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家・住宅購入コラム

建売住宅は寿命が短い?長く暮らすためのポイントと選び方

マイホームの購入を考えている人のなかには、「建売住宅は注文住宅よりも寿命が短いから避けたほうがいい」という話を、耳にしたことがある人もいるかもしれません。
 
しかし実際は、建売住宅だからといって寿命が短いということはなく、正しい選び方を知り、入居後もしっかりとメンテナンスを行えば、何年も安心して暮らすことが可能です。
 
本記事では、建売住宅を購入する際にどのような点に注意すべきか、長く安心して暮らすためにはどうすればいいか、詳しく解説していきます。
 

1.建売住宅と注文住宅の寿命は変わらない

 

 
冒頭でも触れたとおり、建売住宅と注文住宅との間には寿命の差はありません。その理由は、現在の日本では住宅の建設に関して厳しい法律が敷かれており、消費者の安全性を守る仕組みができているためです。
 

1)建売住宅の寿命に関する2つの法律

 
まずは、建売住宅を建てる際に適用される、「建築基準法」と「住宅品確法」という2つの法律について解説します。
 

(1)建築基準法

建物の種類にかかわらず適用される「建築基準法」は、耐震性をはじめとした建物の性能や、建築・施工前後に行う申請・検査など、建物を建築するにあたって順守すべきルールを定めた法律です。
 
住宅の建築工事が完了すると、「完了検査」という検査が実施され、建築基準法に適合していると判断された住宅に対して「検査済証」が発行されます。建売住宅の場合も、検査確認証が発行されていることを確認できれば、耐久性や耐震性といった、住宅として備えておくべき一定の品質は備わっていると言えます。
 

(2)住宅品確法

「住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」は、消費者が良質な住宅を安心して購入できるようにすることを目的とし、「瑕疵担保責任」・「住宅性能表示制度」・「紛争処理体制の整備」の3本柱で構成されています。
 

瑕疵担保責任制度 引き渡し後の新築住宅に関して、住宅事業者や売主が買主に対して10年間の責任を負うことを定めた制度。住宅の耐久性にかかわる基礎構造部分が対象。
住宅性能表示制度 耐久性や省エネルギー性、遮音性といった住宅の性能の評価方法や表示方法について、統一のルールを設け、第三者機関が評価をおこなうことで、消費者による住宅性能の相互比較を可能にしている制度。
住宅紛争処理制度 住宅性能評価書が交付された住宅に関して紛争が発生した場合に、国土交通省指定の住宅紛争処理機関(住宅紛争審査会)による、裁判外のあっせんや調停、仲裁を受けられる制度。
申請手数料1万円で、専門家に紛争処理を行ってもらえる。

 
(参考:国土交通省『住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要』
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001513072.pdf
国土交通省 SUMAI ANSIN『住宅紛争処理制度』https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/consumer/residential_dispute.html
 
住宅品確法の整備により、消費者は建売住宅の性能を自らの目で比較できるだけでなく、引き渡し後に見つかった瑕疵への保証が受けられます。さらに、万が一紛争に発展した場合には、最小限の負担で専門家の手を借りられる体制が整っています。
 

2)建売住宅の寿命が短いと言われるようになった原因

 
消費者が安心して住宅を取得できるよう、さまざまな法律や規制が敷かれている住宅業界ですが、そもそもなぜ「建売住宅は寿命が短い」と言われるようになったのでしょうか。
 
原因は諸説ありますが、上記で解説した完了検査が義務とされていなかった2003年より以前の住宅は、建築確認(建築予定の建物や地盤が法律や条例に適合しているか確認すること)の後に、まったく異なる内容の住宅が建てられる「違法建築」が多く確認されたことが、要因のひとつとされています。
 
