Column

家・住宅購入コラム

【2022年版】住宅ローン控除を徹底解説!

自宅を購入したり、建築したりする場合には、ほとんどの人が住宅ローンを借り入れします。現金一括で購入・建築ができないため住宅ローンを借りる人が大半ですが、なかには現金一括で購入・建築できる場合でもあえて住宅ローンを借り入れする人がいます。それは住宅ローンを借り入れて、住宅ローン控除を利用することが目的になっているためです。
 
わざわざ現金一括ではなく、住宅ローンを借り入れてまで利用する住宅ローン控除とは、いったいどのような制度なのでしょうか。本記事では、2022年度に改正された住宅ローン控除の最新情報を徹底解説していきます。
 

住宅ローン控除とは

 
ローン
 
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用し自宅を購入・建築した人に対して、住宅ローンの年末残高の一定割合を所得税や住民税から差し引くことができる制度です。つまり、住宅ローン控除を利用すると、所得税や住民税が安くなるということです。住宅ローン控除の正式名称は、住宅借入金等特別控除と言います。
 

住宅ローン控除の利用条件

 
住宅ローン控除を利用するには、さまざまな利用条件があります。新築住宅を購入・建築した場合と、中古住宅を購入した場合で、住宅ローン控除の利用条件が変わります。新築住宅を購入・建築した場合と、中古住宅を購入した場合の利用条件をそれぞれ紹介していきます。
 

新築住宅を購入・建築した場合の住宅ローン控除利用条件

 
・新築住宅を購入・建築したときに、住宅ローン控除を利用する条件は、次のとおりです。
・住宅の購入者が自身の自宅として購入する住宅であること
・購入する住宅の床面積が50㎡以上であること(注1)
・住宅ローン控除を利用する人の合計所得金額が2,000万円以下であること(注1)
・住宅の引き渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に自宅として住み始めること
・店舗併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が自宅であること
・住宅ローンの借入金の返済期間が10年以上であること
 
注1:2023年末までに建築確認を受けた新築住宅で40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得金額が1,000万円以下であること
 

中古住宅を購入した場合の住宅ローン控除利用条件

 
購入した住宅が中古住宅の場合は、新築住宅を購入・建築した場合に加え、次のいずれかを満たすことが必要です。
 
・1982年1月1日以後に建築された住宅
 
・建築後に使用されたことのある住宅で、地震の安全性が高いとして、次のいずれかにより証明されたもの
1.耐震基準適合証明書(注1)
2.建設住宅性能評価書の写し(注2)
3.既存住宅売買瑕疵保険付保証明書(注3)
 
・一定条件を満たした不動案業が買取して再度売り出す住宅の場合および一定の増改築等工事を実施した場合、自宅として使用する住宅について行う増改築などが、一定の工事に該当することが「増改築等工事証明書」により証明されたものであること
 
・一定の増改築等工事を実施した場合、増改築等の工事に要した費用の額が100万円超であること
 
注1:家屋取得の日前2年以内にその証明のための家屋の調査が終了したものに限ります
注2:家屋取得の日前2年以内に評価されたもので、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に係る評価が等級1、等級2、等級3であるものに限ります
注3:家屋取得の日前2年以内に締結されたものに限ります
 

住宅ローン控除の控除額

 
住宅ローン控除の所得税控除金額は新築住宅と中古住宅とは異なります。新築住宅を購入・建築した場合と、中古住宅を購入した場合に分けて控除額の違いを紹介します。
 

新築住宅を購入・建築した場合の控除額

 
新築住宅を購入・建築した場合の控除額を表にまとめました。入居する日が早いほど所得税の控除額が大きくなります。
 

居住年月日 住宅の種別 限度額 控除額割合 控除期間
令和4年1月1日~
令和5年12月31日
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
5,000万円 0.7% 13年間
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円
その他の住宅 3,000万円
令和6年1月1日~
令和7年12月31日
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
4,500万円 0.7% 13年間
ZEH水準省エネ住宅 4,000万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円
その他の住宅 2,000万円 10年間

 
※認定長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するため、長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成し、所管行政庁に申請することで認定を受けた住宅のこと
※認定低炭素住宅とは、住宅における生活や活動に伴って発生する二酸化炭素を抑制するための低炭素化を図ることができる市街化区域内等に建築される住宅のこと
※ZEH水準省エネ住宅とは、断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6の性能を有する住宅のこと
※省エネ基準適合住宅とは、日本住宅性能表示基準における、断熱等級4以上かつ一次エネ等級4以上の性能を有する住宅のこと
 

中古住宅を購入した場合の控除額

 
中古住宅を購入した場合は、新築住宅のように入居が早いほど控除額が大きくなるということはありません。また、中古住宅の控除限度額や控除期間などは新築住宅の控除限度額控除や控除期間より少なくなっています。
 

居住年月日 住宅の種別 限度額 控除額割合 控除期間
令和4年1月1日~
令和7年12月31日
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円 0.7% 10年間
その他の住宅 2,000万円

 

改正前の住宅ローン控除とどこが変わったの?

