住宅ローンのシミュレーションは自分でできる!借入金額と金利の決め方の重要ポイントとは?
理想のマイホームを手に入れるために、返済能力に見合わない条件でローンを組んでしまうと、月々の返済に苦労し続けることになるばかりか、最悪の場合にはマイホームを手放さなくてはならなくなってしまう可能性すらあるのです。
そうした事態にならないために、自分がいくらであれば問題なく返済できるのか、いくらまでなら借りられるのかを、事前にシミュレーションしておくことが肝心です。
住宅ローンのシミュレーションは、最終的にはライフプランの作成とあわせて、ファイナンシャルプランナーに依頼するのが最も確実ですが、年収や金利などをもとに自分で概算を出す方法もあります。
本記事では住宅ローンのシミュレーションを行う方法と、住宅ローンの借入金額を考えるうえで注意したいポイントについて解説します。
1.住宅ローン借入金額のシミュレーション方法
住宅ローンの借入金額や返済金額は、多くの場合で各金融機関が提供しているシミュレーションサイトを使用して計算しますが、大まかな金額であれば自分で計算することも可能です。
1)住宅ローンの借入可能額を決定する要素
まず、住宅ローンの借入金額を計算するにあたり、金融機関がどのように融資金額を決定するかを知っておく必要があります。
住宅ローンの融資条件や借入可能額は、金融機関ごとに少しずつ異なりますが、主に下記5つのポイントが審査時に見られるとされています。
(1)返済負担率
「返済負担率」とは、ローンの返済額が年収に占める割合です。収入に見合わない多額の融資をしてしまうと、将来的に返済不能に陥るリスクがあるため、各金融機関では、1年あたりの年収に対する返済負担率の上限を決めておき、完済できる程度のローンを組むための指標としています。
(2)融資率
「融資率」とは、住宅購入時の頭金を除き、住宅ローンで借り入れる金額の割合を示すものです。融資率によって適用される金利も変化し、比率が高くなると金利も上昇するという仕組みです。
(3)借入限度額
「借入限度額」とは個人の収入などの申込条件に関わらず、1件の住宅ローンに対して融資できる限度額を、各金融機関が定めているものです。
(4)収入の安定性
住宅ローンは返済期間が長いということもあり、継続して住宅ローンを返済してもらうためにも、申込者の収入の安定性については慎重に審査しなくてはなりません。実際の審査では、申込者の収入や職業、勤続年数などをもとに判断します。
(5)担保
万が一住宅ローンの支払いができなくなった場合のために、金融機関は申込者が購入する不動産を担保にして融資を行います。いざ住宅ローンを返済するときに、どれだけ価値のあるものと判断される物件かによって、受けられる融資金額も異なるのです。
2)住宅ローン借入可能額のシミュレーション方法
住宅ローンの借入額は、下記3つの視点から計算することが可能です。
(1)借入金額から月々の返済額を計算
(2)年収から借入可能額を計算
(3)毎月の返済額から借入可能額を計算
それぞれの計算方法について、下記で詳しく解説します。
(1)借入金額から月々の返済額を計算する方法
この方法が活用できるのは、購入したい金額や、借入したい金額が決まっている場合です。欲しい物件を購入したあと、無理なく返済できるかを判断する基準になります。
月々の返済額は、金融機関ごとに定めている住宅ローン金利を加味する必要があり、計算することは容易ではありません。一般の人が計算する場合は、Excelの関数を使うと便利です。
Excelを開いたら、「PMT関数」を選択します。開いたウィンドウに下記に沿って入力します。
入力する箇所 | 入力する内容 |
利率 | 金利(年利から月利に直す) |
期間 | 返済期間(年を月に直す) |
現在価値 | 借入金額 |
入力が完了すると、月々の返済額が計算されます。
しかし、Excelに慣れていない人にとっては面倒な作業なため、より簡単なほかの計算方法がおすすめです。
(2)年収から借入可能額を計算する方法
まだ購入する物件の価格や、借入金額の検討がついていない場合は、現在の年収から借入可能額を計算する方法を試してみましょう。
すでに解説したとおり、住宅ローンの審査では、申込者の収入をもとにして借入金額を決定するため、自分が借り入れできる金額にあわせて、購入する物件を決めるという流れになります。
年収から借入可能額を計算する場合、年収・返済負担率・金利の3つの情報を使用します。返済負担率は多くの金融機関が上限として定めている30%、金利は利用しようとしている金融機関の住宅ローン商品の利率を使用するといいでしょう。
なお、返済負担率に関しては、一般的には20〜25%に設定するのが理想と言われています。
借入可能額の計算は、下記の計算式にそって行います。
年収×返済負担率=年間返済額
