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家・住宅購入コラム

中古戸建ては何年住める?住宅の寿命と長持ちさせるポイントを知ろう

初めてのマイホームや住み替え先として、中古戸建てを選択肢に加える人が増えています。
 
これは、長く安心して暮らせる中古戸建ての流通を促進するために、住宅診断の資格者の認定や、中古戸建てリフォーム時の補助金制度の設立などが行われていることが理由。さらに近年の建築資材の高騰も相まって、新築住宅よりも安価に購入できる中古住宅は、夢のマイホームを購入したい人にとって魅力的に映っています。
 
しかしその一方で、日本の戸建て住宅は寿命が短く、築30年程度で住めなくなるというイメージが根強く残っているのも事実。中古戸建てを購入した場合、安心・安全に暮らせるのか、何年住めるのかが気になるところです。
 
今回は中古戸建て住宅を購入した場合、何年住めるのか、長く住むためにはどうすればいいのかを解説します。
 

1.日本の戸建ての寿命は何年?

 

 
「日本の戸建ては寿命が短い」と言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
 

1)戸建ての寿命は30年と言われているが…?

 
戸建て住宅の寿命は30年程度で、一世代で取り壊すもの、というイメージを持っている人も少なくありません。
 
国土交通省でも、木造の戸建て住宅の寿命を約30年としています。しかしこの年数は、取り壊された建物の平均築年数が「27年」であること、さらに日本における住宅総数と新築件数から算出されるサイクル年数が「30年」であることから、あくまでも便宜上周知しているにすぎません。
 
実際の戸建て住宅の平均寿命については、国土交通省が「建物の平均寿命実態調査」という資料を公表しています。この資料によると、1997年の調査時に43. 53年であった木造住宅(戸建て)の平均寿命は、2006年には54. 00年、2011年には65. 03年にまで伸びていることがわかります。
 
この30年間で日本の戸建て住宅の平均寿命は20年以上も伸びているのに加え、高い耐震性・耐久性を備えた住宅の建築を推進している現在の日本においては、2011年の調査時よりも、さらに長く住める住宅を取得することが可能ということが言えるのです。
 
(参考:国土交通省 中古住宅の建物評価の実態<参考資料>p.7【指針選考資料5】建物の平均寿命について https://www.mlit.go.jp/common/001033889.pdf
 

2)日本の戸建ての寿命が短いと言われるワケ

 
2011年の調査時点で約65年にまで延びた日本の戸建て住宅の平均寿命ですが、調査資料からもわかるとおり、かつては約40年経つと寿命をむかえていた時代もありました。
その要因として、下記の3つが挙げられます。
 

(1)質より量が重視された時代背景

第二次世界大戦で日本が敗戦したころ、都市部を中心に住宅が焼失したことで、多くの人が住まいを失くしたことはご存じの人も多いはず。
 
今でこそ耐震性や耐久性、省エネ性を備えた戸建てが求められている住宅業界ですが、戦後の日本においては、住宅の性能よりも「できるだけ早く多くの住居を建てること」が重要視されました。
 
つまり、とりあえず屋根があり雨風が防げる程度の住宅ばかりが建てられ、耐久性に乏しいそれらの住宅は、早々に寿命をむかえて取り壊されるというのが主流だったのです。
 

(2)中古住宅市場が発達していない

日本の戸建ての寿命を短くする要因には、中古住宅市場がまだまだ発展途上であるという点も挙げられます。
 
後に解説しますが、日本では建物の使用用途や構造ごとに、「法定耐用年数」が定められています。新築から法定耐用年数が経過すると、その建物は資産価値がないものとして扱われ、住宅取得から数十年後に売却しようとしても価格がつきません。
 
資産価値がなくなった住宅は、中古住宅として売りに出したとしてもなかなか買い手がつきません。当然買主側も、「購入するのであれば価値の高い物件がいい」と考えるため、ほとんどの人が中古ではなく新築を選択し、売れ残った中古戸建ては最終的に解体されます。そして解体された時点での築年数を集計・統計を取った結果が、日本における戸建て住宅の平均寿命は30年、と言われる要因になっているのです。
 

3)戸建ての「寿命」と「法定耐用年数」は別のもの

 
ところで、戸建てに何年住めるかを調べるなかで、「法定耐用年数」という基準を見たことがある人もいるかもしれません。法定耐用年数は、一見すると戸建ての寿命を表しているように思われがちですが、まったく別物であるということを知っておく必要があります。
 
「法定耐用年数」は、国税庁が定めている基準で、建物が新築されてから資産価値がゼロになるまでの年数を示したものです。年数は建物の構造ごとに、以下のように定められています。
 

構造 法定耐用年数*
金属造(骨格材肉厚3mm以下) 19年
金属造(骨格材肉厚3mm超4mm以下) 27年
金属造(骨格材肉厚4mm超) 34年
鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造 47年
れんが造・石造・ブロック造 38年
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年