 
疑問に思う女性
 
改正前と改正後の住宅ローン控除の主な変更点を、表にまとめました。控除期間は改正後のほうが3年間延長されたものの、控除率・借入限度額・所得条件・住民税の控除上限額などは改正前のほうが有利でした。また、改正後は居住する年月日によって借入限度額などが下がってしまうようになりました。
 

改正前(2021年) 改正後(2022年・2023年)
控除期間 原則10年(特例で13年) 原則13年
控除率 1.0% 0.7%
借入限度額 長期優良住宅・低炭素住宅は5,000万円
それ以外の住宅は4,000万円
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅などにより借入限度額が異なり、 新築住宅・買取再販は3,000〜5,000万円、既存住宅は2,000〜3,000万円
所得上限 3,000万円以下 2,000万円以下
床面積 50㎡以上 原則50㎡以上
年間所得1,000万円未満の場合は
40㎡以上50㎡未満も可
住民税の
控除額上限
所得税の課税総所得金額等の7%
(最高13.65万円)
所得税の課税総所得金額等の5%
(最高9.75万円)

 

住宅ローン控除を有効的に活用する方法

 
アドバイザーの女性
 
住宅ローン控除が改正されたことにより、住宅ローン控除の控除率が1.0%から0.7%下がってしまいました。控除できる枠が狭まってしまったため、年間所得の多い人にとっては不利な条件になったと言えます。このような人は、住宅ローン控除を受けても所得税を控除しきれません。
 
また、控除率が下がっても、まだ所得税控除が所得税より大きく、控除額が余り、無駄になってしまう人もいます。その両方の人に対して、どのようにしたら住宅ローン控除を有効的に利用できるのか解説します。
 

住宅ローン控除で所得税が控除しきれない人

 
年間所得が多く、毎年課税される所得税が控除しきれない人は住宅ローン控除を最大限利用可能な、認定長期優良住宅か認定低炭素住宅の新築住宅の購入・建築を検討すると良いでしょう。入居する年月日が令和5年12月31日までであれば、借入限度額5,000万円が適用になります。
 
もし、住宅ローン控除を最大限利用しても、まだ所得税が控除しきれない場合は、ふるさと納税やiDeCoを利用し所得税額を圧縮するのも方法の1つです。
 
ふるさと納税もiDeCoも所得税や住民税の控除が利用できる制度です。ただし、住宅ローン控除よりも優先される所得控除があるため、住宅ローン控除以外の所得控除を利用するときには、税理士などの専門家に相談をしておきましょう。
専門家に相談しておかないと、所得税を控除しすぎて控除額が余ってしまうおそれがあります。
 

所得控除を使い切ってもまだ控除額が余ってしまう人の場合

 
所得税より所得控除のほうが多く、住民税の控除上限額を使ってもまだ所得控除が余ってしまう人がいます。そのような人は、住宅ローン借入額を再検討し、借入額を減らすことで控除額の調整を図ります。
 
もし、借入額を減らしては検討している不動産が購入できないといった場合には、他にも方法があります。それは不動産を共有名義で購入する方法です。
 
これは夫婦共働きや親子両方とも働いているという条件が必要になりますが、それぞれで住宅ローンを借りて1つの不動産を購入すると、住宅ローン控除を有効的に活用できる場合があるからです。二人で住宅ローンを借りれば一人分の住宅ローン借入金額は減少し、所得税はそれぞれから控除できるため控除額が上がります。そのため、一人で住宅ローンを借りるより、二人で借りたほうが住宅ローン控除を有効的に利用できます。このケースを利用する場合も専門家にあらかじめ相談してください。共有名義にすることで、住宅ローン以外でリスクが発生するなどデメリットも起きてしまいます。
 

住宅ローン控除のシミュレーション例

 

 
住宅ローン控除の計算方法は、次のとおりです。
 
住宅ローン年末残高 × 0.7% = 所得税減税額
 
この計算を基に住宅ローン控除を計算しますが、さまざまなパターンが考えられるため、パターンごとにシミュレーション例を挙げ計算をしてみます。なお、その他の所得税控除は考慮せず、建物はすべて住宅ローン控除適用条件を満たしているものとします。
 