年間返済額÷12ヶ月=月々の返済額 月々の返済額÷100万円あたりの月々の返済額×100万円=借入可能額 |
なお、100万円あたりの月々の返済額を自分で計算するのは難しいため、下記の早見表を参考にしてください。
20年 | 25年 | 30年 | 35年 | |
0.8% | 4,510円 | 3,678円 | 3,125円 | 2,730円 |
0.9% | 4,554円 | 3,723円 | 3,170円 | 2,776円 |
1.0% | 4,598円 | 3,768円 | 3,216円 | 2,822円 |
1.1% | 4,643円 | 3,814円 | 3,262円 | 2,869円 |
※元利均等返済、ローン返済無し
(参考:住まいサーフィンhttps://www.sumai-surfin.com/columns/mansion-knowledge/mortgage-simulation)
上記の早見表の金額はあくまでも概算で、実際に金融機関で借り入れを行う際は金額が異なる場合があります。詳細な金額でシミュレーションを行いたい場合は、金融機関に相談に行くか、ファイナンシャルプランナーに依頼することをおすすめします。
(3)毎月の返済額から借入可能額を計算する方法
最後に紹介するのは、毎月の返済額から借入可能額を計算する方法です。
(2)の計算方法は、住宅ローン審査に通ることを最優先としていますが、この方法では現在の収支バランスを自分で整理するところからスタートします。
まずは、家族で話し合い、毎月返済できる金額を算出しましょう。
注目すべきなのは、現在の家賃や生活費の収支、将来的に発生する費用や貯蓄の予定などです。
【見直したいポイント】
・現在の家賃 ・賃貸から戸建てに引っ越した場合の光熱費の差額 ・現在の月々の収支 ・加入している保険の内容やサブスクリプションサービス ・将来の大きな支出の予定(教育費・家の修繕費・車の購入費用など) ・将来の大きな支出のために貯蓄したい金額 |
住宅ローンの返済金額を決める際に、「現在支払っている家賃と同じ金額であれば大丈夫」と考える人も少なくありません。しかし、不動産を購入すると固定資産税や都市計画税といった税金がかかるほか、建物の修繕・補修にかかる費用も準備しておく必要があります。
また、万が一収入が落ち込んだり途絶えてしまった時の、生活防衛費なども確保しておくのも忘れてはいけません。
2.住宅ローンシミュレーションに大きくかかわる金利とは?
ここまで住宅ローンの借入金額をシミュレーションしてきた人のなかには、適用される金利によって、最終的な返済金額に大きな違いが出てくる点が気になっている人もいるかもしれません。
事実、住宅ローンを組む際には、金融機関・借入金額・返済期間のほかに、どの金利タイプにするかも決める必要があります。
住宅ローンの金利には「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットと、どのような人に向いているかを知っておきましょう。
1)金利とは
「金利」とは、住宅ローンで借りた金額に対する利息の割合のことです。
住宅ローンを借りた場合に支払う利息の金額は、「ローン残高×金利」という計算で求めます。
2)固定金利と変動金利の違いとメリット・デメリット
固定金利と変動金利の違いは、名前の通り、返済期間中の金利の変動があるかないかという部分です。
(1)固定金利
固定金利の場合は、融資実行から完済まで利率が変わりません。
利率が変わらないということは、返済期間中の返済金額の増減もないということ。融資が実行された時点で返済する金額の総額がわかるため、返済計画を立てやすい点がメリットです。
ただし、後に解説する変動金利と比較すると、金利が高めに設定されているという点はデメリット。低金利状態が長く続くとお得感を感じにくくなってしまうため、状況を見てローンの借り換えも視野に入れる必要が出てきます。
(2)変動金利
変動金利は、返済期間中に利率が変動する金利タイプです。
住宅ローン金利が低ければ低いほど、返済金額は少なくなるため、家計への負担が軽くなります。特に借入時の金利は、固定金利よりも低い利率に設定されていることがほとんどのため、低金利の状態が続けば、返済金額の総額も少なく済むというメリットがあります。
しかし一方で、金利は上昇する可能性もあり、その場合は返済金額も増えることになります。返済額に占める利息の割合が多くなり、返済負担が多くなってしまうリスクもあります。
2)固定金利が適しているパターン
固定金利は毎月の返済額が変わらないという点が、大きなメリットであると解説しました。
そのため、子供の教育資金や自動車の購入費など、まとまった支出を予定している家庭や、毎月の支払額が一定である方が、家計のやりくりがしやすいという家庭の場合は、固定金利を選択することをおすすめします。
