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家・住宅購入コラム

相続で始める賃貸経営

国土交通省「土地基本調査総合報告書」によると、「現住居の敷地以外の宅地など」を取得した方法について、約65%が相続・贈与で取得しています。「現住居の敷地以外の宅地など」を使用者別にみると、約35%が家族以外の「その他の世帯・法人の使用」となっており、収益物件として使用していると考えられます。生前から賃貸経営に関わったり、既に賃貸物件を所有していたりするなど基本的な知識や経験を身につけている人はまだしも、十分な準備もなく賃貸物件を相続した人は不安を感じているのではないでしょうか。不動産管理会社から修繕相談や現状報告を受けて初めて、賃貸経営を実感することがないようにしたいです。相続をきっかけに賃貸経営をする場合に、どのようなことを知っておかなければならないか、中立的な立場から考えます。

2019年6月7日、副総理兼金融担当大臣であった麻生太郎氏は閣議後の記者会見で、高齢夫婦の赤字生活が30年間続くとすると2000万円必要だと述べ、注目されました。
こうしたニュースに触れると、老後生活に不安を感じるかもしれないが、感じただけで終わらず老後資金の不足額を試算したでしょうか。公的年金や退職金、預貯金だけで生活できる家庭もあれば、十分な退職金を受け取れるか不透明で2000万円ではまったく足りない家庭もあります。家計の状況によって、賃貸経営や投資に対する考え方は異なるため、状況を知る前に投資判断をしないよう注意したい。
賃貸物件を相続した理由はひとそれぞれですが、賃貸経営を続ける目的は明確にしておきたいです。目的の一つに、老後の資金準備が考えられます。老後に必要な資金額は人によって異なり、「将来年金が受け取れるか心配だから」という理由だけで判断しないようにしたい。賃貸経営から得られるメリットやリスクを検討する以前に、将来を含めた自分自身の状況を知らなければならない。
老後の資金準備のために賃貸経営を続けるなら、老後の生活費の原資となる公的年金額と退職金額は調べておく必要があります。公的年金額は「ねんきんネット」を活用すれば見込み額を試算できるし、退職金額は雇用契約書などで確認したり、世話になっている上司から聞いたりすれば推測できます。老後の生活費を考えれば、どの程度の資金を準備しておくべきかわかるでしょう。老後の生活状況が見えると、資産運用の目的は、大きく「余剰資金を増やすための資産運用」と「基本生活費を準備するための資産運用」に分けられます。老後資金を目的とした賃貸経営(不動産投資)は、余剰資金を増やすための資産運用に適していると言えるでしょう。余剰資金の獲得目的なら、リスクも許容範囲になり得ます。

賃貸物件は一般的に築年数を重ねるほど管理費用が増え、収益性は低下します。相続で取得した物件は既に経年リスクをかけていることが多く、空室リスクや賃料下落リスクのほか、修繕・改善による費用負担が重くのしかかります。リフォームやリノベーションで収益性を改善したり、更地にして新築したりと大きく手を加える必要も出てきます。数十年後の本業の所得や家計への影響もシミュレーションしておきたいです。
このように考えると、賃貸経営の収益性や将来性から賃貸経営を継続するかどうかの判断は、経営面だけでなく税制面でも知識と経験が必要であるため、不動産管理会社や不動産投資会社などの専門家の知識や経験を参考にしたいです。
一方で、老後の生活水準や生き方などは本人の判断が重要となります。「現住居の敷地以外の宅地など」を相続・贈与で取得した世帯について、年間収入による大きな差はなく、年間収入「200万円未満」であっても「2000万円以上」であっても収益物件を相続・贈与で取得する可能性がある(国土交通省「土地基本調査(平成30年)」。投資判断は経営状況ではなく本人の生活や考え方を軸とし、すべての判断を第三者に委ねてしまわないために判断材料を集めておきたいです。
どんなに魅力のある賃貸物件で継続を勧められても、家計の状況や目標達成のための方法としてふさわしくなければ、売却することも選択肢の一つとなるでしょう。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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