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家・住宅購入コラム

20年住むと持ち家になる?時効取得とは?概要を徹底解説

近年、賃貸のままでいいのか、持ち家を購入すべきか、悩まれている方が多くなってきています。現在住んでいる賃貸に長く住み続け、持ち家にしたいと思う人も多いのではないでしょうか。

民法で定められている条件に、取得時効に関する制度があることをご存じですか。一定の期間、一定の要件をクリアすることによって、取得できます。

時効の権利を得るためには、さまざまな条件をクリアし、証明しなければなりません。必要な資料や判断材料は、素人だと分かりにくいことが多くあります。まれに、土地や建物を放置し続けた結果、トラブルを引き起こす恐れもあるため、注意が必要です。時効取得に関する要件の意味をしっかり理解しましょう。

時効に関するトラブルの懸念がある場合には、一度弁護士に相談してみるとアドバイスやコツを教ええてもらえるので、スムーズにことが進みます。

20年住むと持ち家になるってどういうこと?

民法162条と民法163条で定められている条件を、法的観点から所有権を自分のものにできる時効制度があります。

民法が定める「時効取得」の要件さえ満たせば、「自分の家」として法的に認められることがあるのです。

東京都心部では、高級マンションがいくつもあり、家賃の相場が平均100万円〜200万円程度が多いです。仮に家賃が100万円で賃貸のまま住み続けた場合、20年、30年以上経過すると賃貸で住むより持ち家として住み始めた方が、出費が抑えられる可能性もあります。

持ち家の方が資産として残るので、制度を受けられるか弁護士に相談してみましょう。

時効取得とは?

時効取得とは、取得時効によって権利を取得することを言います。基準となる一定期間、継続して要件を満たしている場合に権利を取得することができる制度です。

時効制度は、以下のような目的で成り立った経緯があります。

・時間が経つことでその事件が社会全体に与える影響が徐々に小さくなるため
・事件(事実)が起こってから時間が経つと、証拠を集めるのが難しくなるため

所有者側の視点に立つと理不尽とも感じてしまう制度ではありますが、時効取得には上記のような目的があることを理解しましょう。

時効取得の概要

時効取得には、要件があります。

・一定期間が20年の要件
・一定期間が10年の要件

時効は、20年か10年の期間の差で、要件が変わってきます。

ご紹介するのは、占拠開始時から時効取得までの経過や要件を徹底解説します。

「ただ20年住めば所有権を主張できる」と考えている場合は、要件を満たしているか確認しましょう。

一定期間が20年の要件

一定期間が20年の場合、以下のような要件があります。

・自分のものにしようとする意思がある
・脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がなく占拠している
・占拠が20年間継続している

一定期間20年の時効取得をする場合、自分の土地ではなく第三者の土地と認識していても、所有権を取得できます。本ケースの場合は20年間占拠するということが要件です。

一定期間が10年の要件

一定期間が10年の場合、以下のような要件があります。

・自分のものにしようとする意思をもっている
・脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がなく占拠している
・占拠開始の時に「自分のもの」と信じ、かつ信じることに失態がない
・占拠が10年間継続している

一定期間10年の時効取得をする場合「自分のものだと信じること」を要件としています。20年間待たなくても、10年という短期間で時効取得が成立するわけです。

つまり、他人の家だと知っている場合(法律用語で善意)だと20年、知らない場合(法律用語で悪意)は10年で、自分の持ち家にできるのです。

時効取得で関連して理解するべきこと

時効取得に向けて理解すべき、細かい条件が4つあります。それぞれの条件を満たし、証明して成立します。

4つの条件とは、以下のことです。

・所有の意思
・平穏かつ公然
・善意、かつ過失がない
・継続して占有する

時効取得の概要でもあるように「20年の要件なのか」「10年の要件なのか」で、細かい条件も変わってきます。

要件について、それぞれ解説します。

所有の意思とは

所有の意思とは、自分のものにしようとする意思をもっていることを言います。

例えば、人から物を借りるとき、借りたものは貸した人の物であると認識している場合「自分のものにしよう」という意思はないと判断します。

逆に、借りたものを自分の物にしようとした場合「自分のものにしよう」という意思があると判断されます。このように所有した認識がないことを他主占拠と言い、所有していると認識していることを自主占拠と言います。

平穏かつ公然とは

平穏かつ公然とは、違法な手段で物を奪ったり、隠し事がないことを言います。

例えば、人の物を脅迫や暴力で奪ったり、隠し事をしていたりすることは、所有権を取得することはできません。

自分のものにしようという意思と脅迫や暴力で奪っていない、隠し事をしていないことをクリアできて、さらに20年間住居を継続して住み続けていれば、自分の持ち家にできてしまうのです。

善意、かつ過失がないとは

善意、かつ過失がないとは、自分が占拠するものを所有物と信じ、かつそう信じることについて失態がないことを言います。

例えば、バッグを購入した際、バッグの所有者が売人とは知らず、かつ購入した時も売人が所有者ではないと断定できるものがなかった場合は、「善意、かつ過失がない」と判断されます。

逆に、バッグを購入したとき、売人がバッグの所有者ではない、売人とは異なるイニシャルや名前が刻印されている等、何かしらの状況で売人の物ではないと分かる場合は「善意、かつ過失がない」と判断されません。

