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家・住宅購入コラム

不動産売却後の退去で注意すべきことは?売却後の流れやトラブルにならないための対処法まで徹底解説

「不動産売却したらいつまでに退去すべきなのか」
「退去後にトラブルが発生したらどうすればいいのか」

不動産売却後の対応については、詳しく理解していない人もいるでしょう。

不動産を売却したからといって、売主側の対応が終わりではありません。不動産売却では、退去前後に売主と買主の間でトラブルが起こることもあります。退去時の注意点について双方が詳しく理解していないため、トラブルとなってしまうのです。

そこで今回は不動産売却後の退去で注意すべき点を中心に、売却後の流れやトラブル回避の対処法などを交えて解説します。

不動産売却をお考えの人や退去時の流れや注意点について不安な人は、ぜひ参考にしてください。

不動産売却後の退去の流れと必要な手続き

不動産売却後には、売主の退去や買主への引き渡しがあります。退去時の流れや必要事項を事前に把握し、慌てることが無いように備えておきましょう。

ここでは、以下の内容で退去の進め方を解説します。

・退去の流れ
・退去時までに必要な手続き

退去の流れ

不動産売却後の退去時の流れについては、以下のような順序で行われます。

1.売買契約成立
2.買主から仲介業者立ち合いで手付金の受け取り(一般的には売却価格の5~10%程)
3.仲介業者に仲介手数料の支払い(一般的に総額の50%程)
4.引越し(退去)
5.残代金の受け取り
6.カギの引き渡し
7.登記変更
8.仲介業者に仲介手数料の残額支払い
9.引き渡し

持ち回り契約の場合、手付金の受け渡しは買主から仲介業者が一時預かって後日売主に支払われます。
手付金受け渡しの注意点として、売主の残債が完済できなければ売買契約は不成立となる点です。売主による持ち逃げなどのリスク回避として、買主側が仲介業者に預ける場合もあるので確認しておきましょう。

退去の日程に関しては、売買契約が成立後から引き渡し日までの1〜3ヶ月以内に行うのが一般的です。引き渡し日までには、新居や仮住まい(ウィークリーマンションなど)に引越し先を見つけ退去しておきましょう。

引き渡し当日は、基本的に決済やカギの引き渡し、登記変更などを同日に行います。売主や買主、仲介業者と密に連絡を取り、あらかじめ計画を組んで引き渡しまでスムーズに進めることが重要です。

退去のタイミングは、引越し先の準備状況によって異なります。前もって新居の用意をしている場合には、購入新居の引き渡し日以降であれば退去が可能です。
売却が決まってから新居を決める場合には、引き渡し日までが退去のタイミングとなります。

退去時までに必要な手続き

退去時には、以下の必要な手続きを済ませておく必要があります。

・引越し業者の選定と手配
・転校などの届出や手続き
・インターネット回線の移動手続き
・ゴミなどの処分手配
・郵便局への郵便物転送手続き
・水道・ガス・電気の停止と開始の手続き など

退去から新居に移るまでには、意外と多くの手続きを事前にしておく必要があるのです。
引越し業者の選定や手配、転校などの手続きは、新居が決まり次第すぐに動き出すのが良いでしょう。
引越しの場合、時期によっては業者も忙しくて予約が取りづらい場合もあるためです。転校の場合には、現在通っている学校から在学証明書を発行してもらうための時間が必要になります。近年の待機児童問題でもわかるように、保育園などの場合には受け入れ可能な施設を探すのに時間を要する場合もあるのです。

引越しの手配や転校などの手続き以外にも、インターネットや粗大ごみの処理、郵便物など次の新居に向けての手続きや対応は事前に確認しておきましょう。
ライフラインの水道・ガス・電気なども早めの対応が重要となります。停止手続きを忘れると、退去後に使用していない光熱費まで請求されてしまうからです。

退去前に必要な手続きを事前に確認しておき、退去日が決まったらすぐに行動に移せる状態にしておきましょう。

退去前に注意すべき点

退去前に際しては、以下のような注意点があります。注意事項を把握することでトラブルを回避することも可能です。

・退去日と引き渡し日の違い
・売主側の引越し場所が決まらない
・買主が購入をキャンセルする
・退去前に把握していないキズや破損(瑕疵)が見つかる

それぞれについて解説します。

退去日と引き渡し日の違い

売買契約成立後には、事前に退去日を設定する必要があります。退去日と引き渡し日を同義にとらえている場合、トラブルになるので注意しましょう。

・退去日・・・売主が売却した物件から退去する日
・引き渡し日・・・売主の所有権が買主に移り引き渡す日

表現的には似ているように捉えがちですが、売主は引き渡し日の前日までには退去日を設定する必要があるのです。

引き渡し日は所有権が移るため、退去していない場合は一般的に違約金が発生します。契約内容によって異なりますが、一般的には売買価格の1〜2割という高額な違約金が発生するので注意しましょう。(契約によっては損害賠償予定となる場合もあります)

