住宅の見積もり前の準備とポイントを詳しく解説

マイホームの購入では、住宅見積もりの段階で不明点や悩むポイントも出てくるでしょう。
住宅見積もりは、具体的な外観や内装のイメージを工務店やハウスメーカーへ伝えてから作ってもらうもの。住宅見積もりを依頼する前に準備することやポイントを知っておくと、トラブルの回避やスムーズな打合せができるようになります。
そこでこの記事では、住宅見積もりを取るときの準備とポイントを詳しく解説します。
注文住宅の見積もりを取る準備をしよう
注文住宅では、ハウスメーカーや工務店へ行ってもすぐに見積もりが取れるわけではありません。住宅の見積もりを取る前に、次のような3つの工程が必要です。
どんな家にするのか決めよう
建売や中古住宅では大まかな見積もりが用意されていますが、注文住宅では、見積もりの前に外観や内装のイメージを伝える必要があります。家族にとって大きな買い物なので、どのような仕様や部屋が必要なのか話し合い、イメージを作りましょう。家族でどんな暮らしをしたいのか、現在のライフスタイルや未来の展望も含めて書き出してみてください。
マイホームのイメージ作りでは、立地や周辺の環境、設備や間取りを考えなければなりません。設備や間取りは変更可能なので、立地や周辺の環境から考えましょう。設備や間取りも含めた内装のイメージが浮かびにくい場合、好みや希望の参考になるので住宅展示場へ見学に行くことをおすすめします。
予算を決めよう
マイホーム予算を明確にしておくことも大切です。自己資金をはじめ住宅ローンも細かく計算してからハウスメーカーや工務店へ見積もりを依頼しましょう。
予算内でイメージどおりの家が建てられるのか、難しい場合は素材や工程で工夫できるポイントがないか、設備や間取りの変更など企業と具体的な話が進められるようになります。
一般的に、自己資金は頭金や諸経費の支払いに充てられます。自己資金の目安は、物件価格の5~10%ほど。『2020年度フラット35調査』では、注文住宅の全国平均が3,500万円前後という報告があり、自己資金の平均も175~350万円前後とみていいでしょう。
ただし、近年は自己資金をゼロにして頭金や諸経費もローンに組み込む「フルローン」を選ぶケースも増えています。月々の支払金額を具体的に出せるシミュレーションサイトも活用して、住宅ローンを計算してみてください。
家族で予算を話し合うとき、予算オーバーになった場合の方向性も出しておくと、より打合せがスムーズになりますよ。
スケジュールを決めよう
家づくりの検討から完成まで、大まかなスケジュールを立てることも大切です。ハウスメーカーや工務店へ注文住宅を依頼し完成するまでは、一般的に1年前後かかるといわれています。住宅の完成日をゴールとして逆算した場合、余裕をもった準備期間が用意できるかを確認してみてください。
短期間で慌ただしく依頼先を選んだり立地や間取りを決めたりしてしまうと、新居が完成してから後悔する箇所が出てくるかもしれません。家族内での話し合いやメーカーとの打合せなど、熟考して慎重に工程をすすめられるスケジュールを組みましょう。
注文住宅の検討に入った段階から十分な時間を取っておくと、理想的な立地や満足度の高いメーカーを探しやすくなりますよ。
注文住宅の見積もりはいつ行う?
注文住宅の見積もりは、一般的に次の3つのタイミングで取ります。
ハウスメーカーや工務店の候補を絞るとき
ハウスメーカーや工務店は慎重に選びたいもの。まずは複数社をピックアップしますが、数社に絞るときに大まかな見積もりを出してもらいます。大まかな見積もりは概算見積もりと呼ばれるものですが、後述するのでそちらで確認してください。
候補を絞る段階なので、間取りや内装は確定ではなく希望でかまいません。担当者の対応も確認しながら、大まかな予算を把握しつつ依頼したいと思えるかどうか判断しましょう。
ハウスメーカーや工務店を決めるとき
依頼したい企業を数社に絞った後、より具体的な仕様や内装を決めて、初回よりも実際の費用に近い見積もりを出してもらいます。
このとき、最終的に依頼するハウスメーカーや工務店を決定するので、希望や条件はより細かく決めておくのが理想的。変更や追加があったならすべてのハウスメーカーや工務店に伝え、同じ条件で計算してもらいましょう。
ハウスメーカーや工務店を決定して契約するとき
依頼したいハウスメーカーや工務店が決定したら、契約を交わし着工スタートとなります。その契約を交わす前に、詳細見積もりと呼ばれる、より細かく計算した見積書を出してもらいます。
予算や内容に誤りがないか、伝達漏れや忘れていることがないか細かく確認してください。
新築住宅は何社から見積もりを取るべき?