また、動産について、民法第192条に「取引を行うことによって、脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がないことと動産の占拠を始めた者でそのものを自分のものだと信じ、かつ信じることに失態がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定があります。

したがって、仮にバッグを購入した時に売人がバッグの所有者とは知らず、かつ、所有者ではないと決定づけるものがない場合、即時に所有権を取得することができます。たとえ購入したバッグの売人が、本当の所有者ではなかった場合でも同じことです。

継続して占有するとは

時効取得を成立させるためには、一定期間途切れることなく、継続して占拠しなければいけません。例えば「自分のものだと信じ、信じることに失態がない場合は10年間、悪意、過失がある場合」は20年間の期間が必要です。

短期間で取得時効の話をまとめるためには、「自分のものにしようとする意思」「物を脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がない」「物を自分のだと信じ、かつ信じることに失態がない」という条件を、住み始めた時点から10年以上継続する必要があります。

占拠開始時から現在までを主張することによって、占拠状態が継続していたことの証明になり短期間で取得時効を手にすることができます。

何を主張すればいいか分からない、何の資料を用意すればいいか分からない場合は、弁護士のサポート依頼をするとスムーズにことが進みます。時効取得に向けて、アドバイスや条件のチェックをしてもらえるので安心です。

時効取得が成立する条件とケース

20年間の場合は「自分のものにしよう」とする意思をもって、「脅迫や暴力」「隠し事がない」ことで持ち家にできます。

10年間の場合は「自分のものにしよう」とする意思をもって、「脅迫や暴力で奪っていない」「隠し事がない」ことを満たし、住み始めた際に「自分のもの」だと信じ、かつ信じることに失態がないならば、所有権を取得できます。

時効取得が成立するケースは、不動産関連に非常に多いです。例えば、Aさんは生まれたときから住んでいる家を、父のものだと思い暮らしていました。

ある日父が亡くなったため、Aさんは「この家は自分が相続するもの」だと思い込んでいました。しかし、家の権利者はBさんの物であり、Aさんの物ではありませんでした。Aさんは家は長い間自分のものだと思いながら所有してきたことから、時効取得が成立し所有権はAさんのものになりました。

自分が所有していると信じるものについて権利を成立させるためにも、「自分のものにしようとする意思」と「脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がない」というキーワードはとても重要です。加えて、10年以内の時効取得を成立させるためには、「家を自分のものだと信じ、かつ信じることに失態がないこと」というキーワードが必須になります。

時効取得に関しては年数や要件が複雑であるため、抑えるべきポイントを確認しましょう。

時効取得に関して知っておくべき注意点

時効取得に関して、知っておくべき注意点があります。自分自身が所有権を持っているにも関わらず、他人に時効取得されてしまうケースが多いです。

例えば、別荘を所有している人が長期間別荘に来ていなかったり、滞在期間が短くほぼ住んでいない状態だと、第三者に不法占拠され、時効取得されてしまうケースがあります。

時効取得が成立する場合は、自分のものにしようとする意思と脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がないということを自己申告する必要があります。

そのため、第三者が20年間、別荘は自分の物であると認識しており、違法な手段で奪ったりしていないことを証明すれば、第三者でも自分が所有するものについて権利を取得出来るわけです。

別荘など日頃から使わない建物に関して、定期的に訪れたり不法占拠されていないか都度確認することをおすすめします。

また時効取得は、所有権以外にできる物があります。

・地上権
・地役権
・永小作権
・貸借権

上記の4つ以外でも、所有権と同等の権利や、物権ほどの価値が与えられる賃借権などが対象になります。

逆に時効取得できない物も存在します。

・留置権
・先取特権
・一般債権

上記の権利などは、時効取得の対象外となるので注意が必要です。

また時効が中断することもあり得るので、注意しましょう。通常であれば、自分のものにしようとする意思をもって脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がないことと10年または20年占拠すると時効が成立しますが、何らかの理由により時効が中断し、進めてきた時効期間が効力を失う可能性があります。

時効が中断してしまう理由は、以下の通りです。

・裁判に請求
・支払いの督促
・和解
・調停の申し立て
・破産手続き
・差し押さえ

中断した時効は、中断理由が終了した日から再開します。ただし催告の場合は、6ヶ月以内に裁判上の請求など時効の理由が発生しない限り、時効は中断しません。

まとめ

時効取得の概要や要件、ケースや注意点をご紹介しました。

もともと自分の物ではなくても、「自分のものにしようとするの意思」と「脅迫や暴力で奪っていない、隠し事がないこと」を満たしていれば、第三者の物であっても、自分が所有していると信じるものについての権利は取得でき、成立します。

自分の物が第三者の手に渡ると、損した気分になる人も多いです。そうならないためにも、自分の所有権は確認しておきましょう。

ただ、素人では時効取得の条件が満たしているか判断できない場合もあります。

また時効取得を巡ってトラブルになるリスクも多数存在し、解決まで長引く恐れもあります。弁護士に相談すれば、法的観点から的を得たアドバイスや有利に立つ条件などを教えてもらうことができ、主張や立証仕方などの対応もしてくれるので、安心です。

ぜひお悩みの方は、一度専門家に相談してみてください。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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