 
(参考:国税庁『減価償却資産の耐用年数表』https://www.city.fujieda.shizuoka.jp/material/files/group/130/taiyounensuuhyou.pdf
*すべて住宅用の場合
 
上記の表にある年数は、建物にかかる固定資産税の税額を算出する際に用いられ、建物を使用できる年数を示したものではありません。つまり、居住している戸建てが、築年数の経過により「資産価値ゼロ」と税制上の評価を受けた場合でも、建物に管理が行き届いていてまだ住める状態であれば、法定耐用年数経過後も住み続けられるということです。
 

2.戸建ての寿命を延ばすポイント

 

 
戸建て住宅は一般に認知されている年数よりも、ずっと長持ちするということを解説してきました。ここからは実際に、戸建て住宅の寿命を延ばし、より安心かつ快適に住み続けるための方法を紹介します。
 

1)こまめな掃除と点検

 
あまりに基本的なことと思われるかもしれませんが、戸建て住宅を長く使用するためには、こまめな掃除が欠かせません。
 
特に住宅にとって湿気は大敵。水分の多い台所や浴室は、できるかぎり風通しのいい状態にしておき、使用したらすぐに乾燥させるよう心がけましょう。配管や排水のつまりは設備の不具合の原因にもなるため、日ごろからこまめにチェックしておくことが大切です。
 
ただ掃除するだけでなく、室内や外観の目の届く範囲を、簡単に点検しておくのもおすすめ。小さな変化に気づいた時点でメンテナンスを実施していれば、建物へのダメージを防げるだけでなく、補修費用も安く抑えることが可能になります。
 

2)定期点検とメンテナンス

 
日頃のこまめな掃除や目視での点検に加えて、何年かに一度、専門家に依頼して自宅全体を点検してもらうことも重要なポイントです。
 
戸建て住宅のメンテナンスのサイクルは、箇所によって異なります。
 

外壁 15年に1回の点検・塗装
(必要に応じて目地の打ち替えも)
木造部 3年~5年ごとに点検・塗装
屋根 10年に1回の点検
バルコニー 10年に1回の防水加工と塗り替え

 
上記のほか、フローリングに関しては半年に1回はワックスがけをし、踏んだときの軋みや、表面の傷みが気になる場合には貼り替えが必要です。水廻りは、水漏れや配管のつまりなどの不具合が発生しやすい箇所のため、5年〜10年程度で点検することをおすすめします。
 
劣化した箇所をそのまま放置しておくと、美観が損なわれるだけでなく、建物自体の耐久性・耐震性が低下する要因にもなります。ほかの箇所や設備の不具合につながる可能性もあるため、戸建て住宅に長く住むためには、定期点検と必要に応じたメンテナンスを確実に行うようにしましょう。
 

3)リフォームを行う

 
中古で購入するかにかかわらず、戸建てを長く快適に使い続けるには、必要に応じたリフォームも必要になります。
 
日本の戸建て住宅は、設計時に壁で仕切ることで間取りを決定することがほとんどで、ライフスタイルや家族構成の変化に合わせて間取りを変更することが難しい、という側面があります。
 
その一方で、20年30年と長く暮らしていると、出産により家族が増えたり、逆に独立していったりと、ひとつ屋根の下で暮らす人数が変化することは珍しくありません。世帯人数の変化だけでなく、年齢を重ねることにより、室内をバリアフリーにしたり手すりをつけたりと、老後も快適に暮らせるように、新しい設備を導入する必要もあるでしょう。
 
建物の状態を良好に保つだけでなく、「生活に不自由さはないか」という視点から住まいを見直し、必要に応じてリフォームをしていくことも、戸建て住宅に長く住み続けるためには大切です。
 

3.中古戸建てに長く住むためにチェックしたいポイント

 

 
戸建て住宅に長く住み続けるためには、日ごろのお手入れや定期的なメンテナンスなども大切ですが、そもそも購入時の住宅の品質が悪ければ、どんなに入念にケアをしていても、早いうちに住めなくなってしまう可能性も否定できません。
 
中古戸建てを購入する際は、下記に紹介する3つのポイントに着目し、長く住める物件かどうかを判断しましょう。
 

1)新耐震基準に適合しているか

 
中古戸建ての購入を検討する人からよく聞かれる不安点としては、「大きな地震が起きたときに倒壊しないか」ということです。
 
この不安を払拭するためには、新耐震基準に適合した戸建てを選ぶことをおすすめします。
 
「新耐震基準」とは、1981年6月に建築基準法が改正された際に示された基準で、より高い耐震性能を有する住宅を建築することを目的としています。それに対して、従前の基準のことを「旧耐震基準」と呼びます。
 