新築住宅の見積もりは、複数のハウスメーカーや工務店で出してもらいましょう。同じ条件の住宅で金額に差がでるため、予算内で収まる可能性もあります。
見積もりを依頼する目安は3~4社ほど。2社では相場の把握が難しく、多くなりすぎると手間や時間が増え、比較対象も多く迷ってしまうためです。まずは3~4社へ見積もりを依頼して、相場の把握から取り組むことをおすすめします。
どのような企業へ見積もり依頼を出せばいいのか悩む場合、次のような3つのポイントを参考にしてください。
実績ある大手のハウスメーカー同士
大手メーカーは、実績が豊富なため住宅の品質や社員の対応に期待がもてます。スケジュール進行や資材の入手ルートも確立されていることから、住宅が完成するまでの大まかなスケジュールを把握しやすいのです。
また、大手メーカーでは他社の見積もりと比較して値引き交渉に応じることも。希望するエリア内で、大手メーカー各社の実績もチェックしましょう。
特徴が異なる工務店・ハウスメーカー同士
方向性が異なる企業へ見積もり依頼を出すことも、1つのポイントです。
工務店やハウスメーカーは、それぞれ特徴や得意とする分野が異なります。シンプルやモダンなデザインを展開するところもあれば、植物やソーラーパネルでの再エネでナチュラルさを推すところも。
方向性が異なる企業を候補にあげておくと、イメージの幅が広がり、家づくりが予算内で収まるような工夫や取捨選択しなければならないなど、参考になりますよ。
特に、家の雰囲気や間取りなどイメージにまだ迷いがある人にもおすすめです。
希望の工法を行っている建築会社同士
建築会社が得意とする工法で選ぶのも1つの方法です。一般的に、家づくりでは木造軸組工法や鉄筋コンクリート工法、鉄骨組工法やツーバイフォー工法が有名です。
工法の希望がはっきり決まっている場合、その工法を得意とする建築会社からも候補としてピックアップしてみてください。
建築会社は見積金額やオプションサービスで差をつけて顧客獲得を目指すので、値引き交渉を進めやすくなりますよ。
注文住宅の見積書の種類
注文住宅の見積もりは、大きく2種類に分けられます。状況や段階に応じて使い分けましょう。
概算見積もり
基本設計や大まかなイメージを出した段階で作られるのは、概算見積もりです。一般的に、施工面積数に単価をかけただけのざっくりとした計算で、建築にかかる大まかな費用を予測します。
初期の段階で出せる見積もりですが、メーカーによっては細かく見積もるところもあるなど、比較材料としては誤差も大くなりがち。概算でかまわない、大まかな目安を早く知りたいという場合に使うのがベストです。
詳細見積もり
間取りや設備などイメージが固まり具体的な施工方法も確定すると、詳細見積もりを出してもらえます。概算見積もりを出した後、追加や省くポイントなど内容も変動することがほとんど。土地を実際に調査する工程もあり、時間はかかりますが概算見積もりと比べても、より実際の費用に近い金額を確認できます。
自己資金や住宅ローンも、詳細見積もりをもとに再計算しましょう。他社と金額を比較する場合も、詳細見積もりを使ったほうがハウスメーカーや工務店を選びやすくなります。
見積もりを比較する際のポイント
見積書の比較で重要なポイントは5つあります。それぞれの観点から比較すると、金額だけでなくメリット・デメリットも把握しやすくなるので、チェックしてください。
同じ間取りで見積もりを依頼しよう
見積もりを依頼する場合、前提条件を整えていることが大切です。例えばハウスメーカーには5LDKの、工務店には2LDKの内容を伝えたのでは、単純な金額の比較ができません。
間取りや仕様、決定している項目など伝える内容を統一して、見積もりを依頼しましょう。
見積書の項目を説明してもらう
見積書を出してもらったら、担当者に説明してもらうことも重要です。ハウスメーカーや工務店によって、見積書の項目や表記方法が異なります。建築関係の従事者でない場合、住宅の見積書を見ても理解が難しい箇所もあるでしょう。
他社との共通項目、異なる項目への理解度が高まれば優先順位をつける目安になり、絶対にこだわりたい仕様や変更できる箇所なども決断しやすくなります。
住宅の購入は一生に一度の大イベントなので、後悔がないように細かなポイントも残さず質問しましょう。担当者が写真や図面を使って分かりやすく説明してくれたかどうかという観点も、メーカーを選ぶ判断材料になりますよ。
含まれているもの・いないものの確認
見積書を受け取ったら、伝えた内容が含まれているかすぐに確認しましょう。打合せは多岐にわたるため、伝達漏れや誤った情報で計算されている場合があります。
また、エアコン取付の工賃や水道工事費など、着工してからでなければ計算できない項目もあるため注意が必要です。現段階で含まれていない項目はあるのか、別途費用が必要になる工事があるのかなども質問して、把握しましょう。
「一式」、「一ヶ所」の表記に気をつけよう
見積書で記載される「一式」や「一ヵ所」といった表記も、具体的にどこまでの範囲なのか詳しく確認しましょう。ハウスメーカーや工務店とのトラブル事例では、細かな箇所での認識のズレが原因になっているケースもあります。
