不動産担保ローンが通る人と通らない人との違いとは?
そもそも不動産担保ローンは何を基準に審査されているのでしょうか。
不動産担保ローンの審査基準は「申込者にローンの支払い能力があるのか」「万が一支払いが滞ったときに、所有する不動産を売却して返済に充てられるか」という2つです。
不動産担保ローンの審査が通らない場合は、不動産担保ローン以外での資金調達方法の利用も検討する必要があるでしょう。現在では「リースバック」や「リバースモーゲージ」といった方法も利用者が増えています。
1.不動産担保ローンが通りにくい人の特徴
不動産担保ローンの審査になかなか通らない人には、共通して以下のような特徴があります。
本人の信用力に不安がある
申し込む本人の信用力に不安があると判断された場合、不動産担保ローンの審査が通る可能性は低いです。
「信用力が低い」というのは、例えば過去に住宅ローンを数ヶ月間滞納したことがあったり、自己破産・債務整理をした経験があったりといったことが該当します。金融機関は、申込者が過去に金融事故を起こしたことがあるかどうかを調べられるため、金融事故情報が残っている間はローンの審査が通りにくいと言えます。
また、金融事故を起こしたことがなくても、安定した収入が無かったり収入が極端に低かったりする場合も、思ったように融資が受けられません。
書類に不備がある、または情報が不正確である
不動産担保ローンを申し込む際に提出する書類に不備があったり、申込書の記載内容が異なっていたりする場合に、融資を断られてしまう可能性があります。
他の金融機関で借り入れを行っている
申込時点で他の金融機関からの借り入れがない状態と比較すると、借り入れがある場合のほうが審査は通りにくくなる傾向にあります。
いくつも融資を受けている場合、追加で不動産担保ローンでの借り入れを行うことで、借入残高の総額がさらに大きくなります。借入残高の総額が増えれば、将来的に債務者がローンを返済できなくなるリスクも増える、と判断されます。
2.不動産担保ローンの審査に通る人の特徴と審査基準とは?
不動産担保ローンの借入時、主に2つの基準に基づいて審査されます。担保にされる不動産の「担保価値」と融資の申し込みをした本人の「信用力」です。
1)不動産の「担保価値」に関する審査
不動産の「担保価値」とは、担保にされる不動産に、ローンの残債を補填できるだけの価値があるかということを意味します。
万が一、ローンの返済が滞ったり、返済できなくなったときに、担保不動産の売却額がローン残債の返済に充てられます。
不動産担保ローンの審査において担保価値が高いと判断されるのは、不動産評価額が高く買い手のつきやすい不動産です。主要都市に位置しするなど、駅前で立地がよいといった不動産が該当します。
一方で担保価値を低く評価されてしまうのは、地方都市や過疎地域に位置する不動産です。売りに出しても買い手がつきにくく、買い手がついたとしても高くは売れません。また築年数の古い建物も不動産評価額が低くなるため、担保価値の低さから融資を断られる場合があります。
【土地の評価方法】
土地の担保価値を算出するにあたっては、以下の指標に基づき、売却した場合にどれほどの価値を持つかを算出します。
路線価 | 道路に面する土地1㎡あたりの評価。毎年国税庁が発表。 |
公示地価 | 全国2万3,000ヶ所にある標準地1㎡あたりの標準価格。国土交通省が指標として設定。 |
基準地価 | 各都道府県が定めている、全国約2万ヶ所の地点における標準価格。 |
固定資産税評価 | 固定資産税課税のために算出した額で、総務省・市町村が評価。 |
どの評価基準で審査するかは金融機関によって異なるため、同じ土地を担保にした場合でも審査結果が変わることがあります。
【建物の評価方法】
金融機関では、建物評価額を算出するために以下の計算式を用います。
建物の評価額 = 再調達価格 × 建物面積 × 残存耐用年数 ÷ 法定耐用年数 |
再調達価格:1㎡あたりの単価で、木造・軽量鉄骨造など構造によって異なる。
法定耐用年数:法律で定められた建物の耐用年数で、木造住宅の場合は22年、鉄筋コンクリート造の住宅の場合は47年。
残存耐用年数:法定耐用年数から築年数を引いた数字。
なお建物に関しては、評価額の5~7割程度が担保価値判断されます。
建物の評価額=担保価値ではないという点に注意が必要です。
また、金融機関ごとに融資の対象とする担保価値の基準が異なるため、A社では審査が通らなかったがB社では融資を受けられた、というケースもあります。
2)融資を受ける人の「信用力」に関する審査
融資を受ける人の審査は、一言で言うと「ローンをすべて返済する能力があるか」という部分を見られます。
【過去の金融事故の有無】
申込者が、過去にローンの滞納をはじめとした金融事故を起こしていないかどうかは、金融機関が貸付を行うかどうかの重要な判断材料です。過去に金融事故を起こしたことのある申込者の場合、融資を行っても返済が滞ったり、返済不能に陥って残債を回収できなくなる可能性があるためです。
