23年地価公示
国土交通省が3月22日に公表した地価公示(23年1月1日時点の1平米当たりの価格、全国約2万6000地点)によると、全国の全用途平均は1.6%上昇(前年比プラス1.0ポイント)、住宅地は1.4%上昇(同プラス0.9ポイント)、商業地は1.8%上昇(同プラス1.4ポイント)となりました。いずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。また、工業地は3.1%上昇(同プラス1.1ポイント)で、7年連続の上昇となりました。
全国の最高価格地は、東京都中央区の商業地「中央5の22」(山野楽器銀座本店)の5380万円(1.5%上昇、同プラス2.6ポイント)で17年連続。富裕層による消費の好調さから店舗の収益性は回復傾向にあり、また、今後のインバウンド需要の本格的な回復への期待感から地価は上昇に転じたといいます。
国土交通省地価公示室は、「ウィズコロナの下で景気が緩やかに持ち直し、地価は都市部を中心に上昇が継続すると共に、地方部でも上昇範囲が拡大。コロナ前への回復が顕著になった」と総括しました。住宅地については、都市中心部や生活利便性に優れた地域において低金利環境の継続、住宅取得支援策等による需要の下支え効果もあり住宅需要が堅調な点や、需要者ニーズの多様化による郊外部への上昇範囲の拡大を挙げ、東京都中野区(7.5%上昇)や茨城県つくばみらい市(12.0%上昇)を例示しました。
商業地については、都市部を中心に店舗需要は回復傾向にあり、堅調なオフィス需要やマンション用地需要等から地価の回復傾向が継続。三大都市圏や地方四市等の再開発事業が進んでいる地域での地価上昇、国内来訪客が戻りつつある観光地での回復傾向が見られると説明しました。
23年の地価公示は、地域や用途などによる差はあるものの、コロナ前への回復傾向が目立ちました。変動率プラスの都道府県数は、住宅地が24(前年比4増)、商業地は23(同8増)です。このうち住宅地では北海道が7.6%上昇(前年比プラス3.0ポイント)で都道府県の最大上昇率となったことに加え、札幌市の15.0%上昇(同プラス5.7ポイント)など32の都道府県庁所在地がプラスとなりました。商業地では福岡県が5.3%上昇(同プラス1.2ポイント)となるなど、38の都道府県庁所在地がプラスとなりました。
三大都市圏では、全用途平均は2.1%上昇(前年比プラス1.4ポイント)、住宅地は1.7%上昇(同プラス1.2ポイント)、商業地は2.9%上昇(同プラス2.2ポイント)。地方圏では、全用途平均は1.2%上昇(同プラス0.7ポイント)、住宅地は1.2%上昇(同プラス0.7ポイント)、商業地は1.0%上昇(同プラス0.8ポイント)となり、三大都市圏、地方圏ともに2年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。三大都市圏では住宅地、商業地共に上昇エリアが中心部から周辺部に拡大しました。東京圏では千葉県市川市や埼玉県戸田市など5%以上の上昇地点で複数見られました。名古屋圏では、名古屋市の住宅地が3.7%上昇、商業地が5.0%上昇と全16区で上昇率が拡大。同市中心部ではマンション用地としての需要が堅調であることから地価は上昇傾向で推移し、住宅地では中区で11.1%上昇、東区で6.5%上昇などとなりました。
大阪圏では住宅地よりも商業地で上昇が顕著です。具体的には大阪市・商業地は3.3%上昇(前年比プラス4.4ポイント)で、全24区が上昇。梅田地区ではオフィスの空室率および賃料は安定しオフィス需要は堅調。また、インバウンド需要の影響が大きかった心斎橋・なんば地区では国内観光客の回復や訪日外国人観光客の回復期待を受け、店舗需要は回復傾向です。
地方圏の上昇率拡大をけん引するのが、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)です。全用途平均・住宅地・商業地のいずれも10年連続で上昇し、上昇率は8%台に拡大。再開発事業等の進展による利便性・繁華性向上への期待感などが要因と見られます。
なお、変動率上位の10地点を見ると、住宅地、商業地共に北海道が独占し、いずれも札幌市に近接する北広島市(住宅地は30.0%上昇、商業地は28.4%上昇)や江別市、恵庭市などとなりました。他方、変動率下位の10地点においても、住宅地、商業地共に北海道の多くの地区がランクイン。札幌市を中心とした地価上昇や宅地等の供給不足により、相対的な割安感のある同市近郊へ需要が波及し、道内では地価上昇と下落が入り交じる状況となりました。
ただ、同省地価公示室によれば「二極化のエリアは限定的。地方圏においても回復傾向にある」と指摘します。具体的には地方圏の「その他地域」で全用途平均・商業地は3年ぶりに、住宅地は28年ぶりに上昇に転じた点を指摘。全国の上昇・横ばい・下落の地点数の推移を見ても、全国の約6割(58%)が上昇。「地方圏その他地域(全用途)の上昇の割合は26%から34%に増え、下落の割合も52%から45%に減少しました。地方においても緩やかながら回復傾向が見られる」(同公示室)としました。
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徳本 友一郎
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