一式とはどこまでがセットなのか、一ヵ所とは具体的にどの部分なのか、思い込みで判断した結果、金額の誤差が大きくなることも。リスク回避のためにも、細かく確認して質問してください。
値引きについて確認しよう
値引き交渉は、見積もりの段階で行います。契約した後の値引き交渉は、基本的に応じてもらえません。
複数社から見積書を出してもらったうえで、価格が気になる項目や他社と比較して値引き交渉が可能だと予測できるところに注目し、値引きの相談をしてみてください。予算をオーバーしてしまった場合も、相談することで資材や工法の変更、修正など工夫してもらえることがあります。
見積書の確認項目
見積書のデザインや仕様はハウスメーカーや工務店によって異なり、提示しなければならない決まりもありません。見積書を出してもらったら、次の項目があるか確認して、内訳や詳細について質問しましょう。
建築費・本体工事費
家を建てるための費用で、見積もりのおよそ80%は建築費が占めています。
施工業者のなかには建築費・本体工事費のみで見積書を作成するところもあります。
詳しい内訳はこちら。
・基礎や躯体を含めた構造の工事費用
・キッチン、トイレ、浴室など水回りの設備や配管工事費
・屋根や窓、外壁を含めた工事費
・内装
ここに付帯する工事の費用が含まれないことがあったり、本体工事費を坪単価(建築費÷延べ床面積)で記載したりと、実際にかかる費用より安く見せる広告もあるので注意が必要です。
諸費用
諸費用は建築業界全般で、ある程度のひな型があります。
例えば次のような項目が諸費用に含まれ、大きな差はみられません。
・住宅ローンの諸費用
・火災保険料、地震保険料
・水道負担金
・登記費用
・地盤調査費用
・建築確認申請費用
・工事請負契約書印紙代
・不動産取得税
・地鎮祭費用(省略可能)
総額でおよそ100~150万円ほど、見積もりの5~10%が一般的です。
別途工事費用・その他工事費用
別途工事費には次のようなものが含まれ、設計や土地面積で変動します。
・設計費用
・給排水工事:給水管や排水管等を敷地内へ引く工事
・外構工事:門や塀、駐車場や庭など
・照明やカーテンの設置
・エアコン取付工事
太陽光パネルを設置するための工事費用や、地盤が軟弱な場合に発生する地盤改良工事などもここに含まれるほか、着工してからでなければ詳細な金額を出せないことがあります。外溝工事は造園会社へ依頼するケースもあるなど、イレギュラーが発生することも。
一般的に100万円以上かかるため、別途工事費用は多めに見積もっておきましょう。
一括見積もり・費用シミュレーションサイトを利用しよう
ハウスメーカーや工務店など複数に見積もり依頼を出すのは、手間も時間もかかります。
しかし、一括見積サイトは一度の入力で複数企業への見積もり依頼ができ、負担軽減と家づくりの効率があがるのでおすすめです。
また、見積金額を早く知りたい、大まかな相場を把握したい場合は、住宅購入のシミュレーションサイトも利用してみてください。概算見積もりですが、大まかな必要資金の目安になりますよ。
注文住宅の見積もりが予算オーバー! どう対処する?
見積書を確認したものの大幅な予算オーバーで落ち込んでしまうこともあるかもしれません。注文住宅の予算について不慣れな人も多く、調整の仕方に悩むこともあるでしょう。
ハウスメーカーや工務店へ相談すると、設計の変更で施工費を削減したりグレードダウンなどコストを抑える方法について回答がもらえたりします。優先順位の低い項目を省くなど、予算内で収める工夫もあります。また、自治体が行っている補助金や助成制度を見逃していることもあるかもしれません。予算を広げられる可能性があるので、必ずチェックしてください。
注文住宅の見積もりはお金のプロに相談しよう
注文住宅の予算や見積もりなど金額の面で悩みが解決できない場合、専門家へ相談すると知らなかった方法を教えてもらえることがあります。
例えば、ファイナンシャルプランナーは家を購入する費用の相談も、仕事の範囲内です。住宅ローンだけでなく入居後の新生活など生涯設計も含めてアドバイスがもらえて、相談費用はかかりません。気軽に相談してお金の悩みを解決しましょう。
まとめ
マイホーム購入に向けて、見積もりを出してもらうのは記念すべき第一歩です。
あらかじめ注意すべきポイントを知り準備をしておくと、ハウスメーカーや工務店と話をすすめやすく、金額や内容の比較も精度を高められます。人生で何度も経験することではないので、見積書を見て分からない箇所があるのも当然です。担当者も答えることが仕事なので、細かなことでも質問しましょう。
住宅ローンや補助金制度、入居後も含めたお金の悩みはファイナンシャルプランナーへ相談すると、お金のプロの視点からアドバイスをもらえるのでおすすめですよ。

加藤 利光
- 所属会社:
- 株式会社デニム
- 所属会社のWEBSITE:
- http://www.denim1126.co.jp/
- 保有資格:
- AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士 住宅ローンアドバイザー、認知症サポーター
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