固定金利タイプの住宅ローンのなかには、最初の数年間を固定金利、その後変動金利に切り替えられる住宅ローン商品もあります。将来的に収入が増える予定があったり、大きな支出が落ち着く見込みがある場合は、期間選択型の固定金利も検討してみましょう。
3)変動金利が適しているパターン
変動金利の住宅ローンが向いているのは、返済期間を短く設定する場合です。
上記で解説した通り、変動金利は固定金利と比較して、借入時の利率が低く設定されています。急な金利の上昇がなければ、固定金利よりも少ない負担でローンを返済できるため、キリ上昇のリスクが少ないうちに、ローンを返済できる見込みがあるようであれば検討してみましょう。
3.住宅ローンで失敗しないためのシミュレーションのコツ
何千万円というまとまった資金が手元になくても、すぐに夢のマイホームを建てられることが最大の魅力の住宅ローン。しかし一方で、理想の住まいを手に入れたいがために、無理な返済計画を建ててしまい、返済不能に陥るリスクがあるのもまた事実です。
では、住宅ローンで失敗しないためには、どのような点に注意してシミュレーションを行えばいいのでしょうか。
1)毎月の返済額をいくらにするか
住宅の購入を検討するタイミングは、多くの場合で生活に大きな変化があったときです。
結婚や出産により家族が増えたタイミングや、転職による移住のタイミングなど、ライフスタイルが大きく変化したり、「ここでずっと暮らしたい」と考えるようになることで、マイホームの購入に踏み出す人は多くいます。
しかし、ライフスタイルが大きく変化するということは、同時に支出が増えたり、まとまった出費が発生する可能性が高くなるということも意味しています。そこでさらに住宅を購入するとなると、税金や建物の管理・修繕費などのランニングコストが発生するようになります。
つまり、マイホームを購入する時点で家計に余裕があるからという理由で、背伸びした住宅ローンを組んでしまうと、月々の返済に家計が圧迫される可能性があるということです。
住宅ローンの借入金額を決める際は、年収ではなく「手取り収入」と返済負担率をもとに返済額をシミュレーションし、そこから借入金額や購入する物件の価格を決めることが大切です。
2)返済期間を慎重に考える
住宅ローンのシミュレーションを行う際、収入や購入する不動産の価格だけでなく、何年かけて返済するかという「返済期間」も考える必要があります。
住宅ローンは借入金額が大きいぶん、返済期間を長くすることで、毎月の返済金額を抑えようとするのは自然な考えでしょう。ところが、返済期間が長くなると、借入金額に上乗せされる利息も増え、トータルで返済すべき金額が大きくなってしまうというのが住宅ローンの注意すべきポイントです。
しかしだからといって、利息を少なくしたいがために、無理して短い返済期間で借り入れてしまうと、月々の支払が増えてしまい、家計を圧迫しかねません。
つまり、住宅ローンのシミュレーションを行う際には、月々の返済額に負担がなく、かつ返済総額も膨れすぎない範囲で、返済期間を慎重に検討することが重要です。
住宅ローンのシミュレーションはファイナンシャルプランナーに依頼するのがおすすめ
住宅ローンのシミュレーションは、年収や購入したい物件の価格、利用しようとしている住宅ローンの金利などをもとにして、自分で計算することも不可能ではありません。
しかし、変動金利で住宅ローンを契約する予定のある人や、これから大きなライフイベントが控えている人にとっては、余裕を持って完済できる住宅ローンの借入金額や返済金額を、自分で算出することは容易ではありません。
住宅ローンのシミュレーションには、インターネット上で金融機関などが公開しているシミュレーションサイトを活用することもできますが、マイホームの購入に向けて具体的に動き出す際には、お金のプロであるファイナンシャルプランナーの力を借りることをおすすめします。
ファイナンシャルプランナーに相談することで、今現在の収入や収支状況だけでなく、大きな出費の予定や老後資金の確保などといった、ライフプランを考慮した広い視野でのアドバイスを受けられます。
近年ではファイナンシャルプランナーが在籍する不動産会社もあるため、ライフプランを考えながら住宅の購入も検討したいという場合は、活用してみるといいでしょう。
ブログ:
皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
- 所属会社:
- 株式会社スタイルシステム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.style-system.net
- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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