退去日は、引き渡し日の前日までであれば自由に設定することが可能です。
ただし、ギリギリまで売却物件に住みたい場合には、退去日を確実に引き渡し日の前日までに決定しておきましょう。

引越しや片付けが終わらずに引き渡し日までずれ込むと、契約違反となるので事前計画と進捗の確認は慎重に行うことが必要です。

売主側の引越し場所が決まらない

退去前に注意すべき点として、売主側は退去先を決めておく必要があります。引き渡し日までに退去先である新居が決まっていなければ、引越しの段取りもつけられないのです。

例えば、買換えによる不動産売却の場合などです。
購入した新居の引き渡し日が売却した物件の引き渡し日より後の場合、すぐに新居に引越しができないので別の一時的な引越し場所の確保が必要になります。

購入物件の新居に引越しできない場合は、ウィークリーマンションや一時的な賃貸住居への契約をすることになるでしょう。

一時的な引越しの場合、賃貸費用と再度の引越し費用が新たに発生します。

ただし、買換え特約などを売買契約時につけることで回避できる場合もあるので、専門的な知識がある仲介業者に事前に相談しましょう。

買主が購入をキャンセルする

退去前の注意点の1つとしては、売買契約後に買主が購入をキャンセルする場合です。基本的に買主は、売買契約後でも引き渡し日までならキャンセルすることができます。

例えば、買換え特約や住宅ローン特約などが売買契約に盛り込まれた場合です。
買主側の買換えがうまくいかず物件が売れなかった場合などには、キャンセルが可能で違約金等も発生しません。
住宅ローン特約も同様で、審査が承認されずにキャンセルとなることがあるのです。

その他にも、契約不適合責任などの契約違反でキャンセルとなる場合もあるので注意しましょう。

ただし、買主側が売買契約後にキャンセルする場合、上記の特約や契約違反以外のキャンセルでは一般的に売主に対して違約金が発生します。
一般的な違約金の請求目安は売買価格の1〜2割。ただし売主が宅建業者である場合には、宅建業法で2割を超える違約金の請求はできません。(宅建業法第38条より)

退去前に把握していないキズや破損(瑕疵)が見つかる

退去前の注意事項として、売却物件に把握していないキズや破損(瑕疵)が見つかることです。頻度としてはレアなパターンですが、発見されることもあるので注意しましょう。

本来であれば、売買契約前に十分な確認がされていれば、瑕疵が見つかることはありません。
しかし、万が一売買契約後に新たな瑕疵が買主によって発見されれば、売却物件の品質が欠落したことになり契約違反になることもあります。

瑕疵によって契約違反となれば、売買契約によっては売主の不適合責任によって違約金や契約解除となることも。

瑕疵が新たに見つかった場合には、仲介業者に相談のうえ修繕の必要が生じるので迅速に対応しましょう。

退去後に注意すべきトラブル

不動産売却が成立しても、退去後に買主との間でトラブルとなることもあります。
退去後には、以下のようなトラブルの発生リスクがあるので把握しておきましょう。

・設備故障のトラブル
・騒音トラブル
・隣人トラブル

それぞれのリスクについて解説します。

設備の故障トラブル

退去後のトラブルとして、設備の故障や水漏れ、雨漏りなどの設備トラブルがあります。
排水管などの水漏れなどは大がかりなトラブルとなる欠陥なので、売主側が責任を負う場合もあります。
ただし、基本的な設備(エアコンや給湯器など)について、一般的な契約では引き渡し後1週間くらいまでに見つかったもの以外は売主の責任にはなりません。

ただし、瑕疵担保責任から契約不適合責任へと民法が改正されたため、契約にない不備が発生した場合に売主の責任となる場合もあります。(民法第562条~)

不動産契約書に載っていない設備トラブルに関しては、買主から売主側に対して減額請求なども可能となっているので注意しましょう。(代金減額請求権:民法第563条より)

騒音トラブル

退去後に起こるトラブルには、騒音についてのトラブルがあります。
マンションなどの場合は、特に昼間と夜で状況が変わる場合もあるからです。内覧などの昼間には起こらない騒音も、夜間に発生する場合も。