住宅の耐久性や寿命に問題のある違法建築が、特に建売住宅に多く見受けられたこともあり、「建売住宅は寿命が短い」と言われるようになったと考えられているのです。
 
現在においては、工事完了後の完了検査が義務とされているため、建築確認と異なる内容で建てられた住宅を購入してしまうリスクはありません。
 

3)住宅事業者も供託や保険加入の義務がある

 
住宅品確法のほかにも、引き渡し後の住宅に欠陥が見つかったときのために整備されているのが「住宅瑕疵担保履行法」と呼ばれる法律です。
 
建売住宅を購入して入居したのちに、シロアリや雨漏りといった、建物の耐久性をおびやかす瑕疵(欠陥)が見つかった場合、買主は住宅事業者に対して、瑕疵部分の補修・修繕を求めることが可能です。しかし、瑕疵が見つかった時点で住宅事業者が倒産していたり、十分な資力を要していなかったりした場合に、建物の瑕疵部分が放置されるという危険な状況になりかねません。
 
「住宅瑕疵担保履行法」では、住宅を供給する事業者に対して、法務局へ保証金を供託するか、国土交通省が指定する保険(住宅瑕疵担保責任保険)に加入することが義務とされています。つまり、住宅に瑕疵が見つかった際に補修・修繕するための資力を、あらかじめ確保しておかなくてはならないと定められています。
 
住宅事業者が供託または保険へ加入していることで、住宅取得者は確実に住宅の補修・修復を受けられるのです。そして、万が一事業者が適切な対応を行わなかった場合は、住宅取得者自らが供託所に保証金の還付請求を行ったり、保険法人へ保険金の支払いを求めたりすることで、自宅の補修・修繕にかかる費用を受け取れる仕組みになっています。
 

4)建売住宅にも注文住宅にも同じ法律が適用される

 
住宅の建築時・売買契約時に適用される法律は、上記で解説したもの以外にも多く存在します。そしてそれらの法律は、建売住宅か注文住宅かにかかわらず適用されます。
 
つまり、建売住宅の寿命が注文住宅よりも短いということはないのです。
 

2.建売住宅の寿命が決まるポイント

 

 
建売住宅も注文住宅と同様、一定の法的基準に則って設計・建築・契約締結まで行われますが、販売されている建売住宅がすべて同じ規格で建てられており、すべて同じ年数使用できるというわけではありません。
 
建売住宅の寿命を左右するのは、購入時にいかに品質のいい建売住宅を選ぶか、そして入居後のメンテナンスも欠かせません。
 
以下で詳しく解説します。
 

1)品質のいい建売住宅を選ぶ

 
品質のいい建売住宅を見極めるポイントを紹介します。
 

(1)基礎構造部の仕様

建売住宅の寿命は、建物の根幹である基礎構造部がいかに頑丈に作られているかにより、大きく左右されます。
 
基礎構造部のなかでも特に着目したいのが、基礎・土台・柱・梁といった、建物全体の重さを支える部分。これらが法律上で定められている最低限の品質なのか、より質の高い仕様になっているかによって、建物全体の耐久性や耐震性が変わってきます。
 
耐久性や耐震性が高ければ、それだけ寿命の長い建売住宅ということです。
 

(2)施工品質

基礎構造部がしっかり作られていても、そのほかの部分に手抜き工事があったり、耐久性の低い建材が使われていたりすれば、寿命の長い建売住宅とは言えません。
 
施工品質の良し悪しを判断するには、後に解説する「住宅性能評価書」を確認したり、「ホームインスペクション」と呼ばれる住宅診断を依頼するという方法があります。
 

2)入居後のメンテナンス

 
入居後のメンテナンスを怠ってしまうと、どんなに品質のいい建売住宅を購入しても寿命は短くなってしまいます。
 
建売住宅で特に重要なメンテナンスは下記の4つです。
 
(1)外壁・屋根の塗装
(2)雨漏り箇所の修繕
(3)設備機器の取り換え
(4)防蟻処理
 
具体的な内容や頻度は、下記で詳しく解説します。
 

(1)外壁・屋根の塗装

外壁や屋根は、直射日光や雨風によって劣化しやすい部分のため、10年ごとを目安に塗り替えを行うようにしましょう。
 
塗装がはがれたりひび割れたりしたまま放置しておくと、その間から雨漏りが発生するリスクがあります。さらに雨漏りを放っておくと、木材部分が腐食してしまい、最悪の場合建物が倒壊してしまう恐れもあります。
 
