづいて、各階の床面積を足して算出します。この各階の床面積には、ベランダ・玄関ポーチ・屋根裏・地下室などは含まれません。また、吹き抜け部分にも床がないことから、延床面積には含まれないとされています。

一方「施工床面積」は、延床面積のように法律的な決まりがありません。そのため、延床面積には含まれない、ベランダや玄関ポーチなどの部分も面積としてカウントされることがあり、延床面積よりも大きな数字になります。

 

(2)坪単価を施工床面積で計算する理由

通常延床面積で算出される坪単価ですが、一部のハウスメーカーが施工床面積で算出するのには、「坪単価を安く見せる」という目的があります。

注文住宅の広告においては、以前まで1棟あたりの価格を表記するのが一般的でしたが、近年では坪単価もあわせて表記するハウスメーカーが増えてきました。消費者からの問い合わせを増やすために、少しでも坪単価を安く見せようと、坪単価の計算の際に、より面積の大きい「施工床面積」を用いられるケースが多くなったのです。

こうした理由から、複数のハウスメーカーや住宅プランを比較する場合は、あくまでも「延床面積」で算出した坪単価を参考にすることが大切です。
 

4)家の形状によって坪単価が変動する

坪単価の変動には、家の形状も関係するということは押さえておきたいポイントです。

同じ面積の住宅であっても、1階と2階が同じ床面積の住宅と、2階部分が吹き抜けになっていて床面積に差がある住宅とでは、後者のほうが建築費用の総額も坪単価も高くなります。また、建物の形が正方形または長方形というシンプルな住宅よりも、凹凸のある変わった形の住宅のほうが費用が高くなります。

これは、家の形状が複雑なほど、多くの木材や外壁材、屋根材が必要になるためです。家全体に使用する建材の量が多くなり、結果的に建築費用・坪単価が高くなります。
 

3.坪単価の相場はハウスメーカーと工務店で違う

注文住宅を建てる場合、設計や建築を依頼する先には、ハウスメーカーと工務店という選択肢があります。どちらに依頼するかによって坪単価も異なるため、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
 

1)ハウスメーカー

ひとくちにハウスメーカーと言っても、坪単価を抑えて建てる「ローコスト注文住宅」が得意なハウスメーカーと、比較的グレードの高い設備や工法を採用しているハウスメーカーがあります。

ローコスト注文住宅は、ハウスメーカーがあらかじめ用意した複数プランのなかから、好みに近いものを選び、間取りを変更したりオプションをつけたりして、理想のマイホームを作っていくセミオーダー式の注文住宅です。ローコスト住宅の坪単価は30〜50万円程度。ただし、元が安いからといって、あれもこれもオプションを追加すると、フルオーダーの注文住宅よりも高くついてしまうケースもあるため注意しましょう。

高価格帯のハウスメーカーで注文住宅を建てる場合の坪単価は70万円以上で、大手のハウスメーカーで建てたり、首都圏に家を構えたりする場合は、坪単価90万円を超えることも珍しくありません。高くて手を出しにくい印象を抱くかもしれませんが、高価格帯の注文住宅は、断熱性や気密性の高さや、標準設備の性能のよさを売りとしており、快適性や耐久性の面で、質の高いマイホームを建てることが可能になります。

 

2)工務店

工務店に注文住宅を依頼すると、大手ハウスメーカーで建てる場合の7割程度の価格で同じ条件の家を建てられると言われており、坪単価50万円程度からが相場とされています。

工務店の特徴は、地域密着型の業者が多い点が挙げられます。工事を請け負えるエリアが限定されているぶん、その土地の風土や気候にあった間取りや設備・使用を提案してもらえる点や、ハウスメーカーで建てるよりも自由度が高い点が魅力です。

 

4.坪単価を抑えるポイント6選

快適な暮らしを手に入れるために、ゆったり過ごせる広いマイホームを作りたいと望む人にとっては、いかに坪単価を下げるかは重要なポイントです。
 

1)1階と2階の床面積を同じにする

上記で解説したとおり、複雑な間取りや凹凸の多い家は坪単価が高くなる傾向にあります。坪単価を抑えるためには、1階と2階の床面積をほぼ同じにした「総2階建て」の家にするのがおすすめ。基礎工事の工程や使用する建材を、少なく抑えられるというメリットがあります。
 

2)木造在来工法を選ぶ

「木造在来工法」は木造軸組工法とも呼ばれており、日本で古くから用いられている伝統的な工法です。コンクリートの基礎の上に、木材でできた柱と梁を建てることにより、建物全体を支える方法で、日本の住宅の約7割がこの工法で建築されています。