住宅ローン借り入れが借入限度内で所得控除が所得税より小さい場合

 
【例】
 
①借入限度額5,000万円(令和5年1月1日入居・新築長期優良住宅)
②住宅ローン借入2,000万円
③所得税30万円
 
①>②のため、住宅ローン控除計算は2,000万円で行う
②2,000万円 × 0.7% = ④14万円(所得控除額)
③30万円 – ④14万円 = 16万円(所得税額)
 

住宅ローン借入が借入限度額を超えており所得控除が所得税より小さい場合

 
【例】
 
①借入限度額5,000万円(令和5年1月1日入居・新築長期優良住宅)
②住宅ローン借入7,000万円
③所得税40万円
 
①<②のため、住宅ローン控除計算は5,000万円で行う
②5,000万円 × 0.7% = ④35万円(所得控除額)
③40万円 – ④35万円 = 5万円(所得税額)
 

住宅ローン借り入れが借入限度内で所得控除が所得税より大きい場合

 
【例】
 
①借入限度額5,000万円(令和5年1月1日入居・新築長期優良住宅)
②住宅ローン借入4,000万円
③所得税15万円
 
①>②住宅ローン控除計算は4,000万円で行う
②4,000万円 × 0.7% = ④28万円(所得控除額)
③15万円 – ④28万円 = -13万円(所得税額)
 
マイナス分は住民税控除に回るため、住民税控除の計算もします。
⑤9.75万円(住民税控除上限額)- 13万円(所得税で控除しきれなかった分) = -3.25万円
つまり、この場合は住宅ローン控除をすべて使い切ることができない、ということになります。
 

住宅ローン控除を利用するときの注意点

 

 
住宅ローン控除を利用する場合には、さまざまな注意点があります。代表的な注意点を3つ挙げていきます。
 

給与所得者でも1回目の住宅ローン控除申請する場合は確定申告が必要

 
住宅ローン控除といえば、年末調整というイメージを持たれている人がいるかもしれませんが、1回目の住宅ローン控除申請は確定申告をしないといけないことになっています。そのため、確定申告の時期である2月16日から3月15日までの間に確定申告と住宅ローン控除の申請を行ないます。
 

住宅ローン控除ができる住宅ローンにも要件がある

 
住宅ローン控除を利用する場合の住宅ローンにも要件があり、返済期間は10年以上であること、金融機関や住宅の貸金業を行っているところからの融資ではないと、住宅ローン控除は利用できません。
 
例えば、現金があるからといって住宅ローン借入期間を10年未満にしてしまったり、親族・知り合いから融資を受けてしまったりすると、住宅ローン控除を受けることができなくなります。
 

2022年7月現在住宅ローン控除は2025年末までに入居しないと利用できない

 
住宅ローン控除は2022年7月現在、2025年末までに入居しなければ利用できません。
 
あくまで2025年末までに入居のため、自宅を新築する人は期間に注意ください。木造の在来工法などで建築する場合、思ったよりも建築に期間を要するときがあるため、工期についてはあらかじめ建築する会社に確認しておくことをおすすめします。
 

まとめ

 

 
住宅ローン控除は計算がしやすく、どの程度の控除ができるのか把握しやすい制度です。その反面、適用条件や適用できない条件が多く、この条件を把握するのが困難な制度でもあります。
 
自宅を購入・建築するときに、住宅ローンを借り入れするのであれば絶対に利用したい制度のため、適用条件を満たしているかどうかは、専門家である不動産会社やハウスメーカー・工務店に確認しておきましょう。
 
住宅ローン控除をうまく活用し、余裕のあるローン返済計画を組み、ゆとりある生活をおくるようにあらかじめ準備することが大切です。

小野 信一

所属会社:
ネクスト・アイズ株式会社
所属会社のWEBSITE:
https://www.nexteyes.co.jp/
保有資格:
ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、不動産コンサルティング技能登録者、2級建築施工管理技士
著書:
NHK出版「家づくり必勝法」
ハウスメーカーがいわない8つの鉄則
リフォームで失敗しない6つの秘訣
家と土地と相続・贈与の税金「24のお得な話」
監修:ダイヤモンド社「はじめて家を建てました」あべかよこ著
監修:西東社「失敗しない!後悔しない!マイホームの建て方・買い方」

営業電は0!住宅購入のプロに相談しよう

×

ページの一番上へ