住宅ローンを抱えたまま離婚できる?離婚後のローン返済や注意すべき点などについて解説

2019年度、日本国内で結婚した夫婦は約59万組、一方離婚した夫婦は約20万組もおり、3組に1組は離婚するといわれています。どのような形での離婚かはそれぞれちがいますが、なかには住宅ローンを抱えたまま離婚をしたという夫婦も少なくないでしょう。
ただでさえ離婚するには慰謝料や養育費などの取り決めをしなければならず、かなりの労力を要します。住宅ローンを抱えたまま離婚するとなればなおさら大変なこととなるでしょう。
当記事を読むことで住宅ローンを抱えたまま離婚をしたい夫婦に知っておくべき知識を身につけることができるでしょう。
住宅ローンの契約内容はどうなっているか
住宅ローンを組む場合、夫または妻名義、はたまた夫婦共有での契約なのか住宅ローン契約を確認しなければなりません。夫(妻)1人の名義か共有名義かで離婚後の住宅ローンの扱いが変わってくるからです。どのみち返済するのには変わりありませんが、あらかじめ違いについて知っておくことは大事です。
夫(妻)名義とする場合
夫もしくは妻が安定した年収があったり勤続年数が一定期間以上であったりと住宅ローンの引受基準を満たしている場合は、夫もしくは妻1人の名義で住宅ローンを組むでしょう。一般的には夫1人で組むケースが多いです。
夫婦いずれかの名義で住宅ローンを組んだ場合、離婚後も変わることなく住宅ローンの名義人が返済することになりますので、特に手続きが煩雑になることはないでしょう。
夫婦共有名義とする場合
夫もしくは妻の年収などが住宅ローンの引受基準に満たない場合などによく利用されるのが夫婦共有名義です。この共有名義は住宅ローンを組む時に借入金額が増えるといったメリットこそありますが、同時に離婚となった場合は後々厄介な問題に発展します。
夫婦共有名義としたあとに離婚となった場合、問題となるのは以下の点です。
勝手に売ったり貸したりできない
夫婦共有名義で住宅ローンを組んだ場合は、夫婦の共有財産ですのでどちらか一方が相手の同意なしに売ったり貸したりすることはできません。売るにせよ貸すにせよ、双方が合意したうえで夫婦が協力して進めなければなりません。
相続になればますます煩雑になる
共有名義のまま放置しているうちに、夫もしくは妻のいずれかが亡くなった場合、相続となりますます煩雑になるでしょう。もし夫が亡くなった場合、夫の共有分は夫側の遺族が相続することになります。
その夫が再婚していて子どももいる場合は、再婚相手と子どもが夫の共有分を相続しますので、場合によっては顔も知らない相手と共有名義となることもあるでしょう。そんな人と共有はしたくありませんよね。
単独名義に切り替えよう
上記2つの事例(特に相続問題)にならないようにするにはどうすればよいでしょう。それは夫婦いずれかが名義を譲り単独名義に切り替えることです。
ただし、単独名義に切り替える場合も金融機関が契約違反を盾に断ってくる場合もあるでしょう。さらに一括返済を要求されることもあります。
ではどうすればよいかというと、住宅ローンの借り換えをすれば単独名義に切り替えることができます。もっとも、そのときの年収や勤続年数など審査は必要ですが審査が通りそうならば住宅ローンの借り換えをしてみましょう。
住宅ローンを返済中に離婚したいと思った時にすること
住宅ローンは30〜35年とかなり長期の返済となり、その間に離婚したいと考える人もいるでしょう。ただし、住宅ローンを抱えた状態での離婚はさまざまな取り決めをしなければならずローンが倍場合に比較して手続きが煩雑になります。
住宅ローンを抱えた状態で離婚を考えている人は以下の準備をしておきましょう。
- ●住宅ローンの残債を調べる
- ●自宅の価値がいくらなのか調べる
それぞれ詳細を見てみましょう。
住宅ローンの残債を調べる
離婚を考えているとき、現在の住宅ローンの残債を把握しておくことが必要です。残債を調べるには以下の方法があります。
- ●金融機関に直接問い合わせる
- ●住宅ローンの返済予定表を確認する
- ●年末残高証明書を確認する
金融機関に直接問い合わせる方法は、自分が住宅ローンの契約者であるのが前提です。契約者でない場合は、住宅ローンの返済予定表または年末残高証明書を確認しましょう。
住宅ローンの返済予定表は変動金利の場合は6ヶ月ごとに、フラット35のように全期間固定金利であれば契約時に配布されます。また、年末残高証明書は年末まで毎年郵送されますので現在どれほど残債があるか確認しましょう。
自宅の価値がいくらなのか調べる
現在、自宅の価値はいくらなのか、離婚して売却すれば代金で残債を清算することができるのかなども事前に調べておきます。
自宅の価値を調べるには不動産業者へ自宅の査定を依頼しましょう。
査定を依頼された不動産業者は、査定の依頼を引き受けたのち、以下の調査をおこないます。
- ●法務局(支局)にて権利関係の調査
- ●市区町村役場にて前面道路や上下水道施設などの調査
- ●自宅の状況を視察
- ●近隣の環境など
上記について調査し、総合的な査定をします。上記のほかにも不動産業者から質問される場合もありますので、聞かれたことには正直に答えるようにしましょう。
住宅ローンを返済中に離婚したとき自宅はどうするか
前項では離婚する前の段階のお話でしたが、ここからは離婚してからのお話です。
毎月住宅ローンを必死に返済している最中、離婚してしまいました。このような場合、これまでがんばってやっとの思いで建てた家はどうなるのでしょう。離婚後も住み続けるのか、売り払ってしまうのか、それぞれ見てみましょう。
夫婦のいずれかが住み続ける
離婚後も処分せず夫婦いずれかが住み続ける場合、住宅ローンの契約者であるか否かで話は変わってきます。
ここでは夫を住宅ローンの契約者として見てみましょう。