同じ木造住宅の工法として知られる「2×4(ツーバイフォー)工法」は、ハウスメーカーが主体となっているため、施工が安定している点がメリットとされていますが、そのぶんコストがかかる傾向にあります。それに対して木造在来工法は、古くから伝わる工法ということもあり、多くの工務店が手掛けており、ハウスメーカーで行う2×4工法よりもコストを抑えられます。
 

3)壁はクロス仕上げにする

室内の壁の仕上げ方には、クロス(壁紙)・塗り壁・板壁といった種類がありますが、コストを抑えたい場合はクロス仕上げを選ぶことをおすすめします。特に面積が広い壁部分のコストカットをするだけでも、坪単価を抑えることが可能になります。また、壁紙はあとから自分で張り替えることもできるため、最初は安価なクロスで家を建て、好みの壁紙を購入してDIYをする人も少なくありません。
一方で、漆喰や珪藻土などの自然素材を使用した塗り壁は、クロスと比較して費用はかかるものの、見た目が美しいだけでなく、空気清浄効果も期待できるという魅力があります。玄関やリビングといった目立つ部分にはこだわりの素材を使用し、水廻りやウォークインクローゼットなどの目立たない部分にはクロスを使うといった工夫をするだけでも、コストダウンにつながります。
 

4)窓の数やサイズを見直す

家のなかを明るくしたい・風通しのいい家にしたいからといって、むやみに大きな窓を設置したり、窓の数を増やしたりすることはおすすめしません。坪単価が上がってしまうだけでなく、冷暖房効率が悪くなることで光熱費がかさんだり、入居後のメンテナンス・掃除の手間が増えたりする要因になります。

本当に窓が必要な箇所はどこかを建築士と話し合いながら、窓の大きさや数を決めるようにしましょう。
 

5)水廻りを1ヶ所にまとめる

注文住宅の設備のうち、給排水設備工事は特に費用がかかる部分でもあります。キッチンや浴室、トイレはできるかぎり1ヵ所にまとめると、給排水設備工事を最小限に抑えられるため、コストダウンにつながります。

2階建ての住宅の場合、トイレの数を1階と2階の2ヵ所ではなく、1階のみにするだけでも費用を抑えられるためおすすめです。
 

6)複数のハウスメーカーに見積もりを依頼する

注文住宅を建てるうえで特に重要なのが、複数のハウスメーカーに見積もりを依頼し、慎重に比較検討することです。

理想のマイホームが完成するかは、ハウスメーカーが取り扱っている建材や設備、手掛ける工法にもよりますが、同時に営業担当者の提案力も大きなカギになります。
自分の営業ノルマや会社の利益ばかりを優先し、顧客に寄り添った提案ができない営業担当者の場合、予算内で希望のマイホームを建てられないだけでなく、家ができたあとの保証やアフターメンテナンスのサポートも、十分に受けられない可能性があります。
逆に顧客の希望に真摯に向き合える営業担当者であれば、ほかのハウスメーカーでは叶えられなかった間取りでも、坪単価を抑えながら実現できる可能性があるのです。

それを比較するために有効なのが相見積もりです。

絶対に譲れない間取りや設備、仕様をまとめておき、すべてのハウスメーカーに同じ内容で見積もりを出してもらって比較しましょう。

このときに大切なのは、費用が1番安いハウスメーカーに安易に飛びつかないことです。見積もりのなかにどこまでの費用が含まれているのかを必ず確認し、不明点は必ず担当者に質問するようにしましょう。

ほかのハウスメーカーと比較して費用がかかる場合でも、その理由を丁寧に説明してくれたり、坪単価を抑えるためのアドバイスをしてくれたりする担当者であれば、納得のいく住まいづくりができる可能性が高いと言えます。

 

坪単価の意味を知って賢く注文住宅を建てよう

注文住宅における坪単価は、家の形状や面積、設備や仕様する素材によっても大きく変動します。

ハウスメーカーのカタログや広告に掲載されている坪単価が、一見お得そうに見える場合でも、坪単価に含まれる工事内容や計算方法によっては、想像以上に費用がかかってしまう可能性もあり、1つ1つ慎重に比較検討することが重要です。

坪単価を抑えつつ、理想も詰め込んだマイホームを建てるためには、坪単価のうちわけをしっかりと説明してくれる、信頼のできる不動産会社に依頼する必要があります。

住宅展示場やモデルルームを見学し、好みのデザインや間取りの家が見つかったら、必ず複数の業者に見積もりを依頼し、あとから追加でかかる費用はないか、安さに裏にデメリットはないかなど、総合的に判断するようにしましょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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