ローン滞納や自己破産といった金融情報は、「信用情報機関」というところに掲載されます。「信用情報機関」は銀行やクレジットカード会社などに開示されており、新しくクレジットカードを作ったり、融資を受けたりする際に参照されます。
つまり、信用情報機関に金融事故が掲載されてしまうと、ローン審査時に「この人にお金を貸しても返ってこないかもしれない」と判断されてしまうのです。
【勤務先における勤続年数と年収】
安定した収入がある申込者は、不動産担保ローンの審査が通る可能性が高いと言えます。現在就業している会社の経営状況が安定しており、勤続年数が長い場合は、融資後も返済が滞る可能性が低いと判断されるのです。
ただし、会社員や公務員と比較して、自営業者は信用力を低く評価されてしまう場合があるという点に注意が必要です。
法人の場合は、事業継続年数・経常利益額・事業計画などから将来性を判断します。総合的に判断されることになるため、融資申し込み時に赤字決算の場合でも、会社の将来性と不動産の担保価値次第では融資を受けられる可能性があります。
【他の金融機関からの借り入れ状況】
他の金融機関から受けている融資額が少ないほど、不動産担保ローンの審査に通りやすい傾向にあります。
「審査に通りにくい人の特徴」で解説したとおり、すでに他社からの借り入れを行っているところにさらに融資を行ってしまうと、将来的に返済能力が追いつかなくなる可能性があるためです。ただし申込者本人の年収やローン残債の額によっては、それほど審査に対して不利に働かない場合もあります。
【返済の負担率】
「返済負担率」とは、融資を受ける人の年収に対して、年間で返済すべき金額が占める割合のことを言います。例えば年収500万円の人が、年間で100万円の返済を行う場合、返済負担率は20%ということです。
金融機関によって基準としている返済負担率は異なりますが、一般的には30%が基準とされており、年間返済額が年収の30%を超える金額・返済プランでの融資は断られる場合が多いです。
【完済時の年齢】
「ローン完済まで収入を得られるか」も、金融機関が融資を行うかどうかの判断基準です。その理由は、不動産担保ローンの返済期間は10年以上の長期になることが多いためです。高齢の申込者に対して長期の返済期間を設けてしまうと、金融機関はローンの残債を回収できないリスクがあります。
そのため、多くの金融機関が完済時の年齢を80歳までとしており、融資開始から80歳までの年数を最大として融資を行っています。50歳の人がローンを組んだ場合、返済期間は最大で30年ということです。
3.不動産担保ローンの審査に通るためのポイント
不動産担保ローンの審査を受ける際に気を付けたいのは、スムーズに審査が行えるように配慮することです。
特に「必要書類を不備なく揃える」「担当者に嘘をつかない」という2点が審査結果に大きく影響を与えます。事前準備も含めてそれぞれ詳しく解説します。
必要書類を早く集めて、内容に不備がないようにする
不動産担保ローンの審査を受けるためには、申込時・契約時に提出する書類を準備する必要があります。中には市役所・区役所、法務局などから取り寄せる書類もあり、すべて揃わないと審査を開始してもらえなかったり、なかなか進めてもらえなかったりすることも少なくありません。また、書類が十分集まっていないと、不動産の担保価値や信用力を正しく評価してもらえず、場合によっては審査に通らない可能性もあるのです。
不動産担保ローンの審査を申し込む際に、必要となる主な書類は以下のとおりです。
・本人確認書類(住民票や免許証のコピー)
・収入を証明する書類(確定申告書、源泉徴収票、法人の場合は決算書など)
・担保にする不動産についての書類(不動産登記簿謄本、地積測量図、構図、建物図面など)
・金融資産を証明する書類
また、事業資金調達のための融資の場合は、事業計画書の提出を求められます。しっかりと作り込まれた事業計画書は、審査担当者に「この人なら事業を成功させてしっかり返済してくれそう」と思ってもらう材料になります。可能であれば、提出前に顧問弁護士や司法書士に内容を見てもらうといいでしょう。
なお、融資を申し込む金融機関や不動産の種類によって、提出を求められる書類は異なります。あとで慌てることのないように、ローン会社に早めに確認するのをおすすめします。
担当者には嘘をつかずに、できるだけ多くの情報を伝える
最近では融資開始までをすべてWeb上で行うローン会社もありますが、申し込み時に来店を求められる金融機関も少なくありません。ローンの担当者との面談を行う際には、嘘をつかずに誠実な対応をするということも大切です。
金融機関では申込者に融資を行うかどうかを判断するために、担保となる不動産や申込者本人に関して徹底的に調査を行います。そのため、面談での質問に対して明確な回答が得られなかったり、調査内容と食い違う点があったりすると、ローン担当者に対して不信感を与えてしまう原因になりかねません。
ローン担当者は事実確認と合わせて「この人はローンをすべて返済してくれるか」という人間性も見ています。不利になることに正直に答えるのは当然抵抗があるものですが、そうした質問にも真摯に対応することで金融機関からの信頼を得られるのです。
4.審査に落ちてしまった時の対処法とは?