新耐震基準においては、「震度6強から震度7程度の地震を受けても倒壊しないこと」・「震度5強程度の地震で倒壊・崩壊しないこと」が求められています。地震が多発する日本において、戸建て住宅で長く暮らすためにも、新耐震基準が適用されている1981年6月以降に建てられた住宅を選ぶようにしましょう。
 
ただし、1981年より以前に建てられた戸建てだからといって、耐震性が不十分というわけではありません。新耐震基準の施行前に建てられた住居でも、新耐震基準を満たす、または上回る耐震性能を有する戸建ても存在します。
 
購入を検討している戸建ての耐震性を確認するためには、「耐震診断」を専門家に依頼することで調査してもらうことが可能。万が一耐震性が不十分と判断された場合は、耐震改修工事を行うことで、新耐震基準に適合した性能を得られます。なお、耐震診断や耐震改修工事にかかる費用は、国や地方公共団体が支援策を用意しています。
 

国土交通省『住宅・建築物の耐震化に関する支援制度(令和4年度)』
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001474777.pdf

 

2)修繕履歴を確認する

 
中古戸建てを購入する際は、それまでどのような修繕・補修が行われてきたかの履歴を確認することをおすすめします。
 
前述のとおり、定期的な点検やこまめなメンテナンスを行っているかによって、戸建ての寿命が大きく左右されます。修繕履歴を確認することで、購入を検討している戸建てかどれほど手をかけられてきたかを知ることが可能です。
 
また、購入時点での戸建ての状態を把握する以外にも、不具合が起きやすい箇所をあらかじめ知っておくための材料にもなります。頻繁に修繕されている箇所があれば、その部分になにか構造上の問題があるのかもしれません。
 
修繕履歴を確認することは、建物の状態を把握することにもつながり、購入後の修繕計画を立てる参考にもできます。
 

3)契約前にプロに確認してもらうのがおすすめ

 
戸建ての売買の際には、売主から買主に対して、不具合のある箇所や瑕疵(欠陥)のある箇所についての説明をすることが義務とされています。しかし、買主が知らない部分に問題が発生しており、それが購入後に戸建ての寿命を短くする要因になる可能性も否定できません。
 
そうしたリスクを避けるために、戸建てを購入する前には、専門業者による「ホームインスペクション(住宅診断)」を受けることをおすすめします。
 
ホームインスペクションでは、主に下記の箇所を目視で確認します。
 
・建物の傾き
・外壁のひび
・雨漏りの形跡
・施工不良箇所の有無
・建物の著しい損傷
・床下の水たまり
・シロアリ被害
・詳細調査が必要な場所の有無
 
国土交通省もホームインスペクションの実施を推進しており、不動産会社が仲介に入る場合は、不動産会社から業者をあっせん・結果を買主に対して説明し、現況説明のための資料を交付することが義務付けられています。
 
(参照:国土交通省『改正宅地建物取引業法の施行について』説明スライドp.5「宅地建物取引業法の一部を改正する法律」(平成28年6月3日交付)概要 https://www.mlit.go.jp/common/001201151.pdf
 
不動産売買は、法律上は個人間での直接取引も認められています。しかし、中古戸建てを取引する場合は、建物の耐震性や耐久性の確認や、ホームインスペクションの実施など、一般の消費者だけでは不明瞭になりやすい部分が多くあります。
 
長く快適な生活を送るためにも、中古戸建てを購入する際は、売買専門の不動産会社に依頼することをおすすめします。
 

戸建てには60年以上住める!安心できるマイホームを探すなら不動産会社を活用しよう

 

 
過去に品質の悪い住宅が多く建築されていたことや、中古住宅市場が依然発展途上であることから、長く暮らせないイメージが根強い戸建て住宅。本記事を読んでいただいたことで、購入時に耐震性・耐久性を入念に確認したり、購入後も丁寧に手入れをしたりすることで、60年以上の長きにわたって住み続けられるということをご理解いただけたかと思います。
 
しかし、不動産の売買は建物が長持ちするかどうか以外にも、契約条件のすり合わせや役所での手続き、住宅ローンの審査など、新生活を送るまでに踏むべきステップが数多くあります。すべて自分ひとりでこなすことは難しく、間違った対処をすると大きなトラブル・損害に発展する可能性もあります。
 
中古戸建ての購入を検討し始めたら、まずは中古戸建ての取引実績が多い不動産会社を探しましょう。中古戸建ての取引において問題になりやすい部分や、買主が不安に感じる部分を把握している業者を選ぶことで、スムーズに取引が成立するだけでなく、売主や買主では気づかない問題点も指摘してもらえます。
 
不動産のプロの力を借りて、長く大切に暮らせる戸建て住宅に出会ってください。

千葉 雅恵

所属会社:
株式会社スマイルパートナー
所属会社のWEBSITE:
http://www.smile-partner.co.jp
保有資格:
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、NPO法人相続アドバイザー協議会、認定会員(上級アドバイザー)

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