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家・住宅購入コラム

21年の首都圏中古住宅流通市場

21年の首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)中古住宅流通市場は全体的に好調です。中古マンション市場において、成約戸数は3万9812戸であり、19年の過去最高水準を更新しました。平均成約価格も上昇傾向が続いています。中古戸建住宅において、成約棟数は1万5436棟で、初めて1万5000棟台に達しました。平均成約価格も15年から概ね上昇傾向にあります。

東日本不動産流通機構の中古住宅の成約戸数に平均成約価格を乗じ、市場の規模を試算すると、11年は東日本大震災の影響で前年よりやや縮小したが、12年から再び上昇に転じました。
また、14年は13年の消費増税の駆け込み需要の反動で微減しました。それ以降5年連続過去最高額を更新しましたが、20年には新型コロナウィルス感染症の影響で前年よりやや低下したものの、1兆7045億円に達しました。
21年には初めて2兆円(2兆729億円)に達し、10年(1兆1008億円)と比べて2倍近くに拡大しました。セグメント別でみると、中古マンション市場は1兆5402億円で、10年(7786億円)の約2倍に拡大し、中古戸建住宅市場は5327億円で、10年(3222億円)の約1.7倍に拡大し、ともに過去最高水準となりました。また、中古マンションと中古戸建住宅の市場規模格差も更に広がっており、10年の2.4倍から21年には2.9倍となりました。

21年の首都圏中古マンションの成約戸数は3万9812戸で、19年の(3万8109戸)の過去最高記録を更新しました。地域別の成約戸数をみると、東京都は2万369戸(19年より1.76%増加)です。神奈川県は9806戸(同6.85%増加)、千葉県は4887戸(同6.56%増加)、埼玉県は4750戸(同9.70%増加)です。すべての地域の成約戸数が最高記録の19年より増加となりました。また、東京都より神奈川県、千葉県、埼玉県の増加率が大きいことが特徴であり、新型コロナウィルス感染症の影響でテレワークの定着等による生活スタイルの変化に伴い、住宅ニーズも変化していることが読み取れます。
日本不動産研究所が22年1月25日に公表した21年11月時点の「不動研住宅価格指数」によると、首都圏は106.31ポイントで、17ヶ月連続上昇し、00年以降の最高値となりました。地域別では、東京都は118.20ポイント(前年同期比11.18%上昇)で、19ヶ月連続上昇し、首都圏と同様に00年以降の最高値となりました。神奈川県は96.16ポイント(同11.34%上昇)、千葉県は80.34ポイント(同11.20%上昇)、埼玉県では87.42ポイント(同13.89%上昇)となりました。全体的に、13年に入ってから概ね上昇傾向が続いており、21年11月時点の指数は13年1月と比べると、首都圏は29.24、東京都は36.55、神奈川県は20.05、千葉県は15.10、埼玉県は22.26ポイントと増加し、東京都の増加ポイントが最も高かったです。

首都圏のマンション市場においては、新築マンション価格は高止まり傾向が続いている中、中古マンションは新築に代わって一般消費者(実需層)の受け皿となっています。16年は初めて中古マンションの成約戸数(3万7189戸)が新築(3万5772戸)を超え、その後も中古が新築を上回る状況が続いています。21年においても新築分譲マンションの見込み販売戸数は3万2500戸に対して、中古マンション成約戸数は3万9812戸となりました。

首都圏中古マンションの新規登録戸数と新規登録単価の推移を見ると、15年に入ってから中古マンション価格の上昇傾向が加速するにつれ、新規登録戸数と新規登録単価はともに増加・上昇しました。新規登録戸数は、18年には20万6901戸で過去最高水準を更新し、初めて20万戸を超え、19年(20万4891戸)には前年より減少したものの、依然として20万戸を維持しました。
しかし、新規登録戸数は19年9月から前年同期比で減少傾向が続いている中、新型コロナウィルス感染症の影響により、新規登録戸数の減少は加速され、20年の新規登録戸数は18万1750戸(前年より2万3141戸減少)、21年は16万1474戸(前年より2万276戸減少)でした。一方、新規登録価格は上昇傾向が続いており、20年には57.79万円(1平米単価)、21年には64.48万円(同)であり、東日本不動産流通機構の統計データによると、バブル期の最高水準に近い水準となりました。
首都圏中古マンションの在庫状況を見ると、19年12月から減少傾向が続いており、20年には3万8173戸で、5年ぶりに3万戸台に落ちました。21年には3万5718戸で、10年以降3番目の低水準となりました。
また、市場滞留期間(登録から成約までに至る日数)は17年以降概ね増加傾向にあり、19年は80日台に達しました。20年にはコロナウイルス感染症の影響により、市場滞留期間が更に延長して88.3日で、近年の最高水準となりました。
しかし、21年には74.7日まで大幅に短縮しました。市場関係者へヒアリングしたところ、物件が少ない中、特に人気の高い好立地物件は登録価格ですぐに成約される事例が多いことが分かりました。新規登録戸数と在庫戸数は共に長期間に減少していないため、買い急ぎ事例が増えていると推測されます。

徳本 友一郎

所属会社:
株式会社スタイルシステム
所属会社のWEBSITE:
http://www.style-system.net
保有資格:
CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
著書:
初めての不動産購入で失敗しない17のチェックポイント

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