不動産担保ローンの審査に一度落ちてしまった場合、以下の3つの方法を試してみましょう。
・担保不動産の対象エリアを確認する
・担保にする不動産を変える
・別の金融機関の不動産担保ローンに申し込む
順番に解説していきます。
担保不動産の対象エリアを確認する
意外と見落としがちなのが、担保にする不動産の場所です。ローン会社はそれぞれ取り扱い可能なエリアがあり、そのエリア外の不動産については担保として認められません。
各金融機関が対象としているエリアは、ホームページや問い合わせ窓口から確認が可能です。自分の不動産があるエリアを対象としていなかった場合は、担保不動産から近いところに店舗を構える金融機関を探してみましょう。
担保にする不動産を変える
不動産を複数所有している場合は、担保にする不動産を変えてみましょう。
申込者目線では担保価値が高いと思われる不動産でも、実際の審査では災害リスクなどの観点から、思ったより価値が低く算出される場合もあるからです。
担保価値が低い不動産から担保価値の高い不動産に変えて申請したことで、すぐに審査に通ったというケースも多くあるため、担保にできる不動産を他にも所有している場合は試してみましょう。
別の金融機関の不動産担保ローンに申込む
同じ金融機関で、申込内容や担保にする不動産を変えても審査が通らない場合は、別の金融機関に審査の依頼をしてみるという方法もあります。その理由は、金融機関によって審査基準が異なるためです。同じ申込内容・同じ不動産で審査が通る可能性もあります。
特に銀行の不動産担保ローンは審査が厳しい傾向にあるため、比較的審査基準が緩い「ノンバンク」のローンを検討するのも選択肢のひとつです。
ただしノンバンクの不動産担保ローンは、銀行で借り入れる場合と比較して金利が高く、借入期間が短く設定される傾向にあります。また融資を受ける際に支払う事務手数料も高いところが多いため、トータルの出費としては高くなってしまうということを覚えておきましょう。
5.不動産担保ローン以外に融資を受ける方法は?
どうしても不動産担保ローンの審査が通らず、資金調達に困ってしまった場合でも諦める必要はありません。「リースバック」や「リバースモーゲージ」は、不動産を活用した資金調達の方法として、近年利用者が増えています。
【リースバック】
「リースバック」とは、自宅の売却と賃貸借契約がセットになった資金調達法のことを言います。
リースバックでは、不動産会社に自宅を売却するのと同時に、買主である不動産会社から賃貸する形で住み続けるという契約を結びます。自宅を売却することでまとまった資金を手に入れられるだけでなく、住み慣れた家を手放すことなく住み続けられるというメリットがあります。
リースバックによる自宅売却で得られた資金は、使用用途に制限がありません。そのため大きな買い物をするための資金や老後資金のために利用されるケースも多く見られます。
ただし、自宅を売却するということは、不動産の名義が自分ではなく買主に移動することになります。一部の契約では、売却後でも自宅を買い戻せる特約をつけることも可能ですが、売却時よりも高い金額で買い戻すことになるケースが多いという点に注意が必要です。
【リバースモーゲージ】
「リバースモーゲージ」は、自宅を担保に融資を受けて、契約者の死後に自宅を売却することでローンを返済するという方法です。
リバースモーゲージでは融資の限度額の範囲内で、定期的または好きなタイミングでお金を借りることが可能です。そのため老後の生活費が足りないのではと不安を抱く人に多く活用されています。
ただし、リバースモーゲージを利用した場合の借入期間は、借り入れを行った人が亡くなるまでの期間に設定されるため、それまでの期間中に融資限度額いっぱいまで資金を使ってしまう可能性もあります。そのため老後に必要な生活費と受けられる融資額について、しっかりとバランスを取って生活する必要があると言えます。
まとめ
不動産担保ローンは無担保ローンと比較すると審査に通りやすく、まとまった融資を受けやすいというメリットがあります。その一方で、必要書類の準備やエリアの確認などを怠ると、思ったような融資が受けられない可能性もあります。
一度の審査で通らなかった場合でも諦める必要はありません。条件や申込内容の見直しを行ったり、利用するサービスを再検討したりすることで、よりご自身に合った資金調達が可能になります。
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徳本 友一郎
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- 保有資格:
- CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書:
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