- ●夫(住宅ローンの契約者)が住み続ける場合
⇒離婚前と同様に住宅ローンを返済していれば基本的に問題ありません。
ただし、連帯債務者や連帯保証人に妻がなっていれば例外です。連帯債務者・連帯保証人の変更を希望しても金融機関で了承してもらえるかはむずかしいでしょう。
- ●妻が住み続ける場合
⇒夫が自宅を出て妻が住み続けるケースもありますが、住宅ローンの滞納した場合などは強制的に退居させられるリスクもあります。なかには困らせてやろうと故意に滞納する場合も考えられるでしょう。
上記の事態を避けるためには住宅ローンの名義を夫から妻に変更しておくことが重要です。
自宅を売却する
夫婦ともに自宅に住まない場合、売却することになります。売却する場合は、先述した自宅の価値を査定しておくことが肝要です。それも1社だけでなく複数の不動産業者で査定してもらいましょう。
そして査定額がもっとも高かった不動産業者に売却の依頼をします。
ただし売却には以下の点に注意しましょう。
- ●売りに出してもすぐに買い手がつくとは限らない
- ●売却できてもアンダーローンかオーバーローンかで今後の生活に影響する
以下にそれぞれ解説します。
売りに出してもすぐに買い手がつくとは限らない
売却の査定額が気に入り、不動産業者に売却を依頼してもすぐに買い手がつくとは限りません。都会であれば比較的早く買い手があらわれるかもしれませんが、地方の田舎では買い手を見つけるのは容易ではありません。
人口減少や少子化による影響ですので地方の過疎化が進んでいる地域では共通した悩みでしょう。
売却できてもアンダーローンかオーバーローンかで今後の生活に影響する
幸いにも買い手がついて無事に売却できました。売却で得た代金を住宅ローンの残債に充てた場合、アンダーローンかオーバーローンかで今後の生活に影響します。
アンダーローンの場合は、住宅ローンの残債より売却代金のほうが大きいので、住宅ローンの残債を一括返済した残額を財産分与として夫婦折半で解決できます。
逆にオーバーローンの場合は、売却代金より住宅ローンの残債が大きいので、全額返済とはなりません。売却代金を住宅ローンの一部繰り上げ返済に充て、残りは返済し続けます。
共有名義の場合は、売却と同時に共有からも解放され、特に取り決めをしていなければ住宅ローンの契約者が1人で返済義務を負います。1人で住宅ローンの返済となっても、一部繰り上げ返済により負担は離婚前より大幅に軽くなるでしょう。
ただし、オーバーローンで残債がある場合は離婚後に再婚した時にまた住宅購入すると住宅ローンを二重に抱えることになりますので、その場合は特に注意が必要です。
住宅ローンを抱えたまま離婚するときにやってはいけない行動
これまでも住宅ローンを抱えたまま離婚したときの注意点など述べてきましたが、ここでは住宅ローンを抱えたまま離婚するときにやってはいけない行動について解説します。
やってはいけない行動は以下のとおりです。
- ●金融機関の承諾なく名義変更する
- ●売却査定を1社だけに依頼して決める
それぞれ詳細を見ていきましょう。
金融機関の承諾なく名義変更する
このケースは共有名義の場合が対象で、離婚する場合はさっさと縁を切りたいからといって金融機関の承諾を受けることなく共有名義⇒単独名義に切り替えることはやってはいけません。
この行動は住宅ローンの契約違反に抵触する場合があり、契約違反にて住宅ローンの一括返済を突き付けられることもあります。離婚によって名義を変更したい場合は、必ず金融機関へ出向き事情を説明するのが重要です。
売却査定を1社だけに依頼して決める
住宅などの不動産の売買というライフイベントは、人生でそうそうあるものではありません。売却査定して見たことのない査定金額を提示されれば、ついつい飛び付きたい気持ちにもなるでしょう。
ただし、ここで目の前の査定金額に飛びついてしまうのはいけません。なぜなら、他の不動産業者ではさらに高い査定金額を提示してくる場合も大いにあり得るからです。この査定金額の差によってアンダーローンにもオーバーローンにも転ぶということも考えられます。
したがって1社だけの査定で決めず、複数社の査定をしてもらい一番好条件の査定額を提示した不動産業者に依頼しましょう。
まとめ
住宅ローンを抱えたまま離婚する際に重要な点は以下です。
- ●共有名義で住宅ローンを組んだ場合、離婚後もそのまま放置しない
- ●住宅ローン契約者でない側が離婚後も住み続けると滞納リスクが付きまとう
- ●売却する場合は複数社に査定を依頼する
- ●連帯債務者や連帯保証人の変更はむずかしい
住宅ローンは一般的に30〜35年などかなり長期にわたる返済をしていかなければなりません。その間に離婚した、もしくは離婚を考えているなどといった夫婦も少なくないでしょう。
離婚とは表向きには紙切れ1枚で成立するものですが、その裏ではさまざまな取り決めをしなければならず、煩雑な手続きが多いイベントです。そのうえで住宅ローンを抱えている状態となれば輪をかけて大きな問題となります。
もし住宅ローンを抱えたまま離婚を検討している人は、今後発生する多くの作業に困らないようしっかりと準備をしておきましょう。

ブログ:
皆の笑顔に我が笑顔あり
徳本 友一郎
- 所属会社:
- 株式会社スタイルシステム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.style-system.net
- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
- 初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント
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