生活レベルの音に関しては、一般的にどこのマンションでも起こりうるため売主の責任とはなりづらいです。

ただし、明らかに騒音と認識できるほどのものであれば、前もって告知しておくことが義務とされています。(宅地建物取引業法:47条より)

告知していなかった場合には、損害賠償請求される場合もあるので注意が必要です。

隣人トラブル

隣人とのトラブルが、退去後にクレームとなる場合もあります。隣人と買主の相性にもよりますが、トラブルとなるほどの隣人問題は事前に買主に対して告知が必要です。

騒音の部分でも先述したように、宅建業法で告知義務が定められており損害賠償請求の対象ともなるので注意しましょう。

隣人とのトラブルで告知義務の対象となるのは、騒音やごみの大量放置による異臭、隣人の通常とは言い難い言動などがある場合です。境界線の主張の違いでのトラブルも対象となります。

ただし、隣人とのトラブルを抱えた物件の場合、誰もが避けたい問題として売買契約成立に至らないことが多くなるでしょう。

所有物で隣人トラブルがある場合は、解決してから不動産売却を行うのが賢明です。

退去でのトラブル回避の対処法

不動産売却において、退去の前後にはトラブルが起きる可能性もあります。できるだけトラブルを回避するためには、事前の対応策を講じておくことが肝心です。
退去でのトラブル回避には、以下のような対処法があります。

・契約不適合責任の範囲や期間を把握する
・専門業者に事前に調査依頼をする
・複数社から信頼できる仲介業者を選ぶ

それぞれの対処法について解説します。

契約不適合責任の範囲や期間を把握する

未然に防ぐという意味では、契約不適合責任の範囲や期間を事前に把握しておくことが大切になります。

一般的な不動産契約書の場合、売主が契約不適合責任として建物や土地に対する修復の義務があるのは雨漏り・シロアリ・腐食・給排水管故障の4つ。しかも、一般的には、買主が3ヶ月以内に発見した場合に限るのです。

そもそも設備に関しては各メーカーの保証期間が短期である場合が多いので、基本的に売主が宅建業者以外であれば免責(一般的な契約書では、買主が引き渡し日から1週間以内に設備に関する不備を発見した場合に限り売主の修復責任)となります。

売主もある程度契約不適合責任に関する範囲や期間を把握していれば、トラブルとなる想定ができスムーズに対応もできるのです。

ただし、不適合責任に関する民法や不動産契約書は細かい専門的な内容も含まれるので、信頼できる仲介業者に相談するのが良いでしょう。

専門業者に事前に調査依頼をする

退去でのトラブル回避対処としては、専門業者に事前に調査依頼をするのも有効な手段の1つです。

例えば、測量を依頼したりホームインスペクション(住宅診断)を利用したりする方法があります。
退去後のトラブルを避ける意味でも、買主に専門業者の調査が済んでいる物件であることをアピールすることは大切になります。

専門業者による調査で退去前に不具合が見つかった場合には、修復することで退去後のトラブルも回避できるでしょう。

複数社から信用できる仲介業者を選ぶ

信頼できる仲介業者を複数の中から選ぶのが、退去時のトラブルを未然に防止する方法となるでしょう。

例えば、不動産一括査定サイトなどで仲介業者を選ぶ方法です。
知人の紹介や家から近いという理由で仲介業者を決めてしまうと、他の仲介業者との比較をしない状態で媒介契約を結ぶことになります。

複数の仲介業者を比較することで、対応や評判などを比較して退去でのトラブル回避を任せられる業者を選ぶことができるのです。

ただし、複数の仲介業者を比較する場合には、見積額の大小のみで選ぶのは注意する必要があります。仲介業者によっては、対応が雑だったり契約のために見積もりを高く設定する業者の可能性もあるので総合的に検討しましょう。

信頼できるパートナーを選びましょう

今回は退去での注意点を中心に、売却後の流れやトラブル回避の対処法まで紹介しました。
不動産売却時の退去前後には、事前計画や把握が必要な重要事項が多く存在するのです。ただし、予想できるトラブルばかりとは限りません。

売主が退去時のトラブルに困った場合、頼れるのは専門的な知識や経験のある仲介業者です。

複数の中から信頼できるパートナーとなる仲介業者を選ぶことが、退去でトラブルを回避する一番の近道といえるでしょう。

葛生 貴昭

所属会社:
株式会社 村越不動産
所属会社のWEBSITE:
http://www.murakosi.jp/
保有資格:
2級FP技能士、宅地建物取引士

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