定期的な塗り替えを行うことで、建物の耐久性を維持できるだけでなく、外観も美しい状態を保てます。
 

(2)雨漏り箇所の修繕

意外かもしれませんが、戸建て住宅の4%は、築30年ほど経過すると雨漏りが発生すると言われています。
 
上記で解説したとおり、雨漏りは建物の耐久性を著しく損なう原因になります。木材が腐敗することで建物の傾きや、ドアの不具合などが起こり、最終的には建物倒壊の危険性までもあります。
 
雨漏りが発生したタイミングですぐに修繕することも大切ですが、先に解説した「住宅品確法」により品質が保証される「引き渡しから10年間」が経過する前に、雨漏りが発生している部分がないか見ておくことも重要です。
 

(3)設備機器の取り替え

故障せずに使用できている場合でも、給排水管などの設備機器の更新・交換は、使用開始から10〜15年を目安に行うようにしましょう。
 
設備機器の交換にはまとまった費用が必要になるため、故障するまで放置する人も少なくありませんが、いざ故障すると、住宅のほかの部分に不具合や支障をきたす可能性もあります。建売住宅の寿命を伸ばすためには、期間を決めて点検・設備の交換を行うことが大切です。
 

(4)防蟻処理

建売住宅で安心して暮らすためには、定期的に防蟻処理を行い、シロアリの被害を防ぐ必要があります。
 
シロアリは建売住宅の基礎部分にダメージを与え、住宅の耐久性や耐震性をおびやかす存在です。シロアリが木材を食い荒らすと、木材がスカスカな状態になり、本来持ち合わせている強度を発揮できなくなるのです。湿気が多い水回りに多く発生しますが、建物のある地域や風通しによっては、柱や壁の内側も湿度が高い状態のこともあり、シロアリが発生している可能性も否定できません。
 
防蟻処理は5年ごとを目安に実施することをおすすめします。
 

3)住宅性能評価書の確認

 
「住宅性能評価書」は、第三者評価機関によって住宅の性能を評価し、その結果を記した書類です。建築の過程を見られない建売住宅を選ぶにあたっては、住宅性能評価書は「どのように施工されたのか」を確認できる重要な情報源です。
 
記載されている内容は
・構造の安定性
・火災が起きた際でも安全に避難できる構造か
・配管は清掃、補修しやすい造りになっているか
・省エネ対策はされているか
など10項目。
 
評価項目や表示方法は統一されているため、複数の建売住宅を比較する際に役立ちます。
 

4)立会い検査をしっかり行う

 
建売住宅を購入したら、引き渡し前に実施される立会検査をしっかり行うようにしましょう。
 
引き渡し前の立会検査では、大きく分けて下記の範囲を確認します。
 
・外壁や基礎の状態
・床、壁、天井の状態
・床、壁の傾斜確認
・建具の動作確認
・設備の動作確認
・床下、小屋裏の点検口からの内部確認
 
注文住宅とは異なり、建売住宅は売主が建築の過程での立会い検査をできていないことがほとんどです。そのため、住み始めてからは見ることのない床下や小屋裏は、内部の奥まで検査してもらうことをおすすめします。
 
立会い検査により不具合が見つかった場合は、補修工事をしてもらうことになります。少しでも建付けが悪い、壁紙の状態が気になる、傾きがあるような気がする、といった違和感があるようであれば、我慢せずに担当者に相談するようにしましょう。
 

寿命の長い建売住宅の購入は実績豊富な不動産会社に依頼しよう

 

 
建売住宅の寿命を延ばすためのポイントや、長く住める建売住宅を選ぶ際の着目点を解説しましたが、建売住宅を初めて購入する人にとって、すべてのチェック項目を網羅することは難しいと言えます。また、今回挙げたポイント以外にも、建売住宅の購入には、多くの確認事項や手続きがあるため、プロの力を借りて進めることが大切です。
 
長く暮らせる建売住宅を購入したいと思ったら、まずは建売住宅の販売実績が豊富な不動産会社を探してみましょう。経験豊富な担当者であれば、複数ある建売住宅の中から、依頼主の希望やライフスタイル、予算などにあった物件を提案してもらえます。
 
建売住宅の寿命を最大限引き出し、長く快適に暮らすための第一歩が不動産会社探しです。ぜひさまざまな不動産会社に相談・比較して、信頼できる業者を見つけてください。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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