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家・住宅購入コラム

書面の電子化の社会実験を継続

賃貸取引においてオンラインによる重説が可能となったことで、これに続く流れとして、19(令和元)年10月1日から12月31日の期間、113社が登録事業者として参画し賃貸取引に限定した1回目となる「重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験」、いわゆる「書面の電子化」に向けた社会実験が行われました。取引で電子書面交付の実績があったのは17社にとどまりましたが、この17社のアンケート回収件数109件(宅建士から回収)のうち「35条の電子書面交付・説明、37条の電子書面交付」まで一連の手続きが完了したものが居住用の賃貸住宅を中心に91件に上っています。

宅地建物取引士と借主から回収したアンケート結果を見ると、「電子書面は紙と比較して全体像が把握しにくい」「電子書面は操作方法がわかりにくい」といった共通の問題点を指摘する回答が目立ったものの、大半の取引において重大なトラブルはなく、電子書面に伴う作業や説明、確認に支障がないことなどがわかりました。

国土交通省では、これらの検証結果を踏まえた改善点などが盛り込まれたガイドラインを来月にも公表する予定にしており、登録事業者を追加募集したうえで9月から再び「書面の電子化」の社会実験を継続実施する見通しです。

 

一方で個人を含む売買取引におけるIT重説の社会実験が19(令和元)年10月1日から1年間の期間で実施されています。20(令和2)年2月25日現在、社会実験の登録事業者59社のうち実績があったのは5社で実施件数は143件でした。物件種別では多数を占めた投資用物件が139件、居住用物件が4件で、区分所有物件が多くを占めています。売買価格の幅は1200万〜4500万円で、平均価格は2440万円です。買主の88%が「物件の内覧を行っていない」との回答でした。トラブルについては、宅建士の5.6%、買主の20%がトラブルがあったと回答していますが、その内容は音声や映像に関するものだったといいます。

コロナ禍の影響もあり、オンライン業務の一層の普及拡大が見込まれています。とはいうものの不動産取引業務のオンライン化はようやく賃貸取引が社会実験を経て途に就いたばかりです。対面業務で培ったスキルとノウハウを基本に、消費者保護と適正な不動産取引に向けてIT化を推